創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

03-29 若い人たちに対する見方の違い

同じ意味のことをDDBの幹部コピーライターのディロン氏もこう話してくれました。
「大学出たてとか、これまでに代理店で働いたことがない人とか、ライティングやアート畑にいたことのない人を採用することもありますが、そういう人たちにはDDBはよそと違うということなどわかりませんからね。
DDBが他の代理店と同じだなどと思っていて、よそに移ったら一体全体何がどうなっているのやらキョトンとしてしまうこともあるでしょう」
グリーン女史もいっていたように、DDBの環境のよさは上からつくられたものであって、下が戦い取ったものではないだけに、ディロン氏のいう面は強く存在すると思います。
ディロン氏は言葉を続けて、
「このDDB独特の雰囲気を若いライターやアートディレクターは気づいてはいても、本当にはどういう意味を持っているか知らない人が多いんじゃないでしょうか」
と心配しています。
しかし、創業当時からバーンバック社長と苦労を共にしてきたロビンソン夫人は、若い人たちをそのようには見ていないようです。
ディロン氏たち幹部連の間に、今述べたような意見があることをまるで知っているかのように、
「若い人々や入社したばかりの新人を尊敬しなければなりません。
広告をつくるというこの私たちの世界では、小ざかしぶった子供でも――もしその子に広告の問題点を把握する力があるなら――自由奔放性や機敏さに欠ける経験者には出せない、明解な解答を、直観的に出すことすらできるのですから」
と、あるところで講演しています。