1964年の大統領選挙の時、ジョンソン大統領のために『野菊と少女』という題で呼ばれて、政治広告の最高のテレビ・コマーシャルとされているフィルムをつくった、幹部コピーライターの(スタンリー)リー氏は、
「バーンバックさんが私に話してくれた助言…これは、彼がほかの人にも与えたものと同じかもしれません。すなわち、クリエイティブ部門の者みんなが同じ助言をもらっているとも思うのですが・・・それは、次のようなものです。
『イマジネーションというものを、あまり飛ばしすぎてはいけない。広告にとってイマジネーションは重要なものである。それゆえにこそ、セールス・メッセージのために、厳格に活用されて行かなければならない』」
と話してくれました。
市川亀久弥教授は、前出の『創造的直観の構造』の中で、その論理構造として、次のようなプロセスを想定しておられます。
(問題を生み出した経験もしくは対象)
歴史的背景に立って、リアルな矛盾を生み続けている現実の次元
↓
(a)矛盾に対決して、現状にあきたらない心としての現状離脱感
↓
(b)その離脱感に裏づけられた願望の理想化(idialization)
↓
(c)理想化された願望(未来像)としてのイメージ(imagination)の確立
↓
(d)確立されたイマジネーションにリアルな世界からの
ディジタル情報が突入したことによって、
上記のアナログ情報が結晶化(crystallization)する。
↓
問題の提起(目標の設定)
ところで、バーンバック氏の1961年の4Aでの講演の中の一節が、このプロセスに照応するのは、不思議というべきでしょう。
「あなたはいつもあなたの主題と一緒にいなくてはなりません。
それに浸り、没頭しなければなりません。
いつもそれを心に持っていなくてはなりません。
あなたが読者にいいたいと思っていることを、一つの目的、一つのテーマに結晶させることができなければ、あなたはクリエイティブにはなれません。
ただ、イマジネーションをやたらと走らせ、脈路のない夢を見、グラフィック・アクロバットや言葉の体操にふけるだけではクリエイティブではないからです。
繰り返していいますが、そういったとりとめのない花火のようなものを指して、クリエイティビティは効果がないときめつける人は、その言葉の意味に無責任であり、無知なのです。
クリエイティブな人はイマジネーションに引き具をつけます。
このような人は、すべての考え、すべてのアイデア、彼の書くすべての言葉、彼の描くすべての線、彼が撮るすべての写真のあらゆる光や影を、より生き生きと、より信じられるように、彼が読者に伝えようと決めたオリジナルなテーマや製品の利点を、より説得力のあるものにするために、彼はイマジネーションをコントロールします」。