創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

[息抜きタイム](249)ベター・ヴィジョン協会のシリーズ(9)

The advertisements for Better Vision Institute by DDB(9)

→昨日の中島祥文さんのコメントもお見逃しなく。


レオン・メドウ氏とのインタヴュー部分
1967年ごろ) 


chuukyuu「これまでにお創りになったものの中で、とりわけのお気に入りは?」
メドウ氏「そうですね、気に入っているのものの一つは、ベター・ヴィジョン協会、もう一つは、フランス政府観光局のものです」
chuukyuu「それをお創りになった時のエピソードや、お好きだとおっしゃるわけをお話しください」
メドウ氏「ベター・ヴィジョン協会では、とくに、少女の異常な目を写した、あの写真クリックです。
気に入っているわけは、賞をとったからではなくて、世間のたくさんの親たちが、私に手紙を書いてくれたのです。書いてあるのは、あの広告のおかげで自分たちの子どもにもあのように目に障害があるということに気づいて、医者へ行って手術をした結果、現在では子どもの視力が正常になったという、感謝の言葉でした。
私にとって、これ以上の高価な報酬、喜びはなかったですね」



あなたはこれまで、あなたの五感のうちで、どれがいちばん、失われては困るものかお考えになったことがありますか?
いま、すぐにお考えになってみてください。
そうです、ほとんどの人があなたに賛成だと思いますよ。
そうだとしたら、1年に1回がそこらは検診を受けたほうが賢明ではないでしょうか?




 Have you ever thought
of which one of your senses
 would be worst to lose?

 Think about it right now.

Yes, most people would agree
 with you. Then wouldn't
is be a wise idea to have then
 examined every year
    or so?


       ★     ★     ★


あとさきになりましたが、拙著/編繁栄を確約する広告代理店DDB』(ブレーン別冊 1966年10月1日刊に載せた、このシリーズの解説を。シローイッツ氏の手紙も、メドウ氏のそれも保管していないので、英文は省略します。


ベター・ヴィジョン協会のシリーズ広告の解説


この協会は,米国の眼科業界の全国的な啓蒙団体です。視力検査員、めがね商, レン
ズ会社などがその会員です。
広告の目的は、必然的に「正しい目の検査を定期的に行なうことで、視力の保護と矯正がどんなに大切なことであるかを大衆に知らせ、啓蒙する」ことにあるといえます。
この広告の目的について,担当アートディレクター
レン・シローイッツ氏はつぎのように述べてくれました。
「私たちは、べター・ヴィジョン協会の目的を、その単体名が示す以上に明確に、簡明に語ることはできません。
けれども、ベター・ヴィジョンを推進するには、たいへん多くのアプローチが考えられました。クライアントと私たちクリエイティブ・グルーブとのはじめての討論のあとで、私たちはすぐに一つの基本的な原則に意見が一致しました。この広告は、パブリック・サービスの役柄をもつべきである---と。


これにはいくつかの理由があります。
第一に、協会は眼鏡を売るための特別弁護士となってほならないのです。
そうすることは道義的によくないだけでなく、私たちの考えでは、商売としてもまずいと思ったのです。というのは、そんなことをすると、たちまちに協会の権威を傷つけ、ひとたびそうなったら、眼科産業は普通の営利連合体にすぎないものとされてしまい、公衆に近づく価値のない組織になってしまうのです。


こう決まると、もう迷うことはなにもありませんでした。私たちは腰を落ちつけて、質格のある検眼士による定期的で適切な検眼の重要性をとおして、ベター・ヴィジョンを売るという問題にとりかかりました。
私たちは、この点から必然的に、そして適切に、眼鏡の売上げが増加するだろうと考えました。
そして、それは正しかったのです。
このキャンペーンの最初から、私たちはこの基本的な主張だけにしぼりました。多くのアプローチは、霊感的で教育的で機能的でユーモラスで悲劇的でした。
正しく行なわれれば、これらの方向はそれぞれ独自の妥当性をもっていると私は思います。どれも、まったく同じ効率ですべての人の心に達することはできない話だからです。
ビジュアルな点からみると、広告のパブリック・サービス的な性格から、ロゴを適切な位置におくという結論になりました。メッセ-ジに十分な実質と権威を与えることがで
き、しかも小さくなくてはなりません。押しつけがましさがなく、あるときにはノンコマ-シャルであることも。
幸いなことに、私たちはよいクライアントをもっています。彼らはこのアプローチを認めてくれ、それを信頼できる広告に仕上げる私たちを励ましてくれています」


またこのキャンぺーンのコピーを担当しているメドウ氏はこんな手紙をくれました。
「注意をひくこと、それを持続さすこと、信じられることの基本的な3要素は、私が最も誇りとするところのキャンペーン、ベター・ヴィジョン協会の広告にも適用することができます。
米国では上記の3要素に密着していたということにおいて、このキャンペーンの全体としての精読率がケクはずれに高かったといえます。調査によれば、この広告が載ったリーダーズ・ダイジェストとライフの各号で、1 ドル当りの精読率は平均のそれの4倍でした。眼鏡の売上げも伸びました」
「米国民は、眼鏡をかけたいとは思っていませんが、私たちは、目を定期的に調べるべきであるとの考えに同調させることに成功したのです(そしてこれがこの広告の唯一の眼目でもあります)」
「それにはDDBでやられているのと同じ説得が必要だったのです」


アカウント・エグゼクティブであるドッセバック(Fred Dossenbach)氏からの手紙によりますと、この広告のほかに、「パブリシティおよびパブリック・リレーション活動によって、協会は、 PTAや各地区団体、ウーマンズ・クラブ、メンズ・クラブなどにも積極的に働きかけている」ということです。