創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

02-03昇格しても実作はやめない

また、VWのライターであるレブンソン氏は、監督者としての職務と、ライターとしての実作の時間的な配分について、こう答えています。

問い「どのくらいお書きになっていますか?」
レブンソン「ここでは、全然書いていません。以前は書いていましたけど」

問い「広告は全然書いていないんですか?」
レブンソン「広告は書いています。でも、この建物の中じゃ書かないというわけです。オフィスの中じゃできないんです。いつも、いろんなことがあって」

問い「いつ書くんですか、夜?」
レブンソン「夜だとか、週末だとか、汽車の中ですね。汽車にはたった35分しか乗らないんですが、事故やら、うまい具合の20分遅れなんかを頼みにするわけです。」

 パーカー夫人もこう話しました。
「ビル・バーンバックさんの下にいる社員すべて??コピー・チーフやチーフ・アートディレクターも含んだ全員??は、おのおのがアカウントを手一杯抱えており、自らコピーを書いたり、アートディレクションの仕事をしています。

私たちの管理者としての職務は、二の次ですから、DDBでは、クリエイティブの仕事におさらばして、管理職としての職務に専念するというわけではありません。

実際のところ、これとは逆に、昇格すればするほど、より重要なお得意の仕事を自分でやるように任せられるのです」(注・前出「クリエティビティ」)
 DDBでクリエイティブ部門の幹部(スーパーバイザー)と呼ばれるのは、その人の経歴や才能によって多少の差はありますが、大体30歳前後です。経験年数は6、7年から10年ぐらいと見てよいでしょう。多くの事例を扱ってベテランの域にはいりかけたころです。

 大脳生理学的にいって、脳細胞の働きは35歳ぐらいから凋落が始まるそうですが、前頭葉の創造を担当している部分は発達を続けるといいますから、彼らを単に判断する側の立場、つまり監督に専念さすのは会社としても損だということになります。

 ついでだから記しておきますと、前項に登場したメドウ氏は、すでに50歳を越しています。