創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

第3部 DDBの環境

03-18 だれとでも気軽に話し合っている

DDBを創業した時に「足かせを解かれた人のように、牢屋を飛び出した人のように、自由を喜び合った」というロビンソン夫人に、DDBはいまでもそういう雰囲気を維持していると思うかと尋ねたところ、 「DDBは、方針としてそれを大切にしています。 でも、12人し…

03-17 大きくなっても自由を失わない

バーンバック氏が日本での講演を「クリエイティブ部門の人たちに自由を与えてあげてください」という言葉で結んだ意味は、以上書いたような意味だったのです。 しかし、もう2つばかり書いておきたいことがあります。 1つは、幹部コピーライターのグリーン女…

03-16 表現の自由を創造

一方、幹部コピーライターであるディロン氏は、DDBにおける自由というものを、広告ビジネスの歴史の中に位置させて話してくれました。「代理店業の歴史は、新聞が広告を掲載してくれるような広告主を持ってきた人に15%のコミッションを与えていた時代に始ま…

03-15「批判の過剰」なし、「監督の過剰」なし

また、幹部コピーライターのリ−氏に会って、エンジニア出身の彼がこの問題についてどう考えているかを質問してみました。 エンジニアも広告制作者もある意味では同じ専門技術者であり、共通の精神構造を持っているように思ったからです。彼は「批判の過剰」…

03-14 経営者の雰囲気がそのまま下へ

幹部コピーライターの一人であるグリーン女史は、「DDBの雰囲気を話してください」という要請に、こう答えました。 「多分、DDBは最高の雰囲気を持っているところの一つじゃないかと思うわ。 というのは、上の人たち---経営層の人たちの雰囲気が、そのまま下…

03-13 コントロールド・パーミッシブネス

ところで、幹部コピーライターの一人であるパーカー夫人は、DDBの自由を controlled permissiveness という言葉で表現しました。 chuukyuu「一度、DDBをやめて他の代理店へいらっしゃったことがありましたね」 パーカー「ええ、2年間ばかり。若かったんです…

03-12 ライセンスド・フリーダム

コピー管理部長メドウ氏に初めて会った時に、私たちはこんな会話を交わしました。 西尾「DDBのクリエイティブ部門の秘密を一言で言うと、どういうことになりますか?」 メドウ「私たちは、自由を持っています。 もちろん、制限付きの自由……licenced freedomと…

03-11 90%は天国のDDB

そこで、DDBでは、自由がどのように与えられているかを調べてみましょう。 ローゼンフェルド氏に、以前、プリンターズ・インク誌の記者が、こう尋ねたことがあります。「DDBで仕事をするのはどんな具合ですか?」 ローゼンフェルド氏の答はこうでした。 「90…

03-10 コピーを短く!

バーンバック氏と共にDDBを創立したロビンソン夫人については、すでに幾度か紹介しましたが、彼女は同じ質問に対して、少し違った答をしました。「『コピーを短く!』です。そもそも、バーンバックさんといっしょに仕事を始めたころは、全くの新人ライターだ…

03-09いっていることを信じさせよ

幹部コピーライターの(チャック)コルイ氏は、 「バーンバック氏が私に話してくれた言葉で、最も印象に残っており、そして助けとなっているのは、『君がいっていることを人に信じさせなければならない』という言葉です。 これは、私たちがつくったものを彼…

03-08 問題の核心を使え

1968年の秋までDDBに在社して、ソニーやジャマイカ観光局の広告をつくっていた幹部コピーライターの(ロン)ローゼンフェルド氏にも聞いてみました。 「問題の核心を使え…ということですね。利口ぶった態度を取らない──問題というものを一つだけ切り離して考…

03-07 人々とコミュニケートする方法を…

(レオナルド)シローイッツ氏は、DDBの幹部アートディレクターの一人であり、ソニーやVWの広告をつくってきた人です。 彼は、バーンバック氏から学んだものとして、 「とても多くのものを学びました。アイデアのエッセンスをつかむ方法、人々とコミュニケー…

03-06タルムードの「類比による論法」

この等価変換の考え方の初歩的な形が、タルムードの思想の中に発見できるのは、興味深いところです。タルムードの思想というのは、旧約聖書の独創的な解釈学で紀元2世紀の終わりごろに生まれて伝えられたものだといわれています。「タルムードの弁証法」と呼…

03-05 市川教授の等価変換理論

続いて市川教授の創造理論として有名な「等価変換理論」(「創造」創刊号、『等価変換展開の理論の定義』)を紹介しましょう。 これには二つの理論体制があって、それが、単独もしくは相互に補足し合って成立するとされています。 第1理論(スタティックに定…

03-04 イマジネーションの結晶化

1964年の大統領選挙の時、ジョンソン大統領のために『野菊と少女』という題で呼ばれて、政治広告の最高のテレビ・コマーシャルとされているフィルムをつくった、幹部コピーライターの(スタンリー)リー氏は、 「バーンバックさんが私に話してくれた助言…こ…

03-03説得は感情的なものの組み合わせ

コピー管理部長のメドウ氏も、 「バーンバックさんの言葉や彼の広告に関する方法論には学ぶべきものがたくさんあって、特に何かを選び出してみることは難しいですね。 まあ、強いて言うならば、彼の広告に関する感知力は、非常に鋭いと思います。 彼が広告と…

03-02いつも挑戦的な態度を取ること

もちろん、リーダーの考え方に共鳴して集まった集団と、生活の手段としてたまたまその職場にいるという人たちの集団とでは、意識にも大きな違いが出るでしょう。 現在、産業界で人事・労務管理面で『生きがいの組織論』(川喜田二郎・小林茂・野田一夫共著・…

03-01リーダーの影響力を調べてみる

この部のおもな登校人物 氏名 人物紹介 ウィリアム・バーンバック DDB社の創設者。現会長 ポーラ・グリーン女史 DDB社のクリエイティブ・マネジメント・ディレクター。エイビスの広告を創案。 レオン・メドウ DDB社のコピー部管理部長。作家出身 スタンリー…