創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(156)『コピーライターの歴史』(番外−5-5)

オグルビー・べンンソ&メイサー(OB&M)社では、かつて、オグルビー社長(当時)の手になる、 「調査から導き出されたコピーライター、AD、TVプロデューサーのための97の心得」 を全社員に配っていました。同社の創造哲学の理解の助けとするため、教ヵ条を抜粋してみましょう。
テキストは、東京コピーライターズ・クラブ(TCC)訳・編『5人の広告作家』(誠文堂新光社 1966)表紙裏の3人のうち、中央がオグルビー氏。 


>>『コピーライターの歴史』目次




『調査から導き出されたコピーライター、AD、TVプロデューサーのための97の心得』


(1) 自分の妻君や子どもに見せたくないような広告は絶対に作ってはいけない。諸君は家族を故意にだまそうとも思わないだろうし、自分をだましてもいけない。自分にしてほしいことを書くべきだ。


(2) 普通の米国の家庭は1日に1,518の広告にさらされている。消費者の注意をひく競争は年々ひどくなってきている。大衆に諸君の声をきかせたいなら、諸君の声をユニークにするべきだ


(3) 広告はセールスマン・シップ(販売技術)である。エンターテインメント(慰み)ではない。ファイン・アート(純粋芸術)でもない。思いあがってはいけない。賞を欲しがってもいけない。販売は真剣な仕事なのだ。


(4) バントじゃだめだ。いつも場外ホームランをかっとはせ。全力をつくせ。


(5) つねに主導権を纏っていよ。クライアントから、ああしろ、こうしろといわれるまで待っていてはいけない。不屈の神業で彼らを驚かせ。


(6) ひとたびキャンペーンの実施に踏み切ったら、堂々と迷わずやれ。妥協してはいけない。紛糾させてはいけない。単純にまっすぐ進め。徹底的にやれ


(7) ほかの広告キャンペーンを手あたり次第に攻撃して巣を落してはいけない。ボートを暗礁に乗り上げさせてはいけない。金の卵を産むトリをしめてはいけない。


(8) 個々の広告はすべて、銘柄のイメージへの長期投資である。イメージを冒涜するようなことは、寸豪たりともしてはならない。


(9) 新しいキャンペーンを開始する前には、製品を研究し、以前の広告を調べ、競争製品の広告や調査を研究せよ。 (しかも十分に)


(10) いかにいうかよりも、何をいうかのほうがはるかに重要である。テクニックよりも内容のほうがはるかに大切である。


(11) 諸君のキャンペーンが大きなアイデアに支えられていない限り、二流品しかでない。


(12) 銘柄名がひと目でわかるようにすべきだ。大部分の広告は、銘柄の区別がはっきりしていない。


(13) 広告原稿はすべて、製品のコピー・プラットフォームを具体的に表現し、高らかに、はっきりと、製品の約束(プロミス)を伝えるものでなければならない。そして、なにが最大の約束であるかを見つけだすことが、広告の仕事の中でいちばん重大なことなのだ。


(14) 銘柄の名は、ひとめでわからせるものでなければいけない。多くの広告は、この銘柄識別の点で不十分だ。


(15) 広告は魅力的であらねばならない。態度の悪いセールスマンから人は買わないものだ。


(16) 消費者は愚かではない。彼女は諸君の細君と同じである。彼女の教養をバカにしてはいけない。


(17) 広告に編集記事的な厳密さと今日性を与えよ。消費者というものは、諸君よりも若々しくありたいと思っている。


(18) 広告で買わすことができると思いあがってはいけない。広告は買おうという気を起こさせるだけだ。


(19) すべての広告は、読者が払ってくれた時間と注目にたいして、なんらかの報酬、ニュースとか、利益とか、サービスを提供すべきだ。


(20) 委員会なんていうものは、広告を批評することはできても、広告を創りだすことはできはしない。


(21) 諸君が運よく偉大な広告を創造したときは、それをくりかえせ。どんな偉大な広告も、くりかえしすぎるということは未だかつてなかったのだ。どんな偉大なキャンペーンも、長くつづきすぎるということはなかった。


ヘッドライン
(22) 平均して、人はボディ・コピーよりもヘッドラインのほうを5倍もよく読む。もし、ヘッドラインでいいたいことをいわなければ、クライアントのお金の80%をむだ遣いすることになる。


(23) ヘッドラインは読者に利益を約束することによって、その利己主義(セルフ・インタレスト)にアピールすべきだ。この利益とは、製品がもっている基本的な約束であるべきだ((13)を再読せよ)。


(24) ヘッドラインには最大のニュースを注入せよ。


(25) ヘッドラインには、すべて銘柄名を入れよ。


(26) 読者にサブ・ヘッドとボディ・コピーを読ませるような力をもったヘッドラインを書け。


(27) ヘッドラインの長さを気にするな。12語のヘッドラインは、3語のヘッドラインよりもたいてい高い注目率をもつ。6語から12語のヘッドラインが、もっともクーポンの返りが大きい。販売を考えた長いヘッドラインのほうが、はっきりしない舌足らずの短いヘッドラインよりもずっといい。


(28) ヘッドラインの途中でタイプ・フェイスを変えてはいけない。精読率が悪くなる。


(29) 全体を理解するために、ポディ・コピーを読むことを読者に強要するようなヘッドラインは、けっして書くな。


(30) トリッキーなヘッドラインは書くな。


(31) 製品の見込み客にぴったりのことばを使え---お母さんとか静脈瘤治療剤とか---。


(32) 情緒的なインパクトをふくんでいると思われることばを使え。キス、ダーリン、侮辱、幸福な、愛、怒り、お金、心配、結婚、戦い、家族、赤ちゃん---。




明日は、ボディ・コピー、イラストレーション、レイアウトについての34ヶ条


【chuukyuuからのお願い】 TTC編『5人の広告作家』に収録されているダヴィッド・オグルビー氏のインタヴューをパソコンに打ち込んでくださるクリエイターを求めています。ぼくの「活字拒否症」がなおらないのです。訳文は清水啓一郎大先輩。分量は、なれた方なら、3時間分ほど。もちろん、入力者のお名前は掲示。入力者が出ない場合は、このインタヴューはお蔵に。あ、手弁当です。このブログのコメント欄に手をあげてくだされば、あとは、個々に連絡法を連絡しあいましよう。あ、このブログは無料で情報を公開しています。労賃はありません。


>>ダヴィッド・オグルビー氏のインタヴュー 目次