創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

03-08 問題の核心を使え

1968年の秋までDDBに在社して、ソニーやジャマイカ観光局の広告をつくっていた幹部コピーライターの(ロン)ローゼンフェルド氏にも聞いてみました。
「問題の核心を使え…ということですね。利口ぶった態度を取らない──問題というものを一つだけ切り離して考えない──クライアントが、これが問題だといってもってきたものでも、必ずしも本当の問題でない場合がある。だから、自ら進んで、どこに本質的な問題があるか、何を最初に解決すべきかを見つけるーーすると、クライアントが意識していた問題と違う問題があるかもわからない…という助言が印象的です」
やはり、ローゼンフェルド氏の答も、市川亀久弥教授のいう、問題提起のためのプロセスに関するものでした。
西尾「その言葉をどんなときに思い出しますか?」
ローゼンフェルド「もうあらゆる時に…です。私自身がアイデアを求めている時とか、部下を指導している時とか…あらゆる時にです」
これによってもわかるように、DDBでは徹底して創造的直観の錬磨を要求しているようです。
しかし、メドウ氏が話してくれたことですが、クリエイティブ部門の人を採用する場合の特例事項として、
「まれなことですけれども、経験者を雇う場合に、彼らがあまりにも長いことよその代理店でやってきていると、考え方その他が固定してしまっていて、DDBの方法を学ぶことができない。こちらの要求することを受け入れられない、また、考え方ややり方が堅くなってしまって弾力性がなくなっている、という場合があるんです。
そういう場合は、やはり彼らを採用することは避けなければなりません」
をあげている点は、注意を要します。多分、そういう例があったためにいったのだと思いますが、その人の場合、すでに固定概念ができ上がっていったというか、脳生理学的にいって、一定の回路ができあがってしまっていたのでしょうか。