創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

03-06タルムードの「類比による論法」

この等価変換の考え方の初歩的な形が、タルムードの思想の中に発見できるのは、興味深いところです。タルムードの思想というのは、旧約聖書の独創的な解釈学で紀元2世紀の終わりごろに生まれて伝えられたものだといわれています。

「タルムードの弁証法」と呼ばれているものの中の「類比による論法」がそれです。

シュラキの『ユダヤ思想』(渡辺義愛訳・文庫クセジュ白水社刊)によれば、
「二つの類似した状況を相互比較によって明らかにするために、二つの概念、二つの(旧約聖書の中の文例)、あるいは二つの事柄などの類比を用いるものである。ラビたちはいくつかのタイプの類比による論法を知っており、それがテキストの等価関係によるものであるか、もしくは節と節との比較及至は類似した事実から引き出された議論と議論の比較であるかに従って、区別を設けていた」
ということです。
この論法は、閉鎖社会であったゲットーの中で口伝されていましたから、ユダヤ人たちに生活的なレベルで会得されていたのではないでしょうか。

バーンバック氏が関係したVWの有名な広告に『不良品 Lemon』というのがあります(→広告はこちら)。なんでもないVWの写真にこの見出しをつけて、クロームの一カ所がはがれているのでこのVWは不合格品として処理された、と説明しているものですが、これなどは「類比による論法」的な考え方の強い広告だと思います。
もっとも、類比を創造活動の一つの形態と見なしている人は多く、ゴードンの『シネクティクス』(大鹿譲・金野正共訳・丸善刊)は、擬人的類比、直接的類比、象徴的類比、空想的類比による創造実践を提唱していますし、ケストラーも『創造活動の理論』(大久保直幹・中山末喜・松本俊共訳・丸善刊)で、「ある作家たちは、創造的行為をことごとく隠れた類似の発掘であるとみなしている」といっています。


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