創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

02-12 流動的なペア・チーム

ですから、一人のコピーライターが三つのプロジェクトを持っている場合は、プロジェクトごとに三人のアートディレクターとペア・チームを組むわけです。
そして、そのペア・チームは多分に流動的です。
たとえば、新入社員、退社、昇格などで担当アカウントの移動はある程度頻繁に起こります。
その都度、ペア・チームがそっくり替わることもあれば、チームの一人だけが替わる場合もあるわけです。
ソニーの場合は同一職場内でチームが組まれるで、やや固定的です。

組織工学研究所所長の糸川英夫博士も、最小のコミュニケーション単位は二人であり、異種情報を組み合わせてアイデアを開発する場合、ペアだとうまく行くと話しておられました。
そこでDDBのペア・チームの説明をしましたら、「ちょっと組み合わせが同質的すぎるが…」とおっしゃりながら、だいぶ関心をもたれたようでした。
ついでですから、糸川博士の言葉を少し引用させていただくと、「どんな巨大な電子計算でも、構成要素を分解してみると、ONとOFF(電流が流れているか、切られているか)という二つの状態の組み合わせ」であり「会話にしても、YESとNOという、二つの言葉の組み合わせによって成り立っている」。
組織もいちばん小さい集団は二人で「一人では組織にならない」というわけです。

つまり、一人だと思考がYES一方か、NO一方に片寄りがちだとおっしゃりたいのでしょう。
「二人一組で仕事をする場合、一方が考えたことを他方に話す。その結果、意見の相違があったり、交互に啓発しあう作用があったとすれば、ひとりで考えていた時と、二人で話し合った結果は、必然的に変化する。」
この変化するのがポイントである。
一人で考え、一人で仕事をする場合、変化がない、または少ないから、観念が固定化されがちで、柔軟性が失われて行くか、二人一組で考え、仕事をする時は、絶えず相手の存在によって、自分が、譲歩したり、考えたり、考えを交互に引き出したりする作用があるため、観念の固定をのがれることができる」(注・『一仕事はペアシステム(二人三脚)で』「実業の日本」・1968年9月1月号)