創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

[6分間の道草](701)クロード・ホプキンズ『科学的広告法』こだわり(1)

47年前の「コピーライター……現在、過去、未来」の5日間が終わった。
なかでも、「過去」に興味を示したコピーライター多かった。アクセスが普段の5割増しにあがった。
自分の職業の歴史を知らないでそれをつづけていられるのは、職業多しといえどもコピーライターぐらいかも知れない。
その場の思いつきや自分の感性だけですむこともあるからだ。


しかし、最近は大新聞までが通販に近い広告を載せないとやっていかれない時代になった。
保強薬(サプリメント)や健康機具、美容・家庭用品など、新聞を上まわって呼びかけているのがBS放送らしい。
通販広告となると、コピーライターの巨人が過去に何人もでている。
たくさんの事例から、成功法則を導きだしていた。


 いまや、彼らを過去の巨人といってすまされなくなってきている。
TCC編で刊行した『5人の広告作家』---の中のオグルビー、リーブスにも光があたってきた。よく読むと、バーンバックさんの発言にも巨人たちの結論が引用されている。


そこで、通販広告の先人……クロード・ホプキンズ著『科学的広告法』にこだわってみた。


クロード・ホプキンズ……って? というクリエイターは、5人の広告作家付・コピーライターの歴史]←クリックを走り読みしよう。




1966年10月5日の日付の入った書状を、当時、『イデア』/『ブレーン』の編集長だった坂本登さんからいただいていた。


「広告のバイブルといわれながら、その邦訳がなかったことを惜しまれていましたクロード・ホプキンズの名著『科学的広告法』の日本語版が出来上がりました。
ご披見いただければ幸いと存じます。
一日も早く出版したいと思いながらも、次々と仕事に追われて翻訳にかかるキッカケがつかめませんでした。
そこで今夏、思いきって一週間ほど休暇をとり、一気呵成に全訳を試みました。
意に満たない点が多々ありますが、ご叱正を仰いで、不十分な点はおいおい是正していきたいと考えております。」



包みには、クロード・ホプキンズ著『科学的広告法』がはいっていた。


「訳者あとがき」から読みはじめた。


広告研究の不朽の名著といわれるクロード・ホプキンズの "Scientific Advertising"を読む機会に私がめぐまれたのは、1952年11月にこの本が再版されたときだった。
1923年にアメリカ広告代理店の草分けの一つにかぞえられるロード&トーマス社(後のフット・コーン&ベルディング社)が初版を発行してから29年、この間久しく絶版になっていた本書がムーア出版社の手で再版されるに至った事情は「序文」にもあるとおり、リサーチの権威として知られるアルフレッド・ポーリッツの努力と、ホプキンズ(夫人方)の孫で当時フット・コーン&ペルディング社の調査部長をしていたシャーウッド・ダッジ氏の協力が大きな力になった。
広告の大部分が"勘″と経験にたよって行なわれ、"科学″という言葉すらもまだ一般に広くは使われていなかった時代に、あえて「科学的広告」をとなえてリサーチの重要性を力説したホプキンズの進歩的な考え方にだれよりも強く共感をおぼえたのがアルフレッド・ポーリッツだったようである。
じじつ、彼はホプキンズのリサーチに対する基礎的考え方とその所説が今日的現実の問題にも適用できる面があまりにも多いのに感銘して、クライアントの多くに本書の一読を熱心に勧めていたというから、これを再版することに異常な情熱を傾けたのもこんなところに理由があったのかもしれない。
再版にさいして彼は進んでその序文を書き、さらにホプキンズのリサーチと今日的リサーチのギャップを補章の形式で埋めるという努力を払っている。
1952年の11月に再版が出るとすぐ、版元であるムーア出版社は同社が発行していた広告専門月刊誌「アドバタイジング・エイジェンシー Advertising Agency」に6回に分けて本書の転載を開始した。
私が本書を読む機会にめぐまれたと書いたのは、じつは同誌の連載記事で読んだことだったのである。
再版本は体裁もあまりりっぱなものではなかったらしく、一冊が当時の相場で2ドルだった。
当時はまだ占領下で外国送金がやかましく、手続きのわずらわしさを敬遠して買いそびれてしまったが、今にして思えば残念なことをしたものである。
『アドバタイジング・エイジェンシー』誌の切抜きは大切に保存してあったのだが、今回の訳本を出すにあたってぜひとも再版本からの全訳を試みたいと思い、版権所有者であるオジブウェー・プレス社(ミネソタ州ドゥルース市)のマーシャル・ライニグ社長に翻訳の許可を申し出たさい、原本を一冊送ってくれるように頼んだ。
ライニグ社長は日本でホプキンズの名著が翻訳出版されることを大変喜んで、自分の蔵書を貸してくれた。
それというのは、再版本もとうの昔に品切れで、書店はもちろん、版元にも在庫がない有様。
それで「私のたった一冊の蔵書を送るから、翻訳が終ったら面倒でも返してもらいたい」ということになったわけである。
この翻訳書にアルフレッド・ポーリツツの「ホプキンズと広告リサーチ」と題する章を加えることができたのは再版本が入手できたからである。
じつをいうと、ホプキンズの『科学的広告法』が日本語に訳され、発表されたのはこんどが初めてなのではない。
いままでにも、いろいろな人がこの本の名をあげ、日本に訳本がないことを書いてこられたが、今から13年前、すなわちアメリカで本書の再版が出版された翌年には、「ブレーン」の兄貴分にあたる「アイデア」に創刊号から全訳が連載された。
これは誠文堂新光社の前会長(故)小川菊松老が「アイデア」誌創刊の構想を秘めて世界を行脚されたおり、前記「アドバタイジング・エイジェンシー」誌の発行人と折衝して翻訳の許可を得てくださったのが幸いしたのである。
正直にいって、「アイデア」が創刊された当時のわが国のデザイン界はまさに低開発国の様相を呈しており、デザイナーなどという言葉すら普通の人たちには通じなかった。
苦しまぎれにコマーシャル・アーチストなどと呼んでみたところで「広告を書く版下屋」ていどにしか理解されなかったし、また広告代理店にしてからが広告主と媒体間の「使い走り」的性格がまだ根強く残っていたから、広告研究家でもない限りクロード・ホプキンズの名を知る者はほとんどいなかったようである。
そんなわけで、「アイデア」の初代編集長宮山峻氏の熱心な勧めでホプキンズの『科学的広告法』を訳出し、これを同誌に発表させていただいたが、どれだけ読者の関心を呼んだかは疑問である。
日本にこれの邦訳がないと一般に信じられてきたことがその解答であるかもしれない。

(明日に、つづく)





最近、ツイッターで、[読売ADリポート ojo)(オッホ)]に連載中の三田村和彦さんの「こちら宣伝部」の最新エッセイ[「通販広告」から学ぶこと]を読み、『科学的広告法』ほかの、じつに要領のいい今日的まとめ(レジュメ)と、大いに感心した。一読をおすすめ。


http://htn.to/51UorA






[ニューヨーカー・アーカイブ]によるソニーTV・シリーズ総索引)←クリック
[ニューヨーカー・アーカイブ]によるフランス政府観光局シリーズ総索引)←クリック
[ニューヨーカー・アーカイブ]によるシーヴァス・リーガル・シリーズ総索引)←クリック
[ニューヨーカー・アーカイブ]を基にエイビス・レンタカー・シリーズ総索引)←クリック
[ニョーヨーカー・アーカイブ]によるVWビートル・シリーズ総索引) ←クリック



Ads Series for Sony TV on [New Yorker's Archives](An index) ←clickAds Series for Chivas Regal on [New Yorker's Archives](An index) ←click
Ads Series for Avis Rent a car on [New Yorker's Archives](An index)←click
Ads Series for VW beetle on[New Yorker's Archives](An index)←click