創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

03-09いっていることを信じさせよ


幹部コピーライターの(チャック)コルイ氏は、
バーンバック氏が私に話してくれた言葉で、最も印象に残っており、そして助けとなっているのは、『君がいっていることを人に信じさせなければならない』という言葉です。
これは、私たちがつくったものを彼らに注目させることと同様に、すごく重要なクリエイティビティの態度だと思います。人にあなたのいっていることを気づかせることと信じさせることは別物ですからね。しかも、彼らに信じさせるほうにこそ意味があります。

なぜなら、彼らにあなたのいっていることを注目させることはできても、もしあなたが彼らに語りかける言葉を持たなかったら、彼らは二度と再びあなたに注目するはずはないのですから。
一回の試みで彼らの注意を引けなかったとしても、あなたが語らんとするものが信用できるものであるなら、必ず彼らは関心をいだくようになります。
ですから、彼らの注意を引くに当たって、最も大切なことは、正直であることと、彼らにとっての重要な問題であることです」
これは、第1章で紹介したバーンバック氏が逆立ちの男の写真を使う時の注意を述べた言葉とそっくり同じであることに気づきます。彼はこういっていました。「人が逆立ちしている画を使うと、大概読者はそこに目を止めるでしょう。けれども目を止めた次の瞬間に、間髪を入れずに説得に持ち込」まなければならないと…。
人は信じなければ説得されません。信じさせるためには、「正直であること」と人々にとっての「重要な問題」を提出することだというのも、バーンバック氏の持論であるわけです。