創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

第2部 DDBの組織

02-27 2人で道を間違えることは、1人の時より少ない

VWのライターであったレブンソン氏は、ペア・チームの会談の状態を、次のような表現で話しています。 「私たちがよく耳にする質問:『君たち二人は、どんなふうにして広告をつくっているのか?』という質問です。そんなに興味のあることなのですかね? 話の…

02-26 アイデアの承認

その点について、パーカー夫人は電通での講演で、こう話しました。 「キャンペーンが誕生すると、コピーライターの上司とアートディレクターの上司、両者の承認を得なければなりません。 担当者がスーパーバイザー自身である場合には、このステップはいうま…

02-25 あるペア・チームの実況報告(2)

アクリラン・カーペットの担当コピーライターである(ジュディ)タラー嬢と、アートディレクターの(スツウ)ローゼンワッサー氏による、カーペット販売業者向けの広告制作に関するペア・チーム・プレーの実例です。アカウント・エグゼキュティブ(取引先責任…

02-24 あるペア・チームの実況報告(1)

そうした珍妙な見学をするかわりに、パーカー夫人が私に話してくれた次の事例のほうが、よっぽど臨場感をもってペア・チームの会話を伝えてくれます。 それは、オーシャン・スプレー(Ocean Spray Cranberries, Inc.)のクランベリー・ジュースのテレビ・コ…

02-23 ペア・チームの会話の見学はできない

「DDB社への訪問者の中には、私たちの仕事ぶりを見るために、アートとコピーのやりとりを腰をすえて見学される方があります。 腰をおろして、すばらしいアイデアがひらめく『不思議な瞬間』がいつくるか、お待ちになるというわけです。 しかし、少々失望する…

02-22 「私たちの」アイデア

もう一度、パーカー夫人の講演にもどりましょう。 いよいよ、ペア・チームの会談が始まります。 創造の神秘的な時間の訪れが聞かれるかもしれません。 「さて、アートディレクターとコピーライターは、ちょうど2個のスポンジのように資料を十分吸収したうえ…

02-21 2週間後にもどってきたら、スターだった

<<前項『VW(フォルクスワーゲン)に乗ってアメリカを見ようよ』クローン氏は、さらに言葉を続けて、驚くべき事実を打ち明けています。 「私は、VWについて、私たちは間違ったことをやっている、という感じを強く持っていました。 もちろん、3分の1の責…

02-20 『VW(フォルクスワーゲン)に乗ってアメリカを見ようよ』

クローン氏はまず、彼がVWを担当することになった理由を、当時(1959年)のDDBにおいて、VWについて何か知っているただ一人の人間であったからだと話します。 クローン氏は、アメリカに最初にはいってきたVWを持っていたことがあったのだそうです。 「多分、…

02-19 クリエイティビティの真の機能

VW(フォルクスワーゲン)の広告キャンペーンについては、今さらうんぬんする必要がないほど、日本でもアメリカでも論議がつくされて、クリエイティブな広告の一つの手本にまでなっています。 広告とはまるで関係ない『世界の自動車』(奥村正二著・岩波新書…

02-18 DDBペア・チームの「レッグワーク」

ラインゴールド・ビールの例で、マイヤーズ氏とローゼンフェルド氏のペア・チームが何回も工場を尋ねて工程を観察したり販売部門の人に話しかけたりした経過は、川喜田教授が『発想法』で述べておられる、情報を探検に行く過程、個々の現象を観察・記録する…

02-17 ラインゴールド・ビールの事例

ラインゴールド・ビール(Rheingold Beer)の広告で、それまで広告ではタブーとされていたニューヨークに在住する各国人種を取り上げて話題をまいた幹部アートディレクターの(シドニー)マイヤーズ氏が、そのアイデアを思いつくままを書いていますので紹介…

02-16 野外科学者の仕事の12段階

東京工業大学の川喜田二郎教授は「KJ法」と呼ばれる『発想法』(中央新書)で知られている人ですが、文化人類学研究者として各種の探検に従事されているうちに、組織の中での自分の生かし方を考察され、『パーティー学』(教養文庫・社会思想社)、『チーム…

02-15 まず情報集めから始まる

さて、現実にぺア・チームによるクリエイティブ・ワークが、DDBでどのように進行するかをお話ししましょう。パーカー夫人はいいます。「それでは、実際の仕事ぶりはどうなのでしょうか? コピーライターとアートディレクターが向かい合って座って、作品をつ…

02-14 人間付合いから始まる

ロビンソン夫人が、相互尊敬という言葉で説明したペア・チームの運用のコツを、幹部コピーライターのグリーン女史は、女性であることを断りながら、 「コツがあるかどうかということはちょっとわからないんですけれど、もし何かあるとすれば、相手がアートデ…

02-13 相手を一人の人間として尊敬すること

DDBのペア・チームによる広告づくりが日本に紹介されて以来、似たような形でクリエイティブ・ワークを進めるところが出ています。中には,糸川博士のいわれるように,観念の固定化を破ろうという意味でペアを運営しているチームもありましょうが,あまりうま…

02-12 流動的なペア・チーム

ですから、一人のコピーライターが三つのプロジェクトを持っている場合は、プロジェクトごとに三人のアートディレクターとペア・チームを組むわけです。 そして、そのペア・チームは多分に流動的です。 たとえば、新入社員、退社、昇格などで担当アカウント…

02-11 産業界におけるペア・チームの採用

リー氏は、ペア・チームを「男と女のような関係」と表現していますが、ソニー厚木工場の小林茂工場長も、新しい組織づくりの最小単位としてのペア・システムを採用されて成功された人ですが、 「チームとしての組織づくりの重要なポイントになるのが、ペア・…

02-10 ペア・チームの中のパーソナリティー

また、ペア・チームがうまく行かなかった場合はどうするのでしょう? 幹部コピーライターのレブンソン氏に尋ねてみました。 chuukyuu「あなたは、これまでにたくさんのアートディレクターと組んで仕事をなさったと思いますが、正直なところ、アートディレク…

02-09ペア・チームの任命

しかし、問題が残らないわけではありません。 概念的にはこのペア・チームプレーが理解できたとしても、ペア・チームを動かすいろんな条件が、それぞれのチーム、もっと大きくいえば、それぞれの企業で、みんな違うわけです。 DDBでは、このペア・チーム…

02-08 アメリカにおけるペア・チーム

「アート・ディレクション」誌1965年12月号は、「アートディレクター=コピーライターのチームワークは、はたして効果をあげているだろうか?」と題するリンダ・ピバーのルポを載せています。その大要は歴史的に見て、コピーライターは、クリエイティブ部門に…

02-07 ペア・チーム誕生の必然性

このペア・チームがどうしてできたかを、ゲイジ氏はこう話しています。 「1949年、DDBが発足した当時のアメリカの広告界には、コピーライターとアートディレクターがチームで仕事をするということはほとんどありませんでした。しかし私たちは、それ以外のや…

02-06ロビンソン夫人が語るペア・チーム

DDBのクリエイティブ・ワークがペア・チームで進められていることは、今や常識です。 しかし、それは、自然に常識になったのではありません。多くの人がDDBに関心を持ち、質問し、彼らが答えたからです。次のロビンソン夫人の講演がそれを語っています。「DD…

02-05ペア・チームの職務範囲

なぜこんな方式が採られるのかといえば、DDBのクリエイティブ・ワークは、コピーライターとアートディレクターによるペア・チーム制で進められるからです。 クリエイティブ作業が踏まねばならないほとんどの段階が、ペアで進行するのです。 パーカー夫人の言葉…

02-04 直接に担当者が指名される

しかし一方、監督者が実作をすれば、それだけ監督業務がおろそかになるのではないか…という疑問も残るでしょう。 DDBのクリエイティブ部門における監督業務はどうなっているのかを話す前に、クリエイティブ部門の組織を知っておきましょう。 クリエイティブ…

02-03昇格しても実作はやめない

また、VWのライターであるレブンソン氏は、監督者としての職務と、ライターとしての実作の時間的な配分について、こう答えています。問い「どのくらいお書きになっていますか?」 レブンソン「ここでは、全然書いていません。以前は書いていましたけど」問い…

02-02すぐれた仕事をしていれば尊敬される

シローイッツ氏の話の中に出てくるコピーライターのメドウ氏は、コピー部管理部長(アドミニストレイター)です。 彼は、アドミニストレイターとしての肩書にもかかわらず、実作に従事したわけですが、そこのところをパーカー夫人は、「アート、コピーの両チ…

02-01興味があれば申し出る

この部のおもな登場人物 氏名 人物紹介 ウィリアム・バーンバック DDB社の会長 ロバート・ゲイジ DDB社のクリエイティブ・ディレクター フィリス・ロビンソン夫人 DDB社のコピー部顧問 ロール・パーカー夫人 DDB社のコピー・スーパバイザー。来日経験二回 レ…