創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(702)クロード・ホプキンズ『科学的広告法』こだわり(2)


昨日からの、クロード・ホプキンス『科学的広告法』の訳者・坂本登さんの同書[あとがき]のつづき


広告の歴史を飾る偉大なコピーライターの一人であるクロード・C・ホプキンズ(写真)は、1900年代の初期にロード&トーマス社の会長アルバート・ラスカーと長年親交があり、後には同社の社長と会長をつとめるに至ったが、クエーカー・オーツ社の、"はじき麦”と."はじき米”のために「鉄砲からはじき出されたシリアル」(the cereal shot from the guns.)という有名なコピーを書いたのは、ホプキンズとラスカーの二人だった。
ホプキンズは、発売以来ずっと手塩にかけてきたぺプソデント歯磨き粉(図版)から身を退くだけの財をなすと、広告という職業に本腰を入れるようになり、リクオゾーン殺菌剤の広告を作った。



汚れの皮膜(フィルム)が、歯からすべての美を奪っています。


この製品は、本文中でも繰り返しその重要性が力説されているサンプリングによって販売されていたが、後年ホプキンズは、この販売法をタイヤからクスリに至るまでの各種製品に応用した。
無料サンプル提供のクーポンを広告に入れたのも、ホプキンズが初めてである。
また、広告コピーについては、彼の先輩格にあたるジョン・パワーズと同じように短いコピーの唱道者で、「広告に美辞麗句は禁物。主題から注意を引き出すのがユニークなスタイルである」と述べている。
ホプキンズのコピー・スタイルにおける直截型の傾向は、若いころ牧師になることを夢みて聖書を耽読したことに影響されているともいわれる。
また彼自身、
「私は貧しい人びとの中で生活し、成長した。だから私は、豊かな人びとのためにコピーを書こうとしたことは一度もないし、またそういう人たちの反応も私にはわからない」
とも言っている。


ホプキンズは1922年にロード&トーマス社を引退し、その10年後の1932年にこの世を去った。
ホプキンズは後年広告界に名をなす多くの人材を育てたが、先年「ある広告人の告白」を著わして注目を浴びたデビッド・オグルビーや、有名なUSP理論(Unique Selling Propodition )を展開しながらテッド・ベイツ社の業績を一段と飛躍させ、ホプキンズの相弟子であるオグルビーがオグルビー&メイザー社の会長を辞任するや突如としてテッド・ベイツ社会長の座を降りて業界を驚かせたロッサー・リーブスなどはその代表的存在といえるだろう。
広告の歴史を語るとき、必ず一度や二度は話題にのる名がクロード・ホプキンズであり、広告のリサーチを論じるとき、これまたよく引合いに出されるのがホプキンズのこの「科学的広告法」である。


「ブレーン」編集部がこの本の翻訳出版を企画し、それを誌上の1コラムに発表した折りも折り、全くの偶然の一致で、シカゴのアドバタイジング出版社(『アド・エイジ』誌ほかを出版)が本年(1966)4月にこれの第三版を出版した。もっとも、この第三版には1927年にホプキンズが著わした”My Life in Advertising”)が組み合わされたが、刊行にあたって同社のS・R・バーンスタイン社長は、「どうしようもないほどの古典でありながら、驚異的といえるほど今日的である」とホプキンズの名著を批評した。


『科学的広告法』が書かれたのは、今(1966)から43年も前である。
広告界の43年間といったらまさに大時代であり、この間の進歩発展は驚異的といえるかもしれない。
したがって、本書に述べられた内容の一部には今日の時点では賛同しかねる面もないではないが、それでもなお、クロード・ホプキンズが残した教訓は、忘れ去るには余りにも重要であり、永遠すぎる。


また、ホプキンズは非常に注意深く、几帳面な性格であったから、彼が書く広告コピーはいっさい反響の結果から生まれた原理原則に基づいていた。
それだからこそ43年後においてすら重版の価値があり、現代のアドマンにも多くの示唆と刺激を与えてくれるのである。


クロード・ホプキンズは、いわずと知れたコピーライターである。
それもアメリカ広告界が生んだ不世出のコピー・ライティングの鬼才である。
彼の原著を読まれた方ならおわかりだろうが、コピーライターにふさわしく、じつに簡明直截な、歯切れのいい文章で書かれている。
この時代にこれだけ現代ジャーナリスティックな感覚を待った文章を書いた人は少ないだろう―――と感服するばかりで、肝心の訳文がそれに追随できなかったことは慙愧にたえない。
私は私なりにできるだけ原文の持つニュアンスを出すことに努力をしたつもりであるが、読みにくい点はおゆるし願いたい。
なお、本文中の小見出しは、読みやすくしたいという念願から訳者が勝手に入れたものであることをお断りしておく。


 1966年7月17日
       坂本 登


(明日は、調査専門家アルフレッド・ポーリッツの[再版に寄せて]




最近、ツイッターで、[読売ADリポート ojo)(オッホ)]に連載中の三田村和彦さんの「こちら宣伝部」の最新エッセイ[「通販広告」から学ぶこと]を読み、『科学的広告法』ほかの、じつに要領のいい今日的まとめ(レジュメ)と、いたく感心した。一読をおすすめ。


http://htn.to/51UorA






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