創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(204)[ビートルの広告](106)


クルマの広告』(ロング新書 2008.12.10刊)に新味を加えたのが[シンプル・フレイズ simple phrase]なるくくり。近代的な様相をおびている。澄ました表情で[1962 1/2型]などという前代未聞の年式を登場させてシャラッとしている。いわれてみれば、次ぎの年式まで待てない改良をしたから[1962 1/2型]としたという---これで世界は新しい言葉を手にしたといえる。米国の新車の発表は、来年型は前年の8月ごろに現れる。とすると[1962 1/2型]が現われたのは1961年の年末か?


\blue\Large 1962\frac{1}{2}フォルクスワーゲン


フォルクスワーゲンに改良するところを発見したら、改良します。
ただちに、どの部分も---です。
もし、きょうあなたが、最新のフォルクスワーゲンをお求めになれば、あなたは、まったく新しいステァリング装置つきのフォルクスワーゲンをお求めになったことになります。
いわゆる、操舵感覚がぐんとよくなっているので、やはりVWはハンドル(操縦)しやすいとお感じになるでしょう。
私たちは、この装置を、いそいで取りつけようとはしませんでしたし、間に合いもしませんでしたから、'62年型にはついていません。
でも'63年型まで待たないで、さっそく新採用しました。
私たちは、この15年間に数千ヶ所に及ぶ改良を加えてきました。が、VWを廃物化するためのものは一つもなく、つねによりよくするためにだけやってきています。
「なぜ、ほかの車のように毎年スタイルを変えないのか」と、よくおたずねになります。
答えは簡単---1年に1回の改良では不十分なのです。




The \blue\Large 1962\frac{1}{2} Volkswagen.


When we find a way to improve the Volkswagen, we do it.
Then and there.
If you went out to buy a new VW today,you'd get one with on entirely new steering mechanism.
It gives you on even better sense of touch with the road and makes the VW still easier to handle.
We weren't in any rush to put it on our '62 model; it wasn't quite ready.
And we're not waiting for the '63 VW to come out; it's ready now.
We've made thousands of changes in the past 15 years. But not one has ever made a VW obsolete; only better.
People sometimes ask us why we don't change our car once a yeor like everybody else.
The answer is simple: once a year isn't always enough.