創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

03-14 経営者の雰囲気がそのまま下へ

幹部コピーライターの一人であるグリーン女史は、「DDBの雰囲気を話してください」という要請に、こう答えました。
「多分、DDBは最高の雰囲気を持っているところの一つじゃないかと思うわ。
というのは、上の人たち---経営層の人たちの雰囲気が、そのまま下へ伝わってきているのね。
一言でいえば、率直開放的ってとこかしら。

若い人たちを育てあげる雰囲気を持っていますが、どういう形でかというと、決して一つの統一したものにまとめようとしないことです。
上の人たちが、自分ならこう書くだろう、だからあなたもこうやりなさい、と下の人にいうんじゃなくって、だれでもが、自分のベストさえつくせばいいの。
だから、多様性---それぞれに変化があるということがむしろ望まれます。
DDBは、非常にユニークな場所だと思いますよ。この会社を作った人たちが非常にユニークだったからですね。
この雰囲気っていうのは、下から生まれてくるんじゃなくて、上から生まれてきて、それが下の方へ伝わってきているものなのです。
こういう会社(注・広告代理店)というのは、上の人たちがある程度の自由を与えてくれなければ、下の人は伸びようがないわけなんです。

普通は上の人たちの与えた枠の範囲内でしか伸びられないものですが、DDBでは、上の人たちは、下の人をできるだけ自由に、よい仕事ができるように伸ばしてくれます。

私は、DDB以外にも二つばかりの代理店で働いたことがありますが、やっぱり、ここがいちばんよいと思うわ」

自由な雰囲気が、下から生まれるのではなく、上から生まれて下へ伝わるためには、リーダーの考えの中に、そうしたものがなくてはなりません。

バーンバックさんはあるところで、「私たちのやり方は、支配しないこと。あまりたくさんのルールを作らないこと」だといっています。

「支配しないこと」とは、いうはやさしいことですが、一つの組織体あるいは企業を経営していく場合には、実行するのはなかなかできないことです。