創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

03-45 幸運を祈るよ

DDBが扱っているオーバックス百貨店の広告は、DDB創業以来の仕事で、これもVWと同様に重要なお得意です。これをゲイジ氏から引き継いだのは、(リチャード)バージェロン氏でした。DDBには1963年に入社し、入社と同時に起用されたのでした。当時28歳。

その時のことを彼は「ボブ・ゲイジから『君は、オーバックスとカルバート・エクストラの仕事をやってくれ』といわれた時、うれしくもあり、恐れもした」と、私あての手紙に書いてきています。


chuukyuu「ゲイジ先任副社長があなたにオーバックを渡した時、なんていいましたか?」
バージェロン「私が思い出せるかぎりでは、彼は『幸運を祈るよ』といい、『何か議論したいことがあれば、いつでも応じるよ』とつけ加えただけでした。私の気持としては、オーバックスのための戦略は、14年間のDDBのファイルを見れば、はっきりわかるだろうといったところでした。オーバックスの『ロー・プライスでハイ・ファッションを』のセリング・ポイントは、一晩で変わりそうもありませんからね。こういったことがアートディレクターに与える問題は、この計画を進めるために、新しくて刺激的な方法を見つけること…です。バーンバック社長やプロタス女史(注:オーバックスのコピーライター)のような人々が、このオーバックスに積極的な注意を向けている以上、思ったよりそんなにむずかしいことではないでしょう。けれど、私たちの議論から生まれ、そして、できるだけエキサイティングで面白いアイデアを生み出す責任が私に残されているんだ…と、こういったところが私の気持でした」


私は、ここにDDBの配慮を読み取ります。新人をDDBになじますために、広告方針がすでにできあがっているキャンペーンを任せているのです。つまり、任された新人は、決まっている広告方針と目標に向かって、自分の才能を存分に発揮すればよいわけです。全責任を任されるからこそ、新人の場合には、感激が全身を包むようです。




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ぼくが唸ったポスター
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ここにあげたのはほんの一部です。