創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

2007-03-01から1ヶ月間の記事一覧

(8)オーバックスの広告(5)

お約束、逆立ちのビジュアルを使った広告。 オーバックスの〔少年・少女衣料売り場〕 【訳文大意】 「無理ですよ」 彼にそんな遊びをしないで---っていっても。 オーバックスが丈夫な生地を探してきました。 【訳文大意】 「風変わり族にも」 例のジャズがお…

03-20 DDBできっと仕事をしてみせるぞ

すぐれた仕事を続けるように配慮することが、とりもなおさず、よい顧客を引きつけることになると、第1章でお話ししました。 それは、よい顧客を引きつけるだけではなく、よい人材をも引きつけることになるようです。 DDBの幹部コピーライターの一人であるレ…

02-20 『VW(フォルクスワーゲン)に乗ってアメリカを見ようよ』

クローン氏はまず、彼がVWを担当することになった理由を、当時(1959年)のDDBにおいて、VWについて何か知っているただ一人の人間であったからだと話します。 クローン氏は、アメリカに最初にはいってきたVWを持っていたことがあったのだそうです。 「多分、…

01-20 偉大な伝道師にもなれた人

「広告で人が逆立ちしているところを描いたとする。人が逆立ちしているビジュアルを使うと、大概の読者はそこに目を止めるでしょう。 けれどもその目を止めた次の瞬間に、間髪を入れず説得にまで持ち込むことは非常にむずかしいことです。 しかし、もし私が…

(7)オーバックスの広告(4)

なにしろ、40年前の水着の広告ですから、ご期待ほどには露出してません。 まあ、説得の手練手管をお楽しみください。 (もっと大きくご覧になりたかったら写真をクリック) 左:オーバックスでは、オール・オア・ナッシングです これが、今年ご推奨の水着で…

03-19 DDBをとても尊いところと考えていた

確かにロビンソン夫人のいうとおり、DDBには、外部から訪問した者にもそれとわかる明るさがあります。 私のケースは特別かもしれませんが、DDBを訪問していた数週間、重苦しい気分に襲われたことは一回もありませんでした。 それは、DDBの人たちの自信が、フ…

02-19 クリエイティビティの真の機能

VW(フォルクスワーゲン)の広告キャンペーンについては、今さらうんぬんする必要がないほど、日本でもアメリカでも論議がつくされて、クリエイティブな広告の一つの手本にまでなっています。 広告とはまるで関係ない『世界の自動車』(奥村正二著・岩波新書…

01-19 アナログ能力と創造性

ブルーナーといえば、教育界の人々にはよく知られている人です。 「左手のためのエッセー」という副題を持った著書『直観・創造・学習』(橋爪貞雄訳・黎明書房刊)があります。 そのの中で、創造というものを「効果的な驚き」を生じさせるような行為と定義…

(6)オーバックスの広告(3)

The rich get Richer. リッチな人が、さらにリッチに… 人を戯画化した、ユーモラスな、このシリーズ。 リッチな人のイメージが、執事、メイド、猟犬、ロールス、西部の大ざっぱな男---と、ステロタイプでおかしいのです。じつは、ニューヨークの多くの人たち…

(5)オーバックスの広告(2)

新進気鋭のアートディレクター---バージェロン氏によるハイ・ファッションの訴求。 (それまで、オーバックスの婦人衣料は廉価ではあるが、やや洗練さに欠けると思われていたふしがある)。 【見出しの意訳】 「こんなの、いかが?」シリーズ (1970年代の初…

03-18 だれとでも気軽に話し合っている

DDBを創業した時に「足かせを解かれた人のように、牢屋を飛び出した人のように、自由を喜び合った」というロビンソン夫人に、DDBはいまでもそういう雰囲気を維持していると思うかと尋ねたところ、 「DDBは、方針としてそれを大切にしています。 でも、12人し…

02-18 DDBペア・チームの「レッグワーク」

ラインゴールド・ビールの例で、マイヤーズ氏とローゼンフェルド氏のペア・チームが何回も工場を尋ねて工程を観察したり販売部門の人に話しかけたりした経過は、川喜田教授が『発想法』で述べておられる、情報を探検に行く過程、個々の現象を観察・記録する…

01-18 発見する時には直観的、表現する時は論理的

タトンは、『発見はいかに行われるか』(渡辺・伊藤共訳・南窓社刊)の中で、ポアンカレの言葉を引用しながら、創造的人間の間に見られる二つのタイプとして、論理型と直観型をあげています。 「(数学者の二つの型のうちの)一つは論理一点ばりというタイプ…

(4)オーバックスの広告(1)

DDBの創業時、バーンバックさんは、グレイ広告代理店でのオーバックスの広告をいっしょにつくっていたデザイナーのポール・ランド氏でなくロバート・ゲイジ氏をなぜ選んだかは、[第1部 DDBの誕生]の…、「考える友人…ポール・ランド」「選ばれたのは、ゲイ…

03-17 大きくなっても自由を失わない

バーンバック氏が日本での講演を「クリエイティブ部門の人たちに自由を与えてあげてください」という言葉で結んだ意味は、以上書いたような意味だったのです。 しかし、もう2つばかり書いておきたいことがあります。 1つは、幹部コピーライターのグリーン女…

02-17 ラインゴールド・ビールの事例

ラインゴールド・ビール(Rheingold Beer)の広告で、それまで広告ではタブーとされていたニューヨークに在住する各国人種を取り上げて話題をまいた幹部アートディレクターの(シドニー)マイヤーズ氏が、そのアイデアを思いつくままを書いていますので紹介…

01-17 直観を信頼しよう

「正しいことを研究調査して発表することは非常に簡単です。 しかし、それをただ正しいことだから言おうということだけでは決して有効な広告にはならないのです。そこに、芸術的表現力を持つタレントがあってはじめて人びとが信ぴょう性を抱いてくれる、説得…

(3)ぼくが唸ったポスター

オーバックス(Ohrbach's)は、ニューヨーク市のマンハッタン区34丁目にある、婦人もの衣料を安価に提供しているデパート(というより、大型専門店)です。バーンバックさんは、DDB設立の前のグレイ広告代理店で、オーバックスの広告をクリエイティブ・ディ…

(2)VWビートルの4人のアートディレクター

1949年に全米で売れたVW(フォルクスワーゲン)ビートルは2台だったが、DDBが広告キャンペーンを引き受けた1959年には、それまで「広告の助けをあまり借りないで」12万台に達していたと、米国VW社C.H.ハン総支配人は語っている。 もちろん、DDBが創造したV…

03-16 表現の自由を創造

一方、幹部コピーライターであるディロン氏は、DDBにおける自由というものを、広告ビジネスの歴史の中に位置させて話してくれました。「代理店業の歴史は、新聞が広告を掲載してくれるような広告主を持ってきた人に15%のコミッションを与えていた時代に始ま…

02-16 野外科学者の仕事の12段階

東京工業大学の川喜田二郎教授は「KJ法」と呼ばれる『発想法』(中央新書)で知られている人ですが、文化人類学研究者として各種の探検に従事されているうちに、組織の中での自分の生かし方を考察され、『パーティー学』(教養文庫・社会思想社)、『チーム…

01-16 広告は説得である

DDBに対する非難のほとんどは、バーンバック氏の信念である「広告とは、つまるところ説得である。そして、説得は科学ではなくてアートである」という一句に集中したといっていいでしょう。なぜそれが非難されたかを説明する前に、バーンバック氏の主張を紹介…

(1)9mと12m

DDBのクリエイティビティの実力を遺憾なく発揮、同社を代表する…いや、20世紀を代表する2つのキャンペーン…VW(フォルクスワーゲン)ビートルとAvisの視覚的フォーマットを創造した、前アソシエイト・クリエイティブ・ディレクターのクローン氏。 彼がデザイン…

03-15「批判の過剰」なし、「監督の過剰」なし

また、幹部コピーライターのリ−氏に会って、エンジニア出身の彼がこの問題についてどう考えているかを質問してみました。 エンジニアも広告制作者もある意味では同じ専門技術者であり、共通の精神構造を持っているように思ったからです。彼は「批判の過剰」…

02-15 まず情報集めから始まる

さて、現実にぺア・チームによるクリエイティブ・ワークが、DDBでどのように進行するかをお話ししましょう。パーカー夫人はいいます。「それでは、実際の仕事ぶりはどうなのでしょうか? コピーライターとアートディレクターが向かい合って座って、作品をつ…

01-15 アウトサイダーになるつもりだった

ロビンソン夫人は、あるインタビューに答えて、「バーンバックさんから、新しい代理店を創立することを打ち明けられ、『どう、いっしょにくるかい?』っていわれた時、私はワクワクしちゃったのです。 だって、私には、失う経歴もなかったし、まだ初心者でし…

(17)「コピーとアートの結婚を語る」(後編)

レオン・メドウ DDB副社長兼コピー部アドミニストレイター ベン・スピーゲル DDB副社長兼アート部アドミニストレイター 『DDBニュース』1968年7月号に載った同誌編集長によるインタビューを、許可を得て『DDBドキュメント』に翻訳掲載…同書からの転載。 <<…

(16)「コピーとアートの結婚を語る」(前編)

レオン・メドウ DDB副社長兼コピー部アドミニストレイター ベン・スピーゲル DDB副社長兼アート部アドミニストレイター 『DDBニュース』1968年7月号に載った同誌編集長によるインタビューを、許可を得て『DDBドキュメント』に翻訳掲載…同書からの転載。 広告…

03-14 経営者の雰囲気がそのまま下へ

幹部コピーライターの一人であるグリーン女史は、「DDBの雰囲気を話してください」という要請に、こう答えました。 「多分、DDBは最高の雰囲気を持っているところの一つじゃないかと思うわ。 というのは、上の人たち---経営層の人たちの雰囲気が、そのまま下…

02-14 人間付合いから始まる

ロビンソン夫人が、相互尊敬という言葉で説明したペア・チームの運用のコツを、幹部コピーライターのグリーン女史は、女性であることを断りながら、 「コツがあるかどうかということはちょっとわからないんですけれど、もし何かあるとすれば、相手がアートデ…