創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(466)レオ・バーネットについて(1)


45年前。東京コピーライターズクラブ訳/編『5人の広告作家』(誠文堂新光社)が上梓されました。
週刊広告業界誌『Ad Age』の、ニューヨーク広告ライターズ協会が『栄誉の伝道入り』させた5人のコピーライター出身の広告代理店経営者のインタビュー記事を邦訳したものでした。5人は、目次順に、ウィリアム・バーンバック、レオ・バーネット、ジョージ・グリビン、デビッド・オグルビー、ロッサー・リーブスの各氏。
邦訳は若手の俊英たちの手になり、それぞれのインタヴューのあとに、シニアの有志各自が尊敬している5傑の解説文を付しました。


バーネット------志垣芳生さん
グリビン--------近藤 朔さん
オグルビー------ぼく
リーブス--------上野壮夫さん
バーンバック-----ぼく


志垣くんの快諾を得たので、「バーネット論 広告は信仰である」を採録しました。


写真は、同書カヴァーの表と裏です。バーネット氏のほか、それぞれの氏名を指摘なさってみてくだとさい。知的遊戯です。


   ★   ★   ★


広告は信仰である      志垣芳生


アメリカの広告といえば、マジソンーアペニュー、こう信じている方が多い。

しかし、アメリカの広告を深く理解しようと思うとき、シカゴのレオ・バーネットという偉大なコピーライターを無視するわけにはいかない。


広告は素直でなくてはならない。


親切でなくてはならない。


これが彼の広告哲学である。


彼がシカゴにいるのは、彼がミシガン生まれであること、彼の考え方に共鳴するクライアントがシカゴにあることなどがその理由かもしれない。
が、ともかく彼はシカゴが好きである。


彼のことばをかりれば、シカゴにはニューヨークのような神話がなく、リアルな大都会である。


西部と東部の中間にあって、アメリカ中から人が集まってくる。だから広い視野からアメリカ全土を見ることができる。


このようなことから、より多くのアメリカ人の心に訴える広告をつくるには、シカゴはもっとも適している。


シカゴこそアメリ力的であると。




そのシカゴで、彼は30年かかってレオバ・ネット社という魅力的な広告代理店をつくりあげた。


彼は自分の会社のことを、クリエイティブ・エージェシーといわれたり、ビッグ・エージェンシーといわれることを嫌う。

小さなクリエイティビティの宝石箱を、たくさんもっていることを誇りにしている。


そこには、コピーライターもなく、アートディレクターなく、マーケティングマンもなく、一つの新しい広告をつくる要員がいるのである。

だから、だれが広告のアイデアを考えよとこだわらない。

作られた広告が、すばらしい場合も、つまらない場合も、すべて共同責任なのである。


レオは、この信念を1,175名のレオ社の人たちに、身をもって教えてきた。

彼のブレーンたちは、彼の広告にたいする情熱を『ザ・コミュニケーション・オブ・アドバタイジンダマン』という本に集めた。
その一部を要約してみると、


コピーライターについて

   
コピーライターは、自分が考えていたようなビジョンが出なかったとき、アートの部門にたいしてどうしたらよいか。

コピーライターがまずやらなければならないのは、「私のコンセプトは正しくてはっきりしているか。そして、その自信があったかどうか」自分自身に質問することだ。


広告堺で優秀与ライターを10年も15年もかけて教育し、40歳ごろになると別の仕事をさせようとする。
その結果、今日コピーを書いている人の大部分は40歳以下である。
これは、マネージメントの失敗であり、よくないことだと思う。


多くのアートディレクターは、アイデアを発展させることに参加しているという意識がないために、きわめて明白なことが、わからないことがある。

アートディレクターに、そうした参加の意識をもたせるのは、コピーライターの責任である。



アートーディレクターについて


ほんとうにすぐれたアートディレクターであるかないかは、彼が大きなアイデアを(たいていの場合、そのアイデアは簡単なものだが)、あたかもアートディレクターが関係していないかのように見せられるかどうかである。


クリエイティブチームについて


概していえば、効果的なクリエイティブの仕事をダメにするのは、つまらないプライドや、見通しに欠けていること、勇気のなさ、つまらない嫉妬、自分で自分を哀れむことなどであると思う。

いいかえれば、仕事そのものよりも、自分に夢中になっていることだ。


もし私が、あるキャンペーンのために、20通りものヘッドラインと、たくさんのコピーを書き、それがみんな没になったとしても、私は自分で悲しいなどとは思わない。

挑戦されたと思うだろう。反抗したり、がっかりするよりも、そこからなにかを学ぶように、卒直な努力をすべきである。


知的遊戯の正解 左から、バーンバック、グリビン、バーネット、オグルビー(前)、リーブスの各氏。


明日に、つづく

5人の広告作家』より

バーンバック氏 広告の創り方を語る
>>「広告の書き方を語る」(123456了)

5人の広告作家』より

ダヴィッド・オグルビー氏とのインタビュー

>>ダヴィッド・オグルビー(David Ogilvy)氏とのインタヴュー
>>『調査から導き出されたコピーライター、アートディレクター、TVプロデューサーのための97の心得』