創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(549)離婚しないで仕事を成功させる法 (2)


"Dear Mr. Steinhauser:


"I was gratified to learn of your personal initiatives to secure passage of the Rat Extermination Bill.
"Your timely and imaginative advertisement must surely have played an important part in persuading the Congress of the necessity for this vital legislation.
"All who will benefit from it join in my thanks to you and Mr. Kollewe.
"Sincerely. Lyndon B. Johnson."


1967年11月号『DDB ニュース』でみつけました。
ザ・ホワイト・ハウス(大統領府)のレター・ヘッド(ロゴ入り便箋)に、バート・スタインハウザー(DDBのクリエイター)氏あての感謝状で、署名者はリンドン・B・ジョンソン(大統領


2009年12月4日のこのブログで、スタインハウザー氏の「自選の辞」で紹介ずみですが、文面を再録しましょう。



「親愛なるスタインハウザー殿;


私は、あなたがたが提案さなっているビルのねずみ撲滅の訴えに、満腔の賛意を表します。
あなたのタイムリーで読み手のイメージを刺激する広告が、立法提案を議会に提出させるのに力となったことは疑うべくもありません。
そのお手柄は、あなたとコピーライターのコルイ氏によるといっても過言ではありますまい。
こころから リンドン・B・ジョンソン」


クリエイターなら、自分が創ったものに、こういう手紙を貰ってみたいですね。もっとも、署名者によりますが---。


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以下は、きのうのつづきの、40年以上も前の、賢い共働きの奥方の告白(?)


ジェーン・スノー(アカウント・エグゼクティブ)


主人と私は、すごく忙しい社会生活を送っています。
そして私たちはけっこう楽しんでいます。
ですから私が困った時には彼は懸命になって助けてくれます。
非常に思いやりがある夫です。


ところが、すべてがスムーズに行くと、女中がきたり、洗たく屋がきたりして、困難なことはちっとも解決しません。
不幸なことに、私たちには子供がいません。
だれかが私たちの犬を盗みました。
そして私たちはボートを売りました。
ですから主人に比べて、私は他人をほんのわずかしか信頼していません。


私たちは、2人とも調理はかなり上手なほうです。
どちらが上手かで分担し合っています。
そして、私は方法を持っています。
もし、私かディナー・パーティーをやるときには、前日に調理をし、給仕のために人を雇うような余裕のある生活ができ、週末には郊外の別荘に行くこともできます。


仕事の忙しさを、家庭に持ち込んではいけません。
私がいうのは家に持ち帰っても、仕事のことを話すなという意味なんです。
私は、仕事の悩みを主人にまで持ち込むのは賢明なことではないと思います。
ですから強度に緊張している時は時々あることですが……主人が帰宅する前に、シャワーを浴びたり、着替えをしたり、強いお酒を飲んだり、時には15分うたたねをしたりして、緊張を解きほぐします。


洗たく機がこわれたり、子供の世話で疲れたり、ごみ集め人がこなかったりした時には、家庭だって、私がクライアントとの会議で緊張して帰宅したのと同じような状態になるわけですものね。


時聞がある時は、クッキーをどっさり焼いたり、原稿を書いたりしますが、売ったことは一度もありません。
私は、働くということは、多くの人々が持っている保守性を救ってくれると思います。
なぜなら、常に流動の中にいるからです。
主人は、私が家庭にいて家の中をきれいにすることよりも、働くことのほうが私のためになると思っています。
お金のことをいっているのではなく、人間としてという意味ですが……家の中をきれいにするためには、だれかを雇うことができるのですから。


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ペニー・ヘウィット(テレビ・プロデューサー)


別にどうってことはありませんよ。
私は、俳優と結婚しました。
つまり私たち2人ともが、共同生活に対して非常に融通のきく考えを持っているというわけです。
私がロケーションに行くこともあれば、彼のほうだって6ヶ月くらい旅行に出ることもあるのですから。
結局は、それぞれが自分たち夫婦の暮らし方を基盤にして、お互いに可能な範囲でうまくやるってことでしょう。


私の場合は、主人が調理がすごく上手だったので、このうえなく幸運でした。
彼がイギリスで俳優をやっていた当時、じつにひどい下宿屋で暮らしていたので、自衛上料理を学び、今ではそれが彼の趣味
の一つになってしまっているのです。
ですから私は、すっかり夕食の準備ができているわが家へ帰ればいいわけです。


家事を全部やっていますといいたいところですが、ちょっとね。夫は、バキューム・クリーナーですばやく掃除をしてしまいます。
彼だっていやがりますが、思いやりがあるので。この原稿を書いている今も、彼がやってくれています。


女中は雇っていません。
子供もおりません。
ですから私たちの生活には、ゴタゴタしたものはほんのちょっぴりしかないのです。
銀器はピカピカには磨かれてはいません。
それでそれは私の悩みではありますが、それほど重要事ではないでしょう。
よごれた指跡を心配するよりも、むしろこの国での私たちの仕事を全うするほうが大切だと信じています。


主人は一週間分の買物を一度で済ませてしまいます。
私たちが田舎にいる時は一緒にします。
私がロンドンのオグルビーで彼と初めて会った時、私は働いていました。
そして彼はその時、オールド・ビック・ホールにいました。
そして彼は夜働いていたので、私よりも昼間は時間が余っていたのです。
これはこの人にとって便利なことでした。


私たちは、かなりうまく処理していると思います。
私は双子座です。
主人がいうには、私はちょっと分裂気味だそうです。
しかし、たぶん、それが、私が職業を持っていて、しかも俳優との結婚生活を送っていける方法だと思います。