創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(324)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(14)


タブーを破る---その一つがこれです。ピカピカの新製品を提示するのがクルマの広告と思われてきました。各メーカーとも、そうしてきました。
160,000kmも走行ずみの古ぼけた、「後期高齢車」といわんばかりの写真を使って、新車が売れるか---とふつうなら思います。
常識に外れているから、人びとの記憶に残るのです。
「常識にもとる」と嫌悪する人には買ってもらわなくていいのです。全アメリカ人に売るわけではなく、3パーセントが納得してくれればいいのですから。
(もっとも、キャンペーンが始まってから、まる1年は経過していますが---)。





多くのフォルクスワーゲンが16万kmも生き続けられるわけ。


フォルクスワーゲンは、1年や2年で下取りに出す車ではありません。
長持ちするようにデザインされ、組み立てられているのです。フォルクスワーゲンのピストンの往復距離は、世界の車の中で最も短いのです。ということは、損耗が少ないということです。エンジンの磨耗やストレスが低いので巡航速度とトップ・スピードが同じです。
くる年もくる年も、同じ基本モデルの車をつくりつづけることによって、フォルクスワーゲンの出来上がりは、5,000ドル級の高級車が自慢するのと同じくらいになりました。いうまでもなく、この車は、1,585ドルで売られているんですよ。
こういう話があります。フォルクスワーゲンは気密にできているのでドアをしめる前に、ウインドウを開ける習慣がつくというのです。数年使った車でもそうなるんです。
それなのに、あなたは、なぜ、大切に乗った'56年型か'57年のVWを、外観の同じ'66年型に買い替えようとなさるのですか?
おやめなさい。
そのまま使って、VWの積算距離計が99999から00000に戻る瞬間をお楽しみください。


A/D ヘルムート・クローン
C/W ダヴィッド・ライダー


"The NEWYORKER" 1960.09.10


明日に、つづく。



Why so many Volkswagen lives to be 100,000.


The Volkswagen isn't the kind of a car you trade in after a year or two.
It's designed and built for keepers.
The piston speed in a Volkswagen is slower than it is in many other cars. That means less wear. Engine friction and stress are so low that the VW's cruising speed is the some as top speed!
Continuity in making the same basic model year after year has led to Volkswagen's quality of assembly---the kind that a $5,000 car would be proud of; to say nothing of a car that sells for $1,585.
Just to give you an idea: A Volkswagen is so airtight, it's a good practice to open the window before you slam the door. Even after you've had it for several years.
So. If you own a '56 or '57 VW that you've taken good cars of, why would you want to trade it in for a '66−−which looks just like it? You wouldn't.
You'd keep it, and have the pleasure of seeing 99,999 on your VW's odometer turn to 00,000.



C/W David Raider
A/D Helmut Krone


"The NEWYORKER" 1960.09.10

It will continue tomorrow.