創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

03-11 90%は天国のDDB

そこで、DDBでは、自由がどのように与えられているかを調べてみましょう。
ローゼンフェルド氏に、以前、プリンターズ・インク誌の記者が、こう尋ねたことがあります。「DDBで仕事をするのはどんな具合ですか?」
ローゼンフェルド氏の答はこうでした。
「90%天国ですね…私がこれまで働いたところのうちで、いちばんよい環境です」
そこでわたしは、彼と仲良くなった時期に、「残る10%は?」と聞いてみました。
ローゼンフェルド「現実、クライアントとか…まあ、いろいろあるだろう?」
プリンターズ・インク誌によると、彼は、こう話したといいます。「DDBには公式めいたものは、何もありません。拘束も、あなたの首を締めて息を止める人もいません。ライターやアーティストは、仕事に責任を持たされています。自分の好きなやり方でやれる自由とともに。それは、とても生産的な雰囲気です」
人間というものは、一種の自由放任主義の環境の時のほうが進歩も速く、自分の持てる力をより一層発揮できるし、ひいてはそれがその会社にとって価値あるものになると、ロンは信じているのです。次の言葉がそのことをよく示しています。
「クリエイティブ関係の仕事に携わっている人間は、できるだけ自由に新しいことを試みるのを許されるべきであり、同時に、今考えている以上に自発的であるべきだと思います。たとえ少々野蛮でも、それがその人のやり方ならかまわないと思います。退屈な広告をイマジナティブにしようとするより、彼らをちょっと引きもどすほうが、ずっと簡単なのです。もし必要があればの話ですがね」
また、DDB創業以来のメンバーの一人であり、現在はクリエイティブ・ディレクターの重責をになっている、ゲイジ先任副社長はこういっています。
DDBは創造的な仕事をするには、もってこいの場所です。創造性ということに対して寛容なだけでなく、それが必要とされているのです。ここにいるだれもが自分にできるかぎりの最高の仕事をしています。この代理店がやっていることといえば、みんなに自分自分を見つけ出さすことです。ここでは、悪意や陰口に出くわすことはありません。みんなはお互いに注意し合うことができるのです。もしそこで、自分自身のアイデアがアタックされようものなら、それを守るために闘います。でも、耳はちゃんと貸しますよ。
これがフレッシュな仕事の基礎になるのです。どんなにDDBが大きく成長しようと、このやり方は残されるでしょう」