創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

02-04 直接に担当者が指名される

しかし一方、監督者が実作をすれば、それだけ監督業務がおろそかになるのではないか…という疑問も残るでしょう。
DDBのクリエイティブ部門における監督業務はどうなっているのかを話す前に、クリエイティブ部門の組織を知っておきましょう。
クリエイティブ・ディレクターの肩書きを持っているゲイジ氏の下に、準クリエイティブ・ディレクターのライダー氏と6人のクリエイティブ・マネジメント・ディレクターがいます。
この管理機構は、それまでクリエイティブ部門の最高責任者であったバーンバック社長が会長に格上げされた時に生まれたものですが、新しいくクリエイティブ・ディレクターになったゲイジ氏が、「このような激職を1人ではこなしきれない」と発言して6人のマネジメント・ディレクターを任命したものです。
パーカー夫人は笑いながら私に、「バーンバックさんは、激職だなんてグチは、18年間、1回ももらさなかったのにねえ」と話してくれたものです。
その下にコピー・チーフ、その下にコピー・スーパーバイザー、アシスタント・コピー・スーパーバイザー、コピーライター、ジュニア・コピーライターがいます。
アート部も同じような構成になっています。
直接に部下を持っているのはスーパーバイザーで、大体5、6人のライターが配属されています。
したがって、あるコピーライターがVWの広告担当を命ぜられると、彼は監督をしている立場のスーパーバイザーもVWを担当したことになるわけですが、実際には手を出さないで、アイデアの良否について判断するだけのようです。
このへんが日本の組織と違うところで、形だけを見るとDDBのクリエイティブ部門の組織もピラミッド型になっているようですが、機能の仕方は、上から命令が順々に流れるのではなく、直接に担当者が指名され、監督はそれを了承するのです。