創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

[息抜きタイム](242)ベター・ヴィジョン協会のシリーズ(2)

The advertisements for Bettter Vision Institute by DDB (2)


My Graphic Concept

1967年春 チューリッヒ

レオナルド・シローイッツ


ベター・ヴィジョン協会



4年前でしょうか、もうすこし前(1963)だったかな、ここがDDBの新しいクライアントになりました。私は、本能的に、ここがすばらしい可能性をもつアカウント(取引き口座---つまりクライアント)であると感じました。

この協会は、他の広告代理店のもとで6年間、それ以前にも10年間ほど広告を出していました。その間、このアカウントに関する目に立つような広告は何一つ行なわれていませんでした。

私は、このアカウントがDDBへ来たことを知るとすぐに、このアカウントのために働くことを申と出ました。私はボブ・ゲイジ(クリエイティブ部門の総責任者)のもとに行って言いました。

「ボブ、私がその仕事をしたいと思っている、新しい、そしてすばらしいアカウントが来たようだね。ベター・ヴィジョン協会という名前だ」

「どんな会社だい。聞いたこともないね」とボブ(これが15年間も広告にお金を費やした後でのできごとなのです)。

「とにかく、私をそこで担当にしてくださいよ」といい、了解を得ました。

私がアートディレクターとして、レオン・メドウがコピーライターとしてチームを組みました。レオンと私はそれ以来、ベター・ヴィジョンのすべての広告の制作に携わっています。

私たちは協会 へ出かけ、そこの人たちと話し合いました。彼らのかかえている問題点のすべてについて検討しました。

何がベター・ヴィジョン協会を作り上げているかを知るためのすべてについて学びました。
驚いたことには、そして皆さんも驚かれることと思いますが、私たちがベター・ヴィジョン・インスティテュート(協会)と呼んでいるものは、利潤追求のための組織だったのです。
協会は、光学レンズ・メーカー (主としてボッシュ&ロム社とアメリカン光学社)、めがねの枠の製造業者やその販売業者と検眼士によって成り立っています。

彼らは米国におけるめがねの販売を増進するために、協会にお金をプールしているのです。これは寄り合い所帯広告の好例です。運営費はたいして多くはありません。年間 100万ドル以下でしょう。

DDBでは60万ドルの扱い高から始まって、現在でも80万ドル程度のものです。米国では、小さいほうのアカウントです。

私たちは、めがねフレーム、検眼等を直接売り込んでならないという結論に達しました。それが本当に大衆のためになるような「パブリック・サービス・キャンペーン」を行なうことが、お金を最も有効に使うことであり、そしてまた、協会の利益にもつながると考えました。

それゆえあらゆる要望にもかかわず、この基本線からはずれたことはありません。そもそもの最初から、人びとに目を検眼してみようと思わせる最良の方法は彼らに目についての関心を持たせること---目の重要性について認識させることであると私たちは考えました。

時には不安からのこともあるでしょうが、基本的には人びとが持つもっとも重重な感覚の一つに対して、興味を持たせることから初めることにしました。

こうして私たちの広告が始まりました。

私が大変誇りにしていることは、このキャンペーンの開始以来、米国でのめがねの販売高が33パーセント増加したことです。



彼の手が、もう5cm長かったら、眼鏡はいらないでしょう。


私たちは、私たち自身を、じつにみごとにだます人間です。
こと、目に関しては、特に。
たぶんこれは、私たちの目が年ごとにとてもゆっくり変わるので、その変化に気づずにいてしまうからなのでしょう。
そして年月は過ぎていく。やがて私たちの目は、驚くべきことには、起きてきた欠陥を補整しょうとつとめるのです。そして私たちに、いつも変わらずよく見ていられるのだと思い込ませてしまうかもしれません。
これはたいへんによくないことです。その間、私たちはもっとずっとよく見ることができたかもしれないのです。
過ぎ去った光景を、もっとシャープに、もっと強烈な喜びをもって味わうことができたかもしれないのです。
どうすればって? 専門的な目の検査を年に一度受けるだけでいいのです。
あなたはどれくらい見ることができているのかを見つけるだけでいいのです。また、それが指摘されたなら、適切な処置でどれくらいよく見られるようになるかを知ることです。
今日では、その処置はちょっと変わっています。
あなたは各種の焦点のレンズを持つことができるのです。 (眼鏡一組に2, 3種の異なる焦点をお持ちになれるのです。仕事、勉強、遊びとそれぞれ特定の用途に合わせて注文製作されます)
レンズは反射を少なくするために表面処理がほどこしてあります。衝撃にも抵抗力のあるレンズです。度の付いたサングラスもあります。
次にフレーム。眼鏡がよく透き通って見えるばかりでなく、見た目にもよく映る、スタイル感覚と色の好みのよいフレームです。必要としているのに、このような処置でご自分をお助けにならないなんて馬鹿げたことです。ベター・ヴィジョン協会

A/D Len Sirowitz
C/W Leon Meadow
Photo Hawaed Zeiff



変わったのは針の穴ではありません。


針が、意地悪くも糸を通されることを拒む日がくるのです。
電話帳が頑強に、読まれることを拒絶する日がくるのです。
ですから、私たちは不承不承ながらも、こういう避けられない事態に身を委ねなければならないということを理解しましょう---そして目の検査員に会う日を決めましょう。
これは賢明でもあり、愚かでもあります。
賢明というのは、検査員がその日から、私たちに、針に糸を通せるようにしたり、電話帳を読めるようにしてくれるからです。
愚かというのは、その日をもっとずっと前につくるべきだったからです。
その事態が始まった、ずっと昔のあのころに。
私たちは、そのことに気がつかなかっただけです。
これが厄介な点です。あなたの目は、日一日と、非常にゆっくり変化していくので、ふつうはなんら異変を見つけることができないのです。
あなたはかつてあなたが見たと同じように、よく見てはいないのだということをお認めにはならないでしょう。
けれども、検査員にはそれが分かります。
彼はその変化を発見し、測定することができます。そして、もし必要なら、あなたの世界をよりシャープに、より明るくするための視覚上の手当を処方することもできます。あなたがもっとよく仕事ができるように、もっとよく勉強できるように、もっとよく遊べるように。
しかも彼は、あなたが上の事態にたち至ってしまう前にそうすることができるのです。
ですから、いまこそ、あなたがどれくらいよく見ていらっしゃるのか、 また、どれぐらいよりよく見られるかを知るときなのです。ベター・ヴィジョン協会


A/D Len Sirowitz
C/W Leon Meadow
Photo Phil Marco

明日に、つづく。