(609)『フォルクスワーゲンの広告キャンペーン』解説(下)
昨日(中)、一昨日(上)につづき、47年前の処女自著・編『フォルクスワーゲンの広告キャンペーン』(美術出版社 1963.06.15)に付した解説の転載・再録です。
寿量(満80歳)の自祝と、お許しのほどを。
★ ★ ★
フォルクワーゲン試験車X-93号
1台のフォルクスワーゲンを見れば、全部のフォルクスワーゲンを見たことになると、お考えになっているでしょう。
これは違うんです。
この試験車をお見せできるのは、1年か2年先でしょう。
もっと先かも知れません。
この試験車が完ぺきでない限り、締切りに間に合わすために発表するようなことはありません。
一例を挙げますと、私たちは、悪路におけるハンドルまわりの振動を除くため最終嵌合部のダンパを改良しました。新型発表時期ではない、'60年3月のことです。
1つの改良が次の改良をよぶこともよくあります。
私たちは、'59年に北部スウェーデンで新しいキャブレターをテストし、それにあうデアイサー(霜取り装置)をつけ加えました。
この2つは現行のフォルクスワーゲンにもついています。
これらが特別オプションでない点に注目してください。ちゃんと装備されて1,675ドルの中に含まれているんです。
さて。X-93号にはどんな改良点があるか?
別にどうってことはありません。
VWは、実用面で、信頼の点で、満足性を改善するだけのことですから。
それらが実際に車につけられるまでには欠陥は1つもなくなっているでしょう。
C/W ボブ・レブンソン
A/D ヘルムート・クローン(この広告は、『ニューヨーカー』には出稿されていません)
"LIFE誌" 1961.02.24
The experimental X-93 Volkswagen.
You may think that when you've seen one Volkswagen you've seen them all.
But this one is different.
It has some features that may not show up on production models for a year or two.
Or ever.
If ond when we add them, it will be only because they work perfectly, not because.
We have to meet a deadline.
For example: We developed a damper that took the last bit of vibration out of the steering wheel on rough roads. We added it in mid-year: March of 1960.
Often, one refinement leads to another.
We tested a new carburetor in North Sweden in 1959 and added a de-icer to go with it. They are both on the current VW.
You'll notice that these are not extra-cost options. They are part of the car and so included in the price: $1,675.
What does the X-93 have?
Nothing earth-shaking.
Improvements that will make the VW even better. In performance. In reliability.
In comfort.
And by the time they're on the car, there won't be a bug in them.
C/W Bob Levenson
A/D Helmut Krone
"LIFE" 1961.02.24
(承前)
賞讃のかずかず
フォルクスワーゲンのキャンペーンは、DDBの制作哲学(クリエイティブ・フィロソフィー)の典型化であり、その哲学の正しさを証明してみせたものであるといえましょう。
徹底した製品(あるいはサービスとクラフトマン・シップ)の説明、製品以外のものには目もくれない直裁さ、それでいて、目を止めずにはいられない視点の新鮮さ、製品そのものから導き出されたユーモア---など。
一つの例を挙げましょう.
「不良品(Lemon)」 ←クリック という広告を覚えていらっしゃるでしょうか。
広告の歴史が始まって以来、自分たちの製品を「不良品」だなどと宣言した広告主があったでしょうか?
この広告が現われたとき、広告ずれしたアメリカ人も、さすがに「アッ」と驚き、やがて拍手を送ったといいます。
しかも、この広告が訴えようとしているアイデアは、車の検査員は、クローム・メッキの上に肉眼では見えないほどのキズが一つあっても、その車を不合格にすべきであるという、消費者にとっては容易に賛成できる主張なのです。
「多くのフォルクスワーゲンが10万マイルも乗られるわけ」 ←クリック にしたところで、扱われているのは、ガタガタになったボロ車です。
商品をより美しく、より豪華にみせようという広告のルールから全く外れています。
大胆というほかありません。
VWの初期の広告は、車の基本的なことに注意を集中しています。
「フォルクスワーゲンは変わるでしょうか?」←クリック では変わらないスタイリングを強調し、「なぜ、エンジンが後部にあるのでしょうか?」←クリック では空冷式リア・エンジンのよさを訴求しています。
「フォルクスワーゲンは、納車に3ヶ月近くもかかるの、どうして?」←クリック について、私はあるところでこう説明しておきました。
じつは私は、ケーニグ氏がフォルクスワーゲン・セダンのために書いたコピーの中で、あれがいちばん傑作だとふんでいるのです。
なぜか?
コピーライターの才能を見分けるには、長いコピーを書かしてみるとわかるという識別論は別にして、あれは、長いコピーであるにかかわらず、スルスルと読ませて、ワーゲンについての必要なことを十分に伝達し、しかも、説得性があるからです。
(注:当ブログ『「効果的なコピー作法』第5回「コピーの流れ」←クリック)
400字詰原稿用紙で9枚以上もある訳文になっていますが、これ以後のワーゲンのキャンペーンが展開するほとんどのテーマが、この広告に入っているのです。
すなわち、
(1)凍結したりオーバーヒートしない空冷式エンジン、
(2)氷上や雪道でも操作がラク、
(3)トーション・バー・サスペンションの接地性、
(4)不変のスタイル
(5)クラフトマン・シップの真意、
(6)1ガロンあたり32マイル、すてきな運転感覚、
(7)早くて安上がりで、どこでも受けられるサービス、
(8)VWは完全装備で1,565ドル
-
-
- という8項目にわたって詳細に説明しています。
-
その説明ぶりは、例によってユーモアの混った、しかも平易な用語のみでやっているので、長いコピーでありながら、スルスルと読めます。
VWの広告の特徴の一つであるユーモアについては、前章で書きました。
平易な用語も特徴的です。サンフランシスコのGB&B代理店の社長であるギルド(Walter Guild)は、『アド・エージ』誌主催の夏期広告研究会('60年)のスピーチで、VWの「小さいことが理想」を引きあいに出してこういっています。
これは非常に大胆な考え方に根ざしています。ほとんどの人が製品のマイナス点と考えていることを練りあげ、それを有利な点に変えてしまったのです。
"Think small."
そしてコピーは美しい文章でつづきます。
辞書の助けを借りないでもすべての語を理解することができるでしょう。
では、最初の一節を読んでみましょう。
「きっちりつめたら、ニューヨーク大学の18人の学生がサン・ルーフVWに乗れました。フォルクスワーゲンは家族向きに考えて大きさが決められています。お母さん、お父さん、それに育ちざかりのこども3人というのが、この車にふさわしい定員です」
ここには、何の誇張も、消費者に対するおしつけもありません。
しかし、この広告の目ざしているのは、ハード・セルです。
次の節では、
「エコノミイ・ランでVWは1ガロンあたり、平均約50マイル弱の記録を出しました。あなたにはちょっと無理な数字です。プロのドライバーは商売上のすてきな秘けつを持っているんですから。 (お知りになりたい? VWBox#65 Englewood, N.J.へお手紙をどうぞ)
ガソリンは普通のもの、またオイルのことは次の交換時期までお忘れ下さい」
このコピーの1語だって広告用のlingo(ちんぷんかんぷんの術語)では書かれていません。正しく、一般の人の言葉で話しています。
ジョージ・ロイス(P.K.L 代理店の共同経営者)は、VWのキャンペーンを評して、
「1960年のベスト・キャンペーンは、自動車のキャンペーンであった。
フォルクスワーゲンのである。
他の車のために、これらの広告がマネられるであろう。
だが、追随者たちは創始者たちが新しいエキサイティングなアイデアへ向かって進み続けている間に、悪い広告しかつくれない」といったあとで、この"Think small" の広告について、車にとって 「大きさ」は欠かせないものであると考えている全アメリカ人の通念に挑戦する、これほど強力なアイデアのある広告は、一生のうちに、一つお目にかかれるかどうか、というほどのすぐれたものである。
(Advertising Direction誌 1961年2月号)
と、ものすごい賛辞を呈しています。
すぐれたVWのキャンペーンの中でも、とくに傑出した広告であるというのです。
ロイスという人は、もともとDDBにいた人であることは前に書きました。
彼は「自信家」という仇名があるくらい、他の人の仕事を認めようとしない人ですが、VWの広告だけは別のようです。
もっとも、"Think small"のコピーは現在の共同経営者であるケーニグがDDB時代に書いたものですが----。
ついでですから書き添えておきますと、この広告にはフックがつけられています。
フックとは広告用語で資料提供などによる反応調査を目的とした仕掛けです。
「お知りになりたい? では、VW,Box #65--」がそれです。
手紙は、この広告がでたときに4,000通、それ以後、2年になるのに、いまだにポツポツと請求が舞いこんでいて、その総計はわからないとマクネイリー氏が教えてくれました。
「フォルクスワーゲンについての冗談を最近なにかお聞きになりましたか?」←クリック は, 『エスカイヤ』、『ニューヨーカー』(明後日、5月27日にも掲出)、『リーダーズ・ダイジェスト』誌に載った広告ですが、依頼人のジョン・スタンレイ(実は宣伝部次長のガーナート(Michael Gernert) の仮名なのですが)の許には、'63年3月12日までに250通以上のジョークが寄せられたそうです。
しかも 1日平均40通の割で来るそうですから、彼のファイル・ブックは間もなく部厚いものになるでしょう。
傑作なのをご絡介しますと、広告の中に書いてある「フロント・フードの下を見て、だれかがエンジンを盗んだ」と思ったご婦人に対し、ホノルルから「ご心配なく---.私は後のトランクに、スペアのエンジンをもう1ヶ持っていますからね」というヤツです。
VWの広告がすぐれているのは、ユーモアのある表現やコピーが平易に語られているからではありません。
もっと本質的な点、つまり、アメリカ人の自動車に対する考え方に真向から挑戦しているからです。
DDBのバーンバック社長は、VWの広告についてこう語っています。
私たちは、気の利いたふうにやろうと思ったり、人をアッといわせようとしたりはしない。
私たちがやろうとしていることは、まず、宣伝計画を立て、次にそれを記憶に残るような印象的なものにすることだ。
この宣伝計画の実行にあたっては、二つの方法がある。
何百万ドルかかっても、幾度も幾度もそれをくり返していうか、あるいは、消費者が最初見た瞬間に、そのメッセージを憶えてしまって忘れられないほど印象的なものにするか、の二つである。
われわれは、後者のやり方を選んだ。
というのは、売るということと同時に、われわれはまた、大衆の好みを向上させることに寄与できるものと信じているからである。
人びとは他の形式の美術や文章よりも、ずっと多くの広告に囲まれて生活しているのだ。
だから、よい絵と文章によって、私たちは大衆の好みのレベルを向上させることができるのである。
バーンバックさんは、 「消費者が最初に見た途端に、そのメッセージを憶えてしまって忘れられないほど印象的なものにする」といっていますが、事実、フォルクスワーゲンのキャンペーンは、そうだったことが証明されています。
「フォルクスワーゲンは変わるでしょうか?」は、読者の56%がこの広告を見たといい、52%が広告を見てVWを連想し、23%の人が「ほとんど全文を読んだ」と答えた---とスターチの調査が示しています。
「なぜ、エンジンが後部にあるのでしょうか?」は、 「ほとんど読んだ」が31%。それ以後の広告は、リーダシップが下がってきますが、それでもアメリカの自動車広告全体の平均値である8%にまで落ちた広告は一つもないのです。
さて、VWの広告の中で真正面からデトロイト流の考え方に挑戦したのが、「ジョーンズ一家は、何年型の事を運転しているのでしょう?」です。
ジョーンズ家は何年型の車を運転しているのでしょう?
ジョーンズ家は、1台のフォルクスワーゲンと、ここ数年は、同じとしか見えないフォルクスワーゲンを何台か、運転しています。
フォルクスワーゲンは、絶対に流行遅れになりません。実のところ、フォルクスワーゲンがどれぐらいもつか、誰も知りません。初期のVWがまだダメになっていないのですから。
私たちは、エンジンの修理なしに100,000マイル以上の記録を出したVWのオーナーから、手紙をいただいています(また、もし、その方たちが修理が必要な場合には、この車がすばらしいのと同様に、VWのサービスもすばらしいことがおわかりになるでしょう)。
フォルクスワーゲンは、必要な場合には、改良します。より滑らかにカーブをきるために、アンチ・スエイ・バーが、フロント・サスペンションに取りつけられたばかりです。新しいインシュレイションは、エンジンや道路からのノイズを消します。
何年にもわたって、フォルクスワーゲンのほとんどの部分が改良されたのです(しかし心臓と外形は変わりません)。
フォルクスワーゲンのオーナーたちは、これこそドライブを楽しくし、人生を楽しくするやり方だと気づいています。あなたのお考えは?
C/W ジュリアン・ケーニグ
A/D ヘルムート・クローン
(この広告は、『ニューヨーカー』誌には出稿されていません)
"LIFE誌" 1959.11.23
What year car do the Jones drive?
The Jones drive a Volkswagen and Volkswagenslook alike from year to year.
A Volkswagen is never outmoded. Indeed, ! no one knows how long a Volkswagen lasts; the first VWs made have not worn out. We hear from VW owners who have clocked over 100,000 miles without engine repair (if they ever should need it, they will find VW service is as good as the car).
The Volkswagen does change −where it counts.
A Volkswagen is never outmoded. Indeed, no one knows how long a Volkswagen lasts; the first VWs made have not worn out. We hear from VW owners who have clocked over 100,000 miles without engine repair (if they ever should need it, they will find VW service is as good as the car).
The Volkswagen does change -where it counts. An anti-sway bar has just been added to the front suspension to make curves even smoother. New insulation deadens engine and roadway noise.
Over the years almost every part in the Volkswagen has been changed (but not its heart or face).
Volkswagen owners find this a happy way to drive −and to live. How about you?
C/W Julian Koenig
A/D Helmut Krone
"LIFE" 1959.11.23
『ニューヨーク・タイムス』はこの広告について、 「やがてVWの広告は社会的な風刺を盛りこみ始めた」と評価しています。
ジョージ・ロイスは、こう解説しています。
デトロイトがばらまいた、年ごとに新型車に買いかえるというアメリカ人の社会通念に、このVWの広告は、VW流の考え方で挑戦した。
コピー・スーパパイザーのレブンソンはいいます。
VWの広告は気が利いている---などという人がいると、私は腹が立つ。
私たちは、VWの広告はしっかりしていて、製品のもつ簡潔さと正直さを、忠実に反映していると信じているのだ。
このことの方が、 「気が利いている」ことより、もっとすばらしいことなのだ。
私も同感です。
ロイスもいうように、デトロイト流の考え方に挑戦してVW流の考えを広めるということは、 「気が利いた」ぐらいのことで達せられるものではありません。
もっと真剣な挑戦なのです。
レブンソンはこうもいいます。
「アメリカの車の中には、製品を売るというよりはイメージを売ろうとしているものがある。
だから背景に、カントリー・クラブとか盛装した人物が必要になってくるのだ」
この言葉は、キャデラックを始めとするアメリカの高級車のことを指し、ヴァンス・パッカードのいう、いわゆる、車を地位のシンボル視する俗流科学への挑戦でしょう。
そうです。
広告界というところは、アメリカ、日本を問わず、パッカード流の俗流科学の信者がそれこそ掃いて捨てるほどいるのです。
そしてこれらの信者がつくる広告は、どれもこれも似たような常識的な広告なのです。
まるで新鮮さのない、ありきたりの広告なのです。
VWはいつも工場で小さなトラブルに巻きこまれています。
このがらくたは、フォルクスワーゲンになるべく進んでいたときに、石の壁にぶっつけられてしまってできたものです。
きびしい検査員がそうしたのです。
彼らは、生産ラインからチェックした部品を抜き出して、20台分の車、あるいは貨車2両分のスクラップをつくりだしています。
各工程でフォルクスワーゲンを文字通りバラバラにしてしまう検査員が何千人もいるのです。
フェンダーに小さなひっかき疵があれば、彼らに大きな疵をつけられてしまいます。
バンパーに小さな切り傷があってもぶっつけられてしまいます。
10人の作業員がやったことを、1人の検査員が台無しにしてしまうのです。そして塗装段階では、1台のVWの点検に8人の検査員があたっています。
とはいえ、この検査の仕事があるのは、作業がルーズに行われているからではないのです。
VWをつくる人たちは、十分に注意してやっています。検査員がそれを完璧に仕上げるのです。
C/W ジョン・ノブル
A/D ロイ・グレイス
(この広告は『ニューヨーカー』誌には出稿されていません)
"LIFE誌" 1967.11.17
Every now and then a VW runs into a little trouble at the factory.
That hunk of junk was on its way to being a Volkswagen, when it ran into a stone wall: a bunch-nosed
inspectors who pul enough parts off the line every day to make the equivolent of 20 cars. Or 2 freight cars full of scrap.
There are thousands of inspectors who literally pick every Volkswagen to pieces, every step of the way.
If there's a little scratch in a fender, it gets scratched, if there's a little nick in a bumper, it gets bumped.
Wherever ten people are doing something, there's an inspector to undo it. For the paint job alone, no less than 8 inspectors check every VW.
All that inspection doesn't mean the work isn't done carefully. the men who make the VW make it very well. The inspectors just make it perfect.
C/W John Noble
A/D Roy Grace
"LIFE" 1967.11.17
経済について述べさせていただけますか?
経済的理由で新車購入を躊躇される場合、フォルクスワーゲン購入の経済性を考えてみるべきかもしれません。
まず、普通新車の平均売価は約3,185ドルですが、VWはわずか1,839ドルです。
約1,300ドルの節約です。
また、対走行距離減価償却1kmあたり6.8セントに対してフォルクスワーゲンは約3セントです。
年間、また700ドルの節約(または約20,000km)できます。
1ヶ年、合計2,000ドルの節約を可能にします。
2ヶ年、2,700ドル。
3ヶ年、3,400ドル。
幸福な日常が復活。
C/W トム・ヨギィ
A/D テッド・シャイン(この広告は、『ニューヨーカー』誌に出稿されていません)
"LIFE誌" 1970.08.28
Is the economy trying to tell you something?
If you've hesitated about buying a new car because of the economy, maybe you should look into the economy of buying a new Volkswagen.
To begin with, while the average new car sells for about $3185, a new VW sells for only $1839.
That saves you about $1300.
Then, while the average car costs 10.9 cents a mile to run, a Volkswagen costs only 5 cents.
That saves you about another $700 every year (or 12,000 miles you drive).
And in just one year, it can bring your total savings to $2000.
In two years, $2700.
In three, $3400.
Happy days are here again.
C/W Tom Yoggy
A/D Ted Shaine
"LIFE" 1970.08.28
それはさておき、 「カントリー・クラブや盛装した入物」を背景としないフォルクスワーゲンの広告は、どういう背景を使うのでしょう。 1963年2月4日号の『アド・エイジ』紙は、そのコラム欄で 「絶対的な単純さ」と題して、こう、解説しています。
フォルクスワーゲンの広告が新しくでるたびに、引用しないでおくということは困難なほどだ。
しかも、一つ一つがお互いに非常によく似ているのだから驚くに値いする。
さらに驚くべきは、フォルクスワーゲンの広告が、すばらしいアート、珍しいレイアウト、 気の利いたヘッドラインやコピーなどによって際立っているのではないということだ。
VWの広告は、本質的にはコピー・アドだと、われわれは結論をくだしている。
例外なく、すべてが製品から成り立ち、背景も人物もない。
へッドラインとコピーがあるだけ。
徹底的に単純に煮つめられた広告なのである。
だが、それ以上に、VWの広告はコピー・アドであり、製品のいくつかの面を掘り下げて--- 新鮮な着想と新しい言葉で表現しているのである。
一つ一つの「外見と構成」がひどく似ているにもかかわらず、どれも、まるでそれ以前には全然存在しなかったような気持ちで読めるのである。
そしてこれは、本質的なストーリーが基本的には同じに語られている点が、全くすばらしいのである---。
最後にバテるのがフォルクスワーゲン。
ひどいドシャ降りのときですら、巧ざる宣伝になることがあります。
新聞にはしばしば、ホイール・キャップまで水をはねあげて水中を進むフォルクスワーゲンの写真が載ります(ほとんどの車が陽がさすのを待っているのに)。
私たちは、水に浮いているVWの写真さえもっています(でも、お見せしたくありません。有料橋の通行料やフェリボートの料金を倹約したくて、川を渡ろうとする人がでてきてはコトですから)。
私たちは、フォルクスワーゲンの腹部を、自動車というより、船に似せてつくりました。とはいっても、別な理由からですよ。
すべての作動部分を保護するために、腹部をすっかり覆い、ゴムで密封しています。
露出しているところは、ありません。
フォルクスワーゲンのどの部位(腹部から上)も完ぺきにできており、気密です(こうなるわけです。私たちはこの15年間<同じ基本形を改良し、完成させてきているのですから)。
もし、あなたのVWが水中でバテるとしたら、理由はたった一つ。
あなたが深みにはまったということです。
C/W 不明
A/D 不明
(これは、『ニューヨーカー』誌には出稿されていません)
"LIFE誌" 1961.05.05
Last one to conk out is a Volkswagen.
Whenever there's a bad rainstorm, we get some priceless publicity.
The newspapers often show a Volkswogen sloshing ahead in water up to its hubcaps(while almost everyone else is waiting for the sun to come out).
We even have pictures of flooting VWs.(We won't print them, thoun. Someone
just might try to save a bridge toll and ferry his VW across a river. We don't recommend it.
We do build the VW's bottom more like a boat than a car. But for a different reason.
We enclose the underside and seal it with rubber to protect all the working parts.
Nothing is left exposed.
Every port of the Volkswagen (from the bottom up)is put together so well that the finished car is practically air-tight, (it should be. We've been improving and refining the some bosic model for 15 years.)
If your Volkswagen ever does conk out in a flood, you can be sure of one thing.
You're in mighty deep water.
C/W unknown
A/D unknown
"LIFE" 1961.05.05
一つの製品を表現するのに、純粋にそのものについて考えを練るなら、どれほど多くの興味深いやり方が見出せるかという点についても驚かされる。
フォルクスワーゲンのキャンペーンに寄せられた賞讃は、数知れないほど多いのです。
「いろんなところへ行ってきました」←クリックを代表として、VWのキャンペーンは、ニューヨークのアートディレクターズ・クラブの第40回展で最高の金賞を、そして『プリンターズ・インク』誌主催の優秀広告賞では'60年、'61年度の2年連続受賞です。
'61年度のP.I誌賞の授賞理由は、
新鮮で信頼でき、セールス・アピールが「簡潔で人の心をグッととらえる」
という点で---
となっています。
広告批評家のウイリアム・D ・タイラー (William Tyler)は、1963年2月11日号の『アド・エイジ』紙で、「1962年の優秀印刷広告」と題して10のキャンペーンの最高位にVWの広告をランクして、こういっています。
抜群のキャンペーンぞろいで、選択する必要がないというのは、フォルクスワーゲンの広告に関するかぎり、全く真実である。
その秘密は、製品の利点を訴えながら、同時に婉曲に製品を茶化している、そのアブローチにあるらしい。
このようなアプローチには、読者の警戒心をとき、信頼性をつけ加える静かな自信がうかがわれるのである。
気の利いた広告もある。
たとえば、「小さいことが理想」
←クリック
直接的なのは「多くのフォルクスワーゲンが、10万マイルも乗られるわけ」
←クリックまたは「あり得ません」という、蒸気を吹き上げているラジエーターの写真がついたもの。
刺戟的なのは、「フォルクスワーゲンの最も経済的な点は、燃費ではありません」←クリック(低価格について述べる)---
しかしVWのシリーズを最も端的な言葉で表現した、CBS-TVの広告兼販売部長ルー・ドーフスマンの意見、
コピーとアートを結婚させた広告のすぐれた例としては、フォルクスワーゲンの一連の広告がある。
「小さいことが理想」という言葉で、同車のシンプルなイメージと結合させているのが、好例である。
これは、新しい広告のつくり方の方向を指示した点では、的を射た見方です。(後略)
この方は、33年後にかぶと虫を手に入れました。
1台目のフォルクスワーゲンを買うのに、33年間もお待ちになる方がめったにいらっしゃらないのは、私たちにとって幸いなことです。
けれども、アルバート・ギリスさんはお待ちになったのです。多分、いつも正しい考え方をしていらっしゃったのでしょう。ギリスさんの場合、33年間、新車の必要がなかったのです.
ギリスさんと1929年A型フォードとは、お互いにうまくやってこられました。
ギリスさんは、修理をご自分でなさり、夜中にタイヤを直すためにジャッキを持ちだしたこともありました。
去年、新車が必要になったとき、出かけていってフォルクスワーゲンをお求めになりました。
「長持ちするって聞いたので」とギリスさんは説明しました。
ギリスさんはVWが好きなんでしょうか?
彼は78歳の治安官。せっかちな判断はしません。
「お宅の検査員はまったくよく検査しますね」ギリスさんが言ったのはそれだけ。
けれども、ギリスさんは、奥さんと54回めの結婿記念日に旅行をしたとつけ加えました。
お2人は10,800km走り、ガソリン代62ドル、オイル代55セントを払ったそうです.
「オイル焼けするかもしれないとは思わなかった」そうです。
C/W ボブ・レブンソン
A/D ヘルムート・クローン
(これは、『ニューヨーカー』には出原稿されていません)
"LIFE誌" 1963.04.12
33 years later, he got the bug.
We're glad that most people don't wait 33 years to buy their first Volkswagen.
But Albert Gillis did, and maybe he had the right idea all along.
He didn't buy a new car for 33 years because he didn't happen to need one.
He and his 1929 Model A Ford did just fine by each other.
He always did his own repairs and even jacked it up at night to save the tires.
When he needed a new car lost year, he went out and bought a Volkswagen.
"I heard they hold up," he explained.
Does he like the VW?
Mr. Gillis is 78, a Justice of the Peace, and not given to hasty decisions.
"Your inspectors sure do a good job of inspecting," was as for as he would go.
But he did mention that he and Mrs. Gillis took a trip for their 54th anniversary.
They drove 6,750 miles and spent $62 on gas and 55¢ on oil.
"I didn't think they were supposed to burn oil," he said.
C/W Bob Levenson
A/D Helmut Krone
"LIFE" 1963.04.12
明日からは、また、[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズに戻ります。