創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

02-14 人間付合いから始まる

ロビンソン夫人が、相互尊敬という言葉で説明したペア・チームの運用のコツを、幹部コピーライターのグリーン女史は、女性であることを断りながら、
「コツがあるかどうかということはちょっとわからないんですけれど、もし何かあるとすれば、相手がアートディレクターだからというんじゃなくて、だれとでも、要するに人とうまくやって行く秘訣と同じものじゃないかと思います。
まず第一に、彼らも人間です。で普通の人間付合いという所から始めて行かなければならないことだと思うのです。
アートディレクターたちも、それぞれ、その時どんなものが必要なのかということを持ってくるわけなんです。
そして、たまたま私のものと彼らの要求するところ合えば、それで一緒に仕事をすることになるんですが、私の立場からいえるのは、確かに女であるってことで、ある程度有利なことがあるかもしれませんね。

というのは、アートディレクターたちと理解し合う時に、お互いが必ずしも競争的な立場に立たなくてもできる。
つまり、対抗し合うって立場に立たないで話合いができるということです。
仲間という意識のほうがより強いわけね。

男の人ほうでもやっぱりそう思うかもしれませんね。
こちらが女であるということで、なごやかな雰囲気で話合いができる、という面があるかもしれませんわ。

秘訣というほどのものは特にありませんが、アートディレクターたちを、いい仲間、いい友だち、として付き合うのがいいんじゃないかしら。
そして、お互い、同じ気持ちを持った人間同士が、協力して仕事をするんだという考えに立つことじゃないかと思います。

そこに職業意識だとか、何か特に専門職を持った人間だというようなお互いの意識は、持たない方がいいんじゃないかしら。
そういうエゴがあると、うまく行かないと思います。

このご質問もむずかしくて、私はあまり自信を持って答えられないんですけど、そんなふうに考えていつもやっていますわ…(笑)」

確かに、お互いが専門的な立場を強調し合うのであれば、ペアでチームを組む必要はないわけです。
自分とは違う質の情報を加え合うことで新しいアイディアを生む作業をするのがペア・チームの目的なのですから。

結局いえることは、ペア・チームを成功させるのは、その人間性がまず基盤だという平凡なことのようです。