創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

[息抜きタイム](243)ベター・ヴィジョン協会のシリーズ(3)

The advertisements for Bettter Vision Institute by DDB (3)


DDB NEWS』1968年5月号
質問者は、社内報『DDBニュース』の編集者。


「あなたがこれまで手がけたお仕事の中で、きわ立ったキャンペーンであるモービルとかベター・ヴィジョン協会などは商品広告以上のものをセールスしていますね。ベター・ヴィジョンは視力検査をすすめているし、モービルは安全な運転というコンセプトをセールスしているし…」


シローイッツ「コピー担当のレオン・メドウと私は、ベター・ヴィジョン協会のすべての広告に携わっています。

私たちは協会へ出かけ、そこの人たちと話し合いました。
彼らがかかえているすべての問題について検討しました。
何がベター・ヴィジョン協会をつくりあげているかを知るためのすべてについて学びました。驚いたことは、そして皆さんも驚かれると思いますが、私たちがベター・ヴィジョン協会と呼んでいるものは利潤追求のための組織だったのです。

協会は、光学レンズ・メーカー(主としてボシュロム社とアメリカン光学社)、眼鏡フレームの製造業者、その販売業者と検眼士で成り立っています。

彼らは、米国における眼鏡の販売を増進するために、協会にお金をプールしているのです。
これは、共同広告の典型的な例です。
その運営費はたいして多くはありません。年間100万ドル以下でしょう。

DDBでは、年間60万ドルの扱い高からはじめ、現在でも80万ドル程度です。米国では小さいほうのアカウントです。

私たちは、眼鏡、フレーム、検眼などを直接売り込んではならないという結論に達しました。それが本当に公衆のためになるような、「パブリック・サーヴィス・キャンペーン」を行うことが、お金をもっとも有効に使うことであり、そしてまた、協会の利益にもつながるとの考えました。

つまり、読者のためになるようなことをやったのです。そういうものを私たちが読者にしてあげたので、読者も反応を示してくれたのです。

実際すぐれたキャンペーンというものは、商品を売るという射程の短い目的のほかに、広告主のために射程の長い企業的な効果を持ったキャンペーンでもあるべきです。読者が興味を持つようなものを提供すれば、そのお返しに広告主に興味を持ってくれるものです。あなたが人びとに関心を寄せていることを示せば、人びともあなたに関心を寄せてくれるものです」

それゆえ、あらゆる要望にもかかわらず、この基本線から外れたことはありません。そもそもの最初から、人びとに検眼してみようと思わせる最良の方法は、彼らに目についての関心を持たせること…目の重要さについて認識させることであると、私たちは考えました。

時には不安からのこともあるでしょうが、基本的には、人が持つもっとも貴重な感覚の一つに対して興味を持たすこと、そこから私たちの広告がはじまりました。

私が大変に誇りにしていることは、このキャンペーンの開始以来、米国での眼鏡の販売高が33%増加したことです。


レンズのほうを大切になさる方があります。
このレンズよりも。


目は、ある意味では、カメラに似ています。
どちらにもレンズがあります。眸では虹彩が絞りです。網膜はフイルムです。どちらも映像をさかさに映します。目には内側の反射を吸い込み、感光してしまった写真にならないようにするための暗い内層まであります!
似たところはすごくあります。が、重要なのは相違点です。
カメラは、最新型のものも含めて手の操作が まだかなり必要です。
けれども私たちの目は,何もかも自動的にやります。焦点を合わせます。絞りを絞ったり開いたりします。写真を写します。脳で現像焼付の処理を行ないます。瞬間的に。
もう一つの重要な相違点。カメラで何かぐあいが悪いことが起きたときには、それがすぐわかります。シャッターは締まらない、フイルムが巻ききあすがらない、フラッシュが発光しない---。
私たちの目はそうじゃないのです。私たちの目は自動的に欠陥を補整しはじめます。それで、よく私たちは、必要なだけ見えるでないか---とだまされてしまうのです。
その上、あんまり私たちは目のことをかまわなさすぎます。私たちは、よいカメラに対してだったらとても考えられないような酷使を目に強います。
私たちはなんてバカなんでしょう--- 専門の目の検査員が毎年1回ずつ、ほんとうはどれくらいよく見えているべきなのかを教えてくれるというのに。あるいはもっとよく見えるはずだということを教えてくれるというのにです。ベター・ヴィジョン協会

C/W Leon Meadow
Photo Paul Elfenbein 


ほんの一例にすぎません。慎重に運転してください。交通法規にしたがってください。そして、年に1回そこらは専門の検眼士による検眼を受けましょう。ベター・ヴィジョン協会

C/W Leon Meadow