東京工業大学の川喜田二郎教授は「KJ法」と呼ばれる『発想法』(中央新書)で知られている人ですが、文化人類学研究者として各種の探検に従事されているうちに、組織の中での自分の生かし方を考察され、『パーティー学』(教養文庫・社会思想社)、『チームワーク』(カッパ・ビジネス)などを書かれました。
川喜田教授が科学というものを三つに分けて、それぞれを「書斎科学」「実験化学」「野外科学」と呼ばれた時から、広告の創造という仕事は「野外科学」に属するな、と感じていました。
『発想法』から引用します。
「野外とはありのままの現実である。
その現実をなんとか知ろうとし、それに対してなんらかの対策を立てようとしなければ、われわれの生活は成立しない」
ということですが、広告の創造が扱うものも、まさしく私たちが生活している、このありのままの現実であるからです。
教授が自分の仕事を12段階に分けておられる分類法に従えば、広告の創造という捕らえどころのない仕事も、ある程度対応させうるのではないかと考えました。
『チームワーク』から12段階を紹介しましょう。
(1) 問題提起
いかなる仕事の課題をとりあげるかの段階。
(2) 情報集め
その問題に関係がありと思われる情報をいかに集めるかの段階。
(3) 整理・分類・保存
集めた情報の処理段階。
(4) 情報要約化
同質的な情報を要約する段階。
(5) 情報統合化
質の異なる情報を組み立てて、そこに意味を見いだす段階。
(6) 副産物の処理
情報をまとめていく過程で、しばしば意外な、そして関心をそそられる事実の発見されることがある。捨てるには惜しいので、この段階にとくに設けた。
(7) 情勢判断
情報をまとめ終わったら、問題提起とにらみあわせて、その情報に価値判断を加える段階。
(8) 決断
情勢判断に基づいて仕事をなすべきかどうかを決定する段階。
(9) まとめの計画
計画が達成されるときにはこういう形に落ち着く、ということを明らかにする段階。
(10) 手順の計画
まとめの計画を、どこから着手し、どのような手段で実行に移していくかというプログラム化の段階。
(11) 実施
(12) 結果を味わう
この諸段階を自分の主体性と責任において首尾一貫して成し遂げた時に「仕事をした」ということができるし、喜びもあるわけです。