創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

(345)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(41)

乞う、ご参加 さて、ビートルのキャンペーンの軌跡を1ヶ月間、たどりました。31点以上、順を追い、同時代人的に見ていただきました。 31点の中で、あなたが好ましいとお思いになった---いい、ではなく、好感をもったヘッドラインか(番号---日付です)…

(344)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(36)

・ふつう、人は目に見えないものは理解したがらないもの。変化を恐れる習性のあらわれかもしれない。いや、あなたは革新派だから、変化を恐れない---だから新しいものをやすやすと認める---けれど、革新派は少数派でもある。 政治の話じゃなく---クルマの新機…

(343)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(35)

広告なんかのクリエイションに携わっている者として、きょうのようなイラスト(写真)を見ると、DDBのコピーライターとアートディレクターへ与えられたセールス・プロポジション(販売命題)を想像してしまう。きょうの場合は、「変わらない外観」あるいは…

(342)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(34)

【本邦初訳】たしかに、初夏なんか、オープン・ルーフで走りたいときもあります。米国は、日本以上に東西南北にひろがっているから、いろんなタイプの要望があるのでしょうね。 キメ細かな対応。 私たちの車の最高価のオプション:天井にあいている穴。 フォル…

(341)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(31)

社交は他人との重要な交わり術である。その潤滑油はジョークである。 ジョークとユーモアの境界はうすぼんやりと煙っている。 ビートルのコピーに「クリッチック(捨てゼリフ)」を入れたのは「自分だ」と2代目コピーライターのボブ・レブンソン氏が告白して…

(340)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(30)

【本邦初訳】---と力むほどのこともないのですが、これまで3,4冊だしたビートルのどの本にも載せていませんでした。 40年ほど前、あれほど丹念に雑誌類から切りとっていたつもりなのに---。 こんど、[ニューヨーカー・アーカイブ]を丹念に1ページずつ…

(339)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(29)

新車が安い。中古が高い。---人間はたいていは、心の片隅にケチ(合理精神)を閉じ込めています。 そこを笑いでごまかしながら衝いたのが、シーヴァス・リーガルのシリーズでした。 ビートルは、もっとスマートにやっています。 新車が安い。 フォルクスワー…

(338)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(24)

いまさら---だが、20世紀を代表するビートルの広告の中でも、とりわけ賞賛されているのが、この"Think small." 広告が、受け手の人生観、価値観に大きく影響を与え、結果としてモノを買うことにつながったという意味では、現代広告の金字塔的広告ともいえ…

(337)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(27)

3分---5分---10分---どんなに目をこらして、それぞれの年型のビートルの横顔を比較しても、おんなじ写真の羅列です。広告が10分も凝視されたら、それだけでニュースです。(笑) フォルクスワーゲンの進化論 ひれつきのフォルクスワーゲンをご指摘になれ…

(336)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(26)

広告表現のほとんどは、意識するとしないにかかわらず、対比的表現を使う。 使用前 対 使用後、旧製品 対 新製品、昨日 対 今日、今日 対 明日、他社 対 自社、老 対 若、苦 対 楽、美 対 醜---これも対比だが、次元の違うものを対比させて絶妙な説得効果を…

(335)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(25)

このシリーズは、タイトルにあるように、常盤新平さんも植草甚一さんも開高健くんも好きだった『ニューヨーカー』誌が、創刊号からの広告も含めて全誌面を[アーカイブ]にしてネット上に有料公開しているので、その購読会員になり、1ページずつ丹念にチェ…

(334)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(24)

製品の一部だけを提示してビートルと悟らせる手法は、フォルクスワーゲンのみごとな表現法の一つになっている。 もちろん、奇抜だからやっているわけではない---いや、奇抜で人の注意を惹きつつ、製品アイデア(コンセプト)の優秀さに導いていく。 10数年…

(333)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(23)

1960年といえば、50年前ですね。そのころ、ぼくはコピー・チーフとして、ト○タ車の広告やパンフレットの文章を取り仕切っていました。いま、こうしてVWのものを改めて見て(こんなふうに、誰にでも理解できるように、やさしくは書いてなかったことを)反…

(332)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるピートル・シリーズ(18)

これって、マンガチックですね。当時、アメリカでも若い人のあいだに劇画やマンガが流行っていました。日本だけではなかったのです。若者の図形認識の好みは、先進国共通でした。 ビートル・チームは、さっそく、取り入れました。 もっとも、劇画でなく、その…

(331)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(21)

フォルクスワーゲンの広告の特徴の一つに、[自己否定もどき]---いってみれば、擬態があります。その典型が、"Lemon (不良品)"です。 広告は、自社製品の美点をあげつらうもの、という世間常識に挑戦しているわけですが、すべての広告主が[自己否定もどき]の…

(330)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(20)

ケーニグ氏の退社により、それまでカタログ関係のコピーを書いていたレブンソン氏が登用された。もちろん、しばらくは老練のダヴィッド・ライダー氏が介添えした。レブンソン氏は高校で国語(ということは英語)の教師をしていたから、呑み込みは早かったが、…

(329)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(19)

コピー量! 見た瞬間、「ウヘェッ!」 「これを訳すのかい」「小見出しぐらいつけとけよ」 素読してみると、スイスイ読めてしまう。だから、訳もスイスイ。「いったい、どうなってんだ」って考えこむ。 わかったことの一つは、メイル・オーダー(通信販売)スタ…

(328)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(18)

1961年ごろ、つまり、いまから50年ほど前、クルマは、ツー・トーン、スリー・トーン、ひれつきが流行していました。子どもたちはもちろん、おとなたちも年式がいいあてられることを自慢していました。つくられた流行でした。流行が去ってみると、残ったのは…

(327)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(17)

珍妙な写真です。 音は車内から聞こえてくるのに、ドアをあけてたしかめています。 「時速100kmで走行していて、聞こえてくるのは電動時計の音だけ "At 60 miles an hour the loudest noise in this new Rolls-Royce comes from the electric clock."」と…

(326)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(16)

製品の全貌を見せないで、製品を語るという、凄腕のクリエイティビティ。キャンペーンがはじまって1年と9ヶ月経過したころ(第12番目のもので、VWディーラーはすべての部品の在庫を義務づけられている)---サービス網の完備と(資源と家計の)節約志向を…

(325)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(15)

サービス網の一つが、ビートルの全部品を在庫すること。 在庫するに耐えられるだけの資金力のあるところを選ぶこと。 さらに、修理技術者の訓練などの徹底。 サービス網を敷いてから、クルマをデリヴァリーしていく---という、当然のことをしているんです。 …

(324)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(14)

タブーを破る---その一つがこれです。ピカピカの新製品を提示するのがクルマの広告と思われてきました。各メーカーとも、そうしてきました。 160,000kmも走行ずみの古ぼけた、「後期高齢車」といわんばかりの写真を使って、新車が売れるか---とふつうなら思…

(323)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(9)

高名なカー・デザイナーの名前が明かされていないところがミソです。 うっかり明かすと、そのデザイナーがスタイリングしたクルマの宣伝になってしまうし、読み手の興味をビートルからほかへそらしかねません。 主役から気をそらさせない手法を学びたい。 イ…

(322)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(8)

『Ad Age』誌の略称で呼ばれている週刊誌『Advertising Age』は、世界最多の部数を誇る広告専門誌。その『アド・エイジ』が先年、広告畑の有名クリエイター97名に、「20世紀に功績をあげた広告キャンペーン」を問い、集計結果をベスト100として発表。…

(321)[ニューヨー・カーアーカイブ]によるビートル・シリーズ(7)

ビートルは、部品々々の集合体であるから、どの部分の部品であってもディーラーが在庫している--と訴えます。 そんなことを主張したクルマの広告って、商品としてのクルマの歴史がはじまってからこっち、あったでしょうか? それだけでもユニークだし、熱愛…

(320)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(6)

ビートルは「シンプル」で、「正直」で、「合理的」で、「経済的な」車であるから、広告もモノクロでいい、カラーはぜいたく---と、終始一貫、モノクロでいくのかなと思いきや、突然、カラー版が登場。「おいおい、大丈夫かね?」と、ディーラーの店主たちが…

(319)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(5)

下の写真の泡---なんでもない泡のように見えますが、とんでもない、じつは、A/Dのヘルムート・クローン氏がスタイリング部のミス・カタルドに「芸術的な泡を描け」と命じた結果なんだそうです。DDBは、ほかの広告代理店に先駆けて、視覚的な完璧さを実現…

(318)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(4)

第4弾 なぜ、エンジンが後部にあるのでしょうか? 在来の車は、フロント・エンジンの力を長いドライブ・シャフトを経て後車輪に伝えます。 フォルクスワーゲンのリア・エンジンは、後車輪にじかに力を伝えて、重さと力を節約しています。 このデザインが、いち…

(317)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(3)

第3弾 ちょっぴり次元の低い話題です。技術指導員のゲルハルト・ベッケルは全米を飛び回って指導にあたっており、撮影スケジュールがあわなかったのでしょう。代役が立てられました。もっともベッケルらしく、温和でやさしげなDDBの社員---重鎮アートディ…

(316)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(2)

第2弾 まるで、カタログを雑誌広告にしたようなこれは、第1弾の広告から1週とばして、1959年の第3週号の『ニューヨーカー』誌に掲載されていました。 米国車が華々しく新車を発表する、ほぼ1ヶ月前でした。しかも、米国VW社は、多くの受注残をか…