創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(318)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(4)

 
第4弾





なぜ、エンジンが後部にあるのでしょうか?


在来の車は、フロント・エンジンの力を長いドライブ・シャフトを経て後車輪に伝えます。
フォルクスワーゲンのリア・エンジンは、後車輪にじかに力を伝えて、重さと力を節約しています。
このデザインが、いちばん効果的で経済的なやり方だということを、窓ごしにVWのししっ鼻を見ながら運転していて、あなたは思いあたりましょう。リア・エンジンは、後車輪にうまく牽引力をもたらします。ほかの車がスキッドするぬかるみ、砂地、氷上、雪道でも走ります。
フォルクスワーゲンのエンジンの特長のうちで、リアにあるということは、とりたてていうほどのものではありません。たとえば、それが空冷式という点を考えてみますと、こいつはすごい利点です。夏に沸騰したり冬に凍結する水が不要、不凍液も不要、ラジエーターのごたごたもなし---です。
エンジンは、アルミニウムとマグネシウムの合金の精巧な鋳造で、すごく軽くて力があり、重さは198ポンドですが、車体を走らすにはこれで十分です。
摩擦が最小限にとどまるように設計されており、次のオイル交換時まで補給しないですむはずです。というわけで、トップ・スピード時と巡航速度時の摩擦状況が同じなのです。
あなたのVWは、時速100kmで1日中、苦もなく走りつづけます。リッターあたり正味10.6kmです(普通のガソリン---普通の運転で)。


chuukyuu注】米国VW社が広告代理店としてDDB社を指名したのは1959年5月です。キャンペーンの開始は、その年の8月3日の『ライフ』誌に掲載されたのが第1陣、これが第2陣(ライフ誌 1959年8月10日号)---ということは当時、リア・エンジンが米国人になじみがきわめて薄かったということです。


C/W Bill Bernbach Julian Koenig
A/D Helmut Krone

"The NEWYORKER" 1959.11.07


アメリカ・フォルクスワーゲン
取締役副社長兼総支配人
カール.H.ハーン


フォルクスワーゲンを成功へ導いた鍵は単純なことです---消費者が基本的に必要とするものを満足させることを目的とした正直な製品は、かならず売れる、ということにすぎません。

この普遍的な真理、これは、消費者の財布めあての激烈な戦闘では、よく見すごされてしまいがちですが、これが、私たちのヒミツなのです。

しかも、もちろん、この考えは独創的でもなければ、ヒミツでもなんでもありません。
フォルクスワーゲンは、よく設計された、信頼すべき車です。

依然として、他の自動車メーカーからは進歩していると思われていまだに模倣されているほどの、設計上の特徴を持っています。

でも、その外観は実に飾りっ気がなく、単純なので、私たちの広告には、飾り気なく率直である以外のことは、似つかわしくないのです。

私たちの製品について、やさしくわかりやすい言葉で、この車がこのとおりよい車で、信頼すべき車であるのは何かを説明することによって、お客さまに訴えるしかないのです。

1961年には、20万人ものアメリカの方々が私たちの車を買って下さいました。

これは、私たちの製品の偉大さと、私たちの組織の力に足る十分な証拠でありましょう」

An advertisement made the fourth.



Why the engine in the back?


In conventional cars, a front engin turns the rear wheels through a long drive shaft. But Volkswagen's rear engine gives direct" power to the wheels, saving weight and power. It is the most defficient and economical design. It means greater visibility when driving -- you see over VW's snub nose. And the rear engine gives your rear wheels better traction. In'mud, sand, ice, snow, where other cars skid, you go.
Its location, however, is the least unusual feature of the Volkswagen engine. For one thing, it is air-cooled, on astonishing advantage when you think about it. No water to boil over in summer, or to freeze in winter. No anti-freeze needed. No radiator problems.
The engine is ingeniously cost of aluminum and magnesium alloys and is very light and powerful; undoubtedly the toughest 198 lbs. going.
It is beautifully machined for minimum friction; you will probably never need oil between changes. And so efficient that top and cruising speeds are the same.
Your VW runs at 70 mph all day without strain. You get an honest 32 miles to the gallon (regular gas---regular driving).


C/W Bill Bernbach Julian Koenig
A/D Helmut Krone

"The NEWYORKER" 1959.11.07