創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

03-28 若い時は雰囲気のよくないところで働くのも一案?

(ユージン)ケイスという人は、かつてDDBで準コピー・スーパバイザーまで務めた人ですが、現在はDDBから大量に人材を引き抜いてつくられたある広告代理店(ジャック・ティンカー&パートナーズ社)の経営幹部をしています。
この代理店は、調査重視の傾向が強かったもう一つの大代理店の実験衛星のような形でつくられ、その成功によって、調査重視の兄代理店のほうも体質改善への努力を始めています。
ところで、そのケイス氏ですが、若い人向けの言葉として、少々乱暴な言い方で、次のように答えました。
chuukyuu「コピーライターが、あまり居心地のよくない代理店で働くのと、望ましい雰囲気の代理店で働くのとでは、その人の才能の進歩と能力発揮に何か違いが出てくると思われますか?」
ケイス「そう、それは確かにあると思います。でも私は、初めはあまり居心地のよくない代理店で働くのはとても有益だと思っています。
そこでは、その人は本当によい仕事をしたいと切実に思うでしょうし、そこの代理店でそれまでなされた仕事の平均的レベルよりも高い勝利を収めたいと思うでしょうし、また実際に収めることができるのを証明できるでしょうから。
悪い代理店で働き、よい作品をつくろうと努力するのは、とてもよい、きつい修練の場だと私は思います。
もっとも、莫大なムダ働きとエネルギーの消費はありますが、一度その試練を受ければ、よいところで働くことのありがたさがわかるのですからね。
人は、ある広告が公表され、効果を現わすまでは、その広告がよいものかどうかわかりません。それまでは、推測だけです。
もし、あなたが、広告が発表され、実際に効力を発揮するのを見られないような場所にいるとすれば、あなたは自分が何をしているか、本当にはわからないのです」
chuukyuuアメリカでは、コピーライターの間に、一つところにとどまっているよりも、よりよい雰囲気の代理店を求めて絶えず別の代理店へと移る傾向があるように思いますが、これは一般的な傾向ですか?」
ケイス「ええ、ええ、そうです」