[6分間の道草](842)『アメリカのユダヤ人』(総目次)
↑今の★数累計です。
「通して読みたい」とのお声を2,3、耳にしたので、きのう、1日かけて総索引をつくってみました。
あとの掲示法はこれからかんがえます、とりあえず。
by James Yaffe "The American Jews" (1968)
西尾 忠久訳『アメリカのユダヤ人 』(日本経済新聞社 初刷 1972.04.25 このあと10年間、毎年増刷)
●建 設
特殊分子 (1. 2,) ←番号をクリック
肉体と精神 (1.2.)←番号をクリック)
古来の敵 (1. 2.)←番号をクリック
戦いの傷あと (1. 2.)←番号をクリック
●祈 り
宗教的組織 (1. 2.)←番号をクリック
食物に関する戒律(1. 2.)←番号をクリック
われらに子供を (1. 2.)←番号をクリック
われら父、ラビ (1. 2.)←番号をクリック
会堂機構 (1. 2.) ←番号をクリック
●参 加
忠誠のしるし (1. 2.)←番号をクリック
ユダヤ人自身の国(1. 2.)←番号をクリック
地方人と世界人 (1. 2.)←番号をクリック
権力争い (1. 2.)←番号をクリック
●生 活
最高の商品 (1. 2,)
平信徒の宗教 (1. 2. 3.4.5.)←番号をクリック
ユダヤ人はすぐれていなければならない (1. 2.)←番号をクリック
ほかに誰を当てにできる? (1. 2. 3. 4.) ←番号をクリック
●死滅するか?
ユダヤ教存続の高価な犠牲(1. 2. 3. 4.)←番号をクリック
もともと広告コピーライターである私が、なぜ本書の訳出に取り組んだかを説明するのは、ちょっとむずかしい。はしょっていうとそれには二つの筋道がある。
一つは、10年前に私は『フォルクスワーゲンの広告キャンペーン』(1966.06.15)をまとめたが、そこに展開されているユーモラスな広告コピーのレトリックに魅かれた。それがコピーライターの個人的資質に属するものなのか、あるいはユダヤ人である彼ら(ライターは複数である)の伝統によるものか思案した。
5、6回渡米して彼らをインタビューした結果、後者であることがわかった。彼らは子供の時からユダヤ的ユーモアに包まれて育ったのである。しかもそのユーモアはタルムドに由来する。
私はいつかユダヤ系アメリカ人を調べてみようと心に決めた。
もう一つは、数回の渡米で100人近いユダヤ系の広告人と親しくなったことである。広告界もユダヤ系に開かれている大きな職場である。その一人であるドイツ系改革派のパーカー夫人は、私をユダヤ料理店に連れて行ってくれたり、「エンジョイ。エンジョイ」というユダヤ人の生き方を説明してくれたり、黒い帽子と黒いガウンを着て46丁目に立っている男たちを真正正統派のユダヤ教徒だと教えてくれたりもした。
また、ロングアイランドに住むトウビン夫妻は私を自宅に招いて清浄家庭料理の夕食会を開いてくれた。ローゼンフェルド氏は私のことを「ユダヤ人のことがわかる唯一の日本人コピーライター」と冗談をいった。
こんな経験もした。ギルバート夫妻とカーニット夫妻(いずれも広告代理店の社長)を別々にわが家に招いて寿司パーティを開いたとき、ギルバート夫妻は喜んで食べてくれたが、カーニット夫妻は貝やえびを食べなかった。私は二組の夫婦の行動の差を知りたいと思った。
こうした二様の興味から、私は本書を読むことになった。若干の解答が本書の中にあればと思ったのである。期待はほぼ達することができた。
ただ、宗教史もヘブライ語も知らない私には、困難な仕事になった。日本にいる唯一人のユダヤ教ラビ、M・トケイヤー師の教えが得られなかったら本書の訳出は不可能だったろう。数度にわたる質問にいつも快く答えてくれたラビに感謝する。ラビの態度から私はユダヤ教のゼダカ(慈善)の片りんを知ることができた。
また、訳出にあたってよく協力してくれた私のかつての秘書栗原純子夫人と現在の秘書榊原節子嬢に大いなる謝意を述べる。二人の協力がなかったら本書はありえなかったろう。
ただ一つ気がかりなのは、本書が完訳にならなかったことである。完訳してみたら膨大な分量になり、日本人には興味の薄い部分も見受けられたので「子供をわれらに」「地方人と世界人」「権力争い」の章は抄訳にせざるを得なかった。本書がもし非難を受けるとしたらすべては私の判断の甘さにあるのであって、原著者ヤフェ氏のせいではない。
原著者ヤフェ氏は、1927年にシカゴで生まれ、エール大学文学部を卒業した。在学中より創作活動に専念し、多くの小説、テレビドラマを書いている。この『アメリカのユダヤ人』は、彼のただ一つのノン・フィクションである。
ちなみに原書は1968年に刊行されており、当時、「手加減を加えるような本ではなく、心を奪われるような本だ」(パブリッシャーズ・ウィークリー)、「今日のアメリカのユダヤ人の業績および失敗、礼儀作法、アメリカおよびユダヤ人共同体に対する順応あるいは反応などを詳しく述べた傑作」(アメリカン・ニューズ・オブ・ブックス)、「辛辣でありながらも同情心を失っていない、巧妙な作品」(サタデー・レビュー)、「一民族の発展と宗教的多元性社会にとけこもうとする戦いを明晰に洞察した読みごたえのある本」(ジャビッツ上院議員)、「初めてあるがままに書かれたすばらしい真のドキュメンタリー」(シェロー・ワイドマン)といった評価を受けている。
本書がユダヤ系アメリカ人と接することの多い各界の学者、ジャーナリスト、商社マン、広告人、ショービジネス界、教育界、法曹界、医学界、文学界、芸術界の方々の参考になれば幸いである。
昭和47(1972)年4月
chuukyuu