第3部 DDBの環境
そろそろ私は、第一章で提出しておいた疑問に対する解答を出すべきでしょう。 (1)どうしてDDBがつくった広告が、私の注意をより多く引くのか? それは、私の興味に合っているという理由からなのか?あるいは、DDBがつくるほとんどの広告が常にレベル以上の…
ついでにパーカー夫人に質問してみました。 chuukyuu「よい雰囲気を持った代理店とはどういう代理店のことか、大体わかりました。『制度つきの自由』のほかに、何かあるとすれば…」 パーカー「給料ね。それと地位。肩書を与えることも必要ね。 昔のDDBは、給…
しかし、念のためアカウントの委譲について、パーカー夫人に尋ねてみました。 chuukyuu「DDBでは、当初スーパバイザーが担当したお得意を、一年後ぐらいにもっと若い人とか別の人に回すことがありますね。ところが一方では、フォルクスワーゲンのレブンソン…
DDBが扱っているオーバックス百貨店の広告は、DDB創業以来の仕事で、これもVWと同様に重要なお得意です。これをゲイジ氏から引き継いだのは、(リチャード)バージェロン氏でした。DDBには1963年に入社し、入社と同時に起用されたのでした。当時28歳。その時…
ついでですから、DDBで部下に仕事を譲る時の具体的なケースを紹介しておきましょう。これも一つの教育だと思いますので。 まず、幹部アートディレクターのシローイッツ氏の例はこうです。 「四年ほど前、バーンバック氏が私のところにきていいました。『レン…
ローゼンフェルド氏は、 「できるだけ校閲はしないようにしています。ライターのイニシアチブをぶちこわしてしまうからです。私は悪いところについては大体の感じで指摘し、そのあとは、彼自身の言葉で書き直させるようにしています。DDBでは、こうしなけれ…
たくさんの幹部コピーライターを育て上げてきたロビンソン夫人は、どうやって教育したかとの質問に、 「まず、練習させることを第一に置きました。私たちはできるだけたくさん彼らに書かせましたし、きびしく教育しました。 DDBの効果的なやり方は、むろんア…
もう一人、グリーン女史の答を紹介しましょう。 「そうね...(笑)特に教授方法といえるかどうかわかりませんが、問題があったら、とにかく、なんでも私のところへ持ってきて話し合いましょうといっています。なるべく私も、彼らの才能を育てるように努力し…
これに対して、アメリカ的教育法といわれているものは、テキストによる体系的基礎教育訓練とその実習の反復で、一定水準まで短期間に引き上げて行く能率的なやり方です。 DDBの教育はどうなっているのでしょうか? 幹部コピーライターのレブンソン氏に聞いて…
すぐれた仲間の存在は刺激と同時に教育的意味も持っているようです。パーカー夫人は、彼女が入社した創業間もないころのDDBについて、 「私は、とても幸運だったのです。私がDDBにはいった当時は、バーンバックさんとロビンソン夫人とゲイジさんが主要なキャ…
また、幹部コピーライターのディロン氏は、DDB入社前に10年ばかり他の代理店でキャリアを積んできた人ですが、「私が入社した時に、競争相手は、外にいるのではなく、この建物の中にいる、といわれましてね。最初は戸惑いましたが、だんだん慣れてしまいまし…
これは、DDBだけに限ったことではありませんが、アメリカの代理店のクリエイティブ部門の幹部や中堅クラスの社員は、ほとんど個室を与えられています。その個室の壁に、自分の作品だとか、気に入った写真、絵などを1面にはっている人が多いようです。 もちろ…
幹部アートディレクターのシローイッツ氏は、DDB入社当時のことを尋ねた私への返事として「世界最高の広告代理店であるDDBに職を得る努力をしてみようと思った。すぐに志願し、採用されたことを知ると大得意になった」と書き送ってくれました。 「今から数年…
それにもかかわらず、不幸な事態は起こるようです。パーカー夫人は電通でこう話しました。 「しかし、クライアントもキャンペーンをボツにいたします。その場合、私たちは、そのキャンペーンで気に入らぬ点がどこにあるかを問いつめます。納得できるものであ…
ニューヨーク・タイムズ(1958年4月4日付)は、バーンバック氏が語ったところによるものとして、DDBは、クリエイティブ部門の人間が、日常業務面では、クライアントと接触しないようにしていると紹介しています。 「クライアントとのつらい戦いをするのは、…
もちろん、DDBでも問題が起こります。そこのところを、パーカー夫人は、電通でこう話しました。 「それでは、アカウント・エグゼキュティブの発言権はどの程度のものか、お知りになりたいでしょう。アカウント・エグゼキュティブはキャンペーンを却下できる…
こうしたことが創造にどのように関係があるかを、かつてDDBにいたことのあるモス氏が、次のように話してくれました。 「どんなに力倆のある人間だったとしても、自分の作品が通らなかったり、一べつもされなかったり、クライアントのところまで持っていかれ…
その一つとして、クリエイティブ部門とアカウント部門の関係があげられます。 それについて、パーカー夫人の講演会での発言が一つの示唆をしてくれます。 「数年前、バーンバックと(ネッド)ドイルの二人が共同で、クリエイティブ部門とアカウント部門両者…
もちろん、いうだけなら簡単だという言い方もできましょう。しかし、ロビンソン夫人が今日までに育て上げてきたコピーライターの数は、それこそ大変なものです。 しかも、公の席で次のようにハッキリといえる人はそう多くないのではないでしょうか。彼女は、…
同じ意味のことをDDBの幹部コピーライターのディロン氏もこう話してくれました。 「大学出たてとか、これまでに代理店で働いたことがない人とか、ライティングやアート畑にいたことのない人を採用することもありますが、そういう人たちにはDDBはよそと違うと…
(ユージン)ケイスという人は、かつてDDBで準コピー・スーパバイザーまで務めた人ですが、現在はDDBから大量に人材を引き抜いてつくられたある広告代理店(ジャック・ティンカー&パートナーズ社)の経営幹部をしています。 この代理店は、調査重視の傾向が…
この点について、ソニーやジャマイカ観光局を担当し、幹部コピーライターであったローゼンフェルド氏に会って尋ねてみました。 chuukyuu「今日のアメリカにおいて、才能豊かなコピーライターであれば、どんな代理店で働いても、よいコピーが書けると思います…
グリーン女史が「いつかDDBで仕事をしてみたい、DDBで要求されているような水準の仕事も、私ならやれる自信がある」とは思っていても、「十分に実力がつくまでは入社運動をすることができなかった」といっていたことを先に紹介しました。 「自信家」の異名を…
幹部コピーライターであるディロン氏は、DDBでのクリエイティブ部門の人材選別方法を、こう話してくれました。 「ライターでもアートディレクターでも最初はその人個人にインタビューするということはありません。 まず彼の作品をインタビューします。 とい…
数多くのコピーライターを採用してきたロビンソン夫人は、能力のチェックをどうやったかについて、 「創立当初しばらくは、能力を見て判断するのは困難だったのです。 というのは、才能あるライターであっても、それを実際に表してみせるチャンスがほとんど…
DDBでコピー部管理部長をしているメドウ氏は、いろいろな代理店を渡って広告を書くかたわら、いわゆる小説を書いていた人ですが、 chuukyuu「DDBをお選びになったのはなぜですか?」 メドウ「もちろん、なぜ私がDDBにはいったか、という理由は大いにありまし…
次に紹介する入社の例は、あるいは特殊すぎるかもしれません。 けれども、DDBの人材採用の一面を教えてくれます。 幹部コピーライターのパーカー夫人は、DDB創業直後、すなわちDDBがまだ小さかったころに運よく入社できた人ですが、秘書からコピーライターに…
幹部コピーライターのリー氏が話してくれた彼の入社のいきさつは、ちょっと変わっていますが、サンプル作品による審査ということと、DDBのクリエイティブ部門のおもだった人たちが、才能のある人材を見つけ出すために、たえず関心を払っていることを暗示して…
すぐれた仕事を続けるように配慮することが、とりもなおさず、よい顧客を引きつけることになると、第1章でお話ししました。 それは、よい顧客を引きつけるだけではなく、よい人材をも引きつけることになるようです。 DDBの幹部コピーライターの一人であるレ…
確かにロビンソン夫人のいうとおり、DDBには、外部から訪問した者にもそれとわかる明るさがあります。 私のケースは特別かもしれませんが、DDBを訪問していた数週間、重苦しい気分に襲われたことは一回もありませんでした。 それは、DDBの人たちの自信が、フ…