創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

03-43 部下からも学ぶ

ローゼンフェルド氏は、
「できるだけ校閲はしないようにしています。ライターのイニシアチブをぶちこわしてしまうからです。私は悪いところについては大体の感じで指摘し、そのあとは、彼自身の言葉で書き直させるようにしています。DDBでは、こうしなければいけないなどと彼らに指摘することは、教育係の職務です」
といい、「彼らと意見が違う時には、彼らの意見に耳を傾けます。こうして彼らから学ぶし、彼らも私から学ぶのです。結局、これが教える側にもプラスになるわけですね」とも話してくれました。


かつて、ローゼンフェルド氏の部下で、今はスウェーデンのある代理店で働いているカッツ氏も「文章なんか直さないさ。そんなことしたら、そのライターがダメになってしまうもの。徹底的に話し合うんだよ」と指導法を述べてくれたことを思い出します。


部下から学ぶものとして、ローゼンフェルド氏は、
「初心者には、一般に先入概念というものがありません。彼らは、人々が無意識のうちに組み立てておいたアプローチに穴をあけます。つまり、彼らは、新鮮な言葉をもたらすのです」といっています。


また、バーンバック氏は創業以来の部下であるゲイジ氏を評して、その指導力をこう語っています。
「ボブは、DDBの創造哲学の発展に大きな貢献をしてきました。彼は、彼自身の作品の絶対的な質で、DDB内の人々に影響を与えてきました。ヘッド・アートディレクターとして、彼はアートディレクターたちに思うようにさせています。
彼が直接スーパバイズしている以外のキャンペーン・チームからも、彼の意見はよく求められます。ボブの作品に対する尊敬のために、彼の言葉はとても大きな重みをもって聞かれます。彼は、いまだかつて不誠実な意見を口にしたことはありません。人々と仕事をする時彼は思いやりのある人です。彼は破壊しないで発展を助けます。彼はスペシャリストですが、彼の助言は大変受け入れられやすいのです。人々は彼を賞め讃えます。彼がまがいものでないことは、人々にはわかっているのです。彼には、驚くほどの暖かみと、やることのすべてを信じられるようにやれるフィーリングがあります。これはこしらえ上げることのできないすぐれた素質です」


この言葉にいいつくされているように、DDBの教育と助言(監督)は、部下の個性とフレキシビリティを生かすような見地からなされているといえましょう。