創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

03-05 市川教授の等価変換理論


続いて市川教授の創造理論として有名な「等価変換理論」(「創造」創刊号、『等価変換展開の理論の定義』)を紹介しましょう。


これには二つの理論体制があって、それが、単独もしくは相互に補足し合って成立するとされています。


第1理論(スタティックに定義された論理)
この理論は、あらゆる創造的な作業の根底に横たわる論理である。
『あい異なった事象の間に適当な思考観点を設定して、両者に共通する構成要素(等価次元とその限定条件)を抽出し、これによって二つの事象間に等価関係(等価対価)を見つけだす』 


第2理論(ダイナミックに定義された論理)
この理論は各種の歴史的事象が、過去を受けつぎながら未来に質的飛躍をする場合の、あらゆる生産的な創造過程を代表する。
『いま、なんらかの歴史的背景を背負っている任意の事象を前提とした時、まずこれに適当な思考観点を設定して分解と捨象の手を加えて(出発系特有の条件群の廃棄)過去から未来に伝承すべき構成要素を抽象し、これに新たなる歴史的条件(到達系特有の条件群)を投入して、出発点となった事象を新たなる現実に変換再構成する』
ということですが、もっとわかりやすいように、市川教授自身の言葉で説明していただくと、
「創造的展開過程の最もドラマティックな形態というのは、先ず思考の出発系として取り上げたものを一ぺん分解し、歴史的に、将来受け継ぐべきものだけをアブストラクションして、今度は、将来新しく展開するはずの要素をこれに送り込み、最終的にそれを再構成するという形態をとっているのであります。


…細かい技術的な問題を省いて、――その核心だけを端的に申しますと――、過去を受けついで、これを未来に創造的に展開さす場合の論理構造が等価変換理論であります」(注・湯川秀樹・市川亀久弥対談『生きがいの創造』雄渾社刊)。