創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(545)Some Favorite Ads, till 1969 (3)


DDB創業20周年の記念号『DDB NEWS』に掲載されていた、キー・クリエイターたち、自選作品を語る---から。 連載は、一昨日からはじまっています。


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Mr.David Reider


私は「何のために?」を自選します。
コピーライターとしてこれまで学んだことのほとんすべてをこの広告に注ぎこんでいると思っているからです。
アートディレクターのレン・シローイッツと私は、かなり早い時期からマカーシーのキャンペーンにかかわっていました。
この広告が『ニューヨーク・タイムス』に掲載させるや、電撃的というほどの反応がもたらされたのです。
全国から賛意の手紙の山とともに、2万3000ドルものカンパが送られてきました。数週後に再掲載されると、そらに2万8000ドル寄せられました。
そして、この広告の寄与刷りが全米の大学の掲示板に張り出されるという広がりを見せたのです。さらに、学生たちはぞくぞくとニュー・ハンプシャーへやってき、マカーシー議員の予備選挙を手伝うボランティア活動をはじめたのです。
その上、あちこちの新聞がこの広告を記事としてとりあげはじめたのです。その波は、またたくまに全米にひろがり、反ヴェトナム戦運動と化していったのです。
コピーライターとして、この以上の、何を広告に求めますか?



なんのために?


なんのためだか、お話ししましょう。
なんのためでも、まったく、なんのためでもないのです。
高い位についている人たちは、自分たちがひどい過ちを冒していることさえ認めたがらないほど、器が小さいからです。
過ちと認めながらも、やってしまったのだから、ともかく体面を保たねば、という人がいるのです。
政府のスポークスマンは、この戦争についての真実を、何度も何度もごまかしているからです。
新聞の見出しを書く人は、たくさんの人が殺されていることをまるでバスケットボールの試合のように、嬉しそうにネタにするからです。
サイゴンの軍隊は、自分たちの国の人間が戦おうとしないので、われわれの軍隊に支援してもらわなければならないからです。
あの不幸な国にいる暴利をむさぼる商人たちは、われわれのお人よしを笑いながら、われわれのお金をスイスの銀行に貯めこんでいるのです。
こいういことのためにわれわれの国の若者を徴兵し、そして殺したり殺されたりするために、よその国へ送りこんでいるのです。
お父さん、お母さん……彼らが、あなたの息子さんにこんなことをやらせるのを、どうして座って見ていられるのですか?
若者へ……どうして彼らがあなたたちを、まるでサラミのように、たとえば、学校に行ってない人たちに対しては学生を、在学生に対しては卒業を、そして予備兵に対しては徴兵を受けた者…というように切り刻むのを見過ごしているのでしよう?
納税者へ……あなたがたはいったいどんなことがあった時に立ち上がり、あなたがたの税金をまるでそうするのが彼らの仕事であるかのように無駄使いしているワシントンの紳士たちに、もうたくさんだと抗議をするのですか?


(中略)


あなたは、「でも、一個人になにができる」とおっしゃるのですね。
お答えします。
「なんでもできるのです」
なぜなら、政治家が大衆をもっとも怖れ、もっとも尊重するのは、大衆が立ち上がった時なのです。そしてその時には、彼らは誤りを冒しません。
(以下、マッカーシー議員を大統領候補へ、と呼びかける)。


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Mr. Bert Steionhauser


これまで創ってきた広告の中で、もっとも大きくてナマの反響のあったこれを自選作とします。
その中から1967年9月に受け取った一通をご紹介します。


「親愛なるスタインハウザー殿;
私は、あなたがたが提案さなっているビルのねずみ撲滅の訴えに、満腔の賛意を表します。
あなたのタイムリーで読み手のイメージを刺激する広告が、立法提案を議会に提出させるのに力となったことは疑うべくもありません。
そのお手柄は、あなたとコピーライターのコルイ氏によるといっても過言ではありますまい。
こころから リンドン・ジョンソン」


>>手紙のコピー


この写真を切り抜いて、ベッドのお子さんの横に置いていてご覧なさい。


いま、すぐ。 お試しください。お嫌じゃなかったら。あなたの赤ちゃんの隣に置いて、これで遊ばせてごらんなさい。
できない?
それじゃあ、あなたは、下院議員の一部の連中よりもずっと豊か想像力をお持ちなのです。
彼らは「生きた」ねずみが心配すべきものだなんて考えようともしないのです。
それが、私たちの貧民街のねずみ退治計計画の補助金4,000 万ドルを、私たちの都市、州に提供してくれるはずの法案をつぶした時に、彼らが笑った理由です。
しかし、もっと恥ずべきは、彼らがその法案自体にたいしては投票すらしなかったということです。彼らは、その法案を審議するかどうかを決める動議に投票したのです。
賛成176標、反対207票。
もちろん彼らには彼らなりの理由があるのです。財政上の問題という口実がいつも使われます。この国には4,000万ドルもの余裕はないと感じているのです。
毎年、ねずみの被害が8億ドルにものぼるということを教えられてもです。どっちが経済的でしょうね?
そして、 また、ねずみが歴史上の将軍全部よりも多くの人間を殺しているとも教えられているのです。毎年、幾千人もの子どもがねずみに噛まれ、その中には死んだり、傷ついたりした子もいます。
社会的には筋がとおると思いますか? とくに家畜、敷物をねずみから守るために連邦予算をすでに使っているというのに。
たぶん、あの連中は夜、壁の内側で走りまわるねずみの足音が聞こえる壊れかけた家に住んだことはないのでしょう。
電灯を急につけると、台所の床を走って、流しの下かなんかの穴に逃げ込むねずみを見たことがないのでしょう。
たぶんね。しかし、私たらの多くは幸運にもそれを見たことがあるのです。だからって、私たらが見たことのない人びとを無視していいってことにはならないでしょう。
この国には9,000万匹ものねずみがいます。スラムの中のヤツらのすみかが壊さたら、ヤツらはどこいくと思いますか?
最高のホテルやレストラン、近代的なアパート、ビル、地下室、 ガレージなどへ移動していくのです。どんなところへでもはいって行きます。そこでますます繁殖していくでしょう。
ですから、下院議員が、ねずみを除去することに反対の投票をしたことは、私たちみんなに反対の投票をしたことになるのです。貧しい人びとにたいしてだけではないのです。私たちみんなに対してなんです。
幸運にも、まだ希望は残っています。
投票結果は207対176でした。ということは、もしあの法案が再び提出されたときに16人の議員に投票を変えさせることができたなら、192対191となり、法案は可決されるのです。
下欄に、だれがどっちに投票したかという下院議員のリストがあります。
あなたの議員が、賛成としていたら彼を支持していること、そして反対投票した連中を説得してくれることを願っていることを手紙で知らせてやりましょう。
もし、あなたの議員が反対投票をしていたのでしたら、手紙を書いて彼がその一票を変えることを望んでいるといってやりましょう。
あて先は光栄ある誰某下院.ワシントンDC.
ねずみに人間と同等の権利を与えるのは、もうやめる時です。


チャック・コルイ氏とのインタヴュー
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