創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(341)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(31)


社交は他人との重要な交わり術である。その潤滑油はジョークである。
ジョークとユーモアの境界はうすぼんやりと煙っている。
ビートルのコピーに「クリッチック(捨てゼリフ)」を入れたのは「自分だ」と2代目コピーライターのボブ・レブンソン氏が告白していたが、『ユダヤ・ジョーク集』って本が幾冊も刊行されているほど、この民はジョークで歴史的に受けてきた心理的圧迫を薄めてきた。
ところで、これのC/Wは、レブンソン氏でなくD・ラーセン氏、読み手にとっては最高のジョークであろう。



フォルクスワーゲンについてのジョークを最近、お聞きになりましたか?


ボンネットを開け、エンジンを盗まれている!---と早合点なさったご婦人を覚えていらっしゃいますか?
ガソリンや冷却水をどこに注入していいのか分からなかったガソリン・スタンドマンの話もありましたっけ。
今日では、ガソリン・スタンドの従業員は、ガソリン注入口が前にあることぐらいは、だれでも知っています。冷却水を調べようとしたり、不凍液を入れようとして、あなたを困らせはしなくなりました。
(つまり、VWのエンジンは後部にあり、水ではなくて空気で冷やすということが、分かりすぎるぐらい、たくさんのVWを見たわけですね)。
要するに、世間の人が私たちの車をおかしく思うよりも、今では、みんながこの車で楽しんでいるのです。
このことは、私たちのジョークのファイルがあんまり厚くならなくなったことを物語っています。そこで、もしあなたがVWについての気の利いた一口噺や諺やジョークをお聞きになったら、私たちに送ってください。
米国フォルクスワーゲン社のジョン・スタンレイ宛てに一筆お送りください。彼が、それらを公開してくれるハズです。
とはいっても、VWについてのうまいジョークは、だれよりも私たちがいちばん楽しむことになるわけですがね。


C/W D.ラーセン D.Larsen



"The NEWYORKER" 1963.01.19




Heard any Volkswagen jokes lately?


Remember the one about the lady who looked under her front hood and thought somebody stole her engine?
Or the one about the guy at the gas station who didn’t know where gas went? Or the water.
Today, the gas station attendants know enough to put the gas in front.And they don’t bother checking tour water or trying to sell you some anti-freeze.
(After all, \they've seen enough VWs to know that our engine’s in the rear: and that it’s cooled by air, not water.)
The point is this: People used to make fun of our car, now they have fun with it.
Which helps explain why our joke file’s been getting a bit low. So, if you’ve heard any good VW quips or sayings or jokes, why not send them on?
Just write to John Stanley, Volkswagen of America, Englewood Cliffs, N.J. He’ll start them on their round.
After all, nobody enjoys a good VW joke better than we do.


"The NEWYORKER" 1963.01.19