創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

03-02いつも挑戦的な態度を取ること

 
 もちろん、リーダーの考え方に共鳴して集まった集団と、生活の手段としてたまたまその職場にいるという人たちの集団とでは、意識にも大きな違いが出るでしょう。
 
 現在、産業界で人事・労務管理面で『生きがいの組織論』(川喜田二郎小林茂・野田一夫共著・日本経営出版会刊)などという本が話題になっているのは、後者の集団における問題解決法としてでしょう。
 
 けれども、労働市場は若年労働者、専門職能者の深刻な不足の方向に傾いていますし、今後ますますその傾向を強めるでしょうから、企業群の中で、前者的姿勢を打ち出した企業が、より人材を集めやすくなるということもいえると思います。
 
 特に、少数精鋭主義で効率をあげて行こうとする形の企業の場合には、DDBにおけるリーダーと社員の関係は参考になるはずです。
 
 幹部コピーライターのグリーン女史は、こういいました。
 「バーンバックさんがいった言葉で、私はいつも覚えているのは、広告というのは、数字なんかで表される科学じゃないんだ。広告というのは、一つのアートである、一つのタレントなのだ、ということです。
 
 そして、いつもフレッシュであって、また挑戦的な態度を取ること、仕事をする時、いつもそういう態度で臨むこと、これが鍵である…といわれたことです。
 
 また、ものごとの判断、今自分は何をしているのか、今自分がやっていることがどの程度のところまで行けるかということの判断は、やはり直感と経験との二つから出てくるものだともいわれました。
 
 バーンバックさんが、広告というものの一面を変えてしまった、ということがいえるんじゃないかと思うの。ほかの人の持っていない面、能力を、彼はたくさん持っていて、広告というものの一面をすっかり変えてしまった、といえると思います」。
「広告は科学じゃなく、アートである」というバーンバック氏の言葉については、第1章で詳しく紹介しました。また、直感については、あとのページで考察することにしましょう。

 ここでグリーン女史は「挑戦的な態度を取ること」といっていますが、それは、常識に対する挑戦ということを意味しているのだと思います。常識とは、決まり切って習慣化した考え方のことです。新鮮な発見をしない態度です。