創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(236)[VWビートルの広告](136)


誌面と画面のコラボレイション


「雪中松柏(せっちゅうしょうはく)」ご覧のとおり、明明白白。


1960年、カタログ類の担当だったコピーライターのレブンソン氏が、マス・メディア担当に引き上げられて、クローン氏と初めて組んでつくった雑誌広告。




明らかに、フォルクスワーゲンです。


フォルクスワーゲンだとの目星は、すぐつきます。
たとえ、そのかぶと虫スタイルが雪ですっぽり隠れていても。
動きつづけているのが、フォルクスワーゲンなんですよ。
フォルクスワーゲンは、リア・エンジンなので、ほかの車が行きえない氷の丘でも登りきります。フロント・エンジンのものよりも、後車輪にぐっと力がはいるからなんです。
でも、それだけでは問題の半分しか解決しません。
エンジンは後部にあるだけでは十分とはいえません。作動しなければ無意味です。
そこで、私たちはVWに水冷式ではなくて、空冷式エンジンを採用しているのです。不凍液も不要ですし、ラジエータがヒビ割れすることもありません(夏に沸騰する心配もありません)。
冷却水をぬく手間も不要なら、洗浄や錆止めも不要です。
VWは零下の戸外にも駐車でき、雪だまりから這い出ることもできます。実際、あなたがエンジン・キイをまわした瞬間、動きはじめるのです。
もし、あなたが氷や雪の問題など無関係な土地で生活していらっしゃるとしても、VWの尋常でない能力の判定ができる機会はふんだんにあります。
砂地やぬかるみでお試しの程を。




A Volkswagen, obviously.

 
It's easy to spot a Volkswagen.
Even with enough snow on it to hide the beetle shape.
It's the one that keeps moving.
A Volkswagen will even go up icy hills when other cars won't go at all because we put the engine in the back. It gives the rear wheels much better traction.
That's half the problem.
But the engine can't just be there. It has to keep working.
So we cool the VW engine with air, not water. There's no need for anti-freeze, no chance of the block cracking. (No possi. bility of boiling over in summer, either.) And there's no draining. No flushing. No rust.
You can park a VW outdoors in sub-zero weather or dig it out of a snowbank; it's ready to roll as soon as you turn the key.
If you happen to live where ice and snow are no problem, don't think you can't judge the VW's extraordinary abilities.
Just try it in sand or mud.

TV-CM(モノクロ60秒)(1964) 「雪の朝」 ニューヨークADCとカンヌで金賞 


高詳細の映像もアップしました。「HQ」ボタンをクリックするときれいな映像で見られます。(09.4.1)



アナ除雪車を運転する人は、雪の中をどうやって除雪車の置場まで
たどりつくのが驚異に満ちた気持ちで考えたことはありませんか?


この人はフォルクスワーゲンを運転しています。


もう驚異ではなくなったでしょう?




10数年後にドイツ語圏のDDBがリメイクしたもの(60秒)



かつて多摩美術大学グラフィック・デザイン科の学生で、いま、現場で活躍している君へ。



広告コンセプトのクラスを38年間、つづけました。単位をとったのは合計で2,500人を超えたはず。
教室では提示できなかった資料を、ここへアップしています。
気づいた人は、まだ交流のあるクラス・メート2人へ、メールでこのブログでセンスのリハビリテイションをするように伝えあってください。
ほかの美大卒の人たちが、けっこう、アクセスしてきていますよ。