創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(442)デラ・フェミナ著『広告界の殺し屋たち』(6)


【用法】うまく使えば[クリエイティビティ]は、もっと経済的に、もっとたくさん売ることができるはずだからです。うまく使われた[クリエイティビティ]は、広告の働きを10倍にもします。(「ウィリアム・バーンバック氏、広告はアートである」(1))( )の数字をクリックで全文が読めます。

(chuukyuu補)。DDB設立13年目に、AAAAの総会にスピーカーとして招かれたバーンバックさんがこのタイトルを掲げたために、「アート派広告代理店」のレッテルを貼られた。今にして、ためにしたレッテル貼りの気配を感じる。




原題『真珠湾をくれたすばらしい民族から』)の抜粋 誠文堂新光社 西尾忠久・栗原純子訳 1971.4.30)


第2章 「スピーディー・アルカ・セルツァー」の死(6)


目的地広告に次いで楽なキャンペーンは公共サービス広告である。

誰でも公共サービス広告ならすぐれたものがっくれる。

公共サービスーキャソペーンは毎年多くの賞をかっさらっていく。

それには理由があるのだ。

主題がドラマチックな広告に適しているからである。

皮肉にとられては困るが、ちょっと考えてみるがいい。

飢えた人、病人、両親を亡くした韓国の子どもたち、アパートを貸そうとしない連中、ベトナム原子爆弾などについて語り、ニューヨーク市のねずみやゴキブリについての広告で傑作をつくれない人がいるだろうか?

職を求めて私のところへやってくる若者たちに、私は公共サービス広告を10本書かせてみる。

若者たちは内容はどんなものかと尋ねる。

そう、この世界では飢えている人が常に存在する。

ヨーロッパの子どもたちは飢えてはいないかもしれないが、ビアフラでは飢えている。

世界には必ずどこかに飢えている人がいるのだ。

ある若者はこんな広告をつくった。

缶ビール1本にはビアフラの子どもが1週間に摂取するよりも多いたんぱく質が含まれています』 

こんな広告を持ってオフイスヘやってきた若者もいた。

さいふの中に心臓病の治療法があるはずです

私は前にスクール・オブ・ビジュアル・アーツで教えていたが、教え子の一人が反ベトナム戦争広告でこんなヘッドラインを書いた。

あなたの息子さんは、重傷を負うでしょうか? 軽傷ですむでしょうか?


ヤング&ルビカムもニューヨーク市の都市連合のキャンペーンで『関心を持ちましょう(Give a damm)』というすぐれた仕事をした。

すばらしいできである。

アパートを借りようとする黒人を見せた名作コマーシャルをつくった。

アパートを見せている家主はトイレの水を流そうとするが、うまくいかないので「15セントの小さな金具をつければ直るだろ」と言う。

そして黒人をせきたてる。「さあ、借りるか、借りないか? 借りたいって待っている人が多勢いるからな」
とても力強いできであった。

Y&Rのエド・エルゴート(コピー)氏とトニー・イジドー(AD)氏による公共広告



ギブ・ア・ダム「家主」TV-CM


家主「このアパートを見つけた君はツイてるよ。 5階だから歩いて登ってくるのにひどく疲れることもないし、しかも街の騒音もここまでは届かないからね。
これが居間。この前、ここにいた女性はあまり部屋を大事にしすぎるということはなかった。
ここが台所。窓が2つある。それにたっぷりはいる冷蔵庫もついているよ。
よいオーブンだろう。寒くなると調法だよ。
さあ、ここがバスルーム。これに15セントの小さな座金をつければ直るさ。角の金物屋で売ってるよ。
さらに手ごろな広さの寝室。彼女はここにベッドを三つ入れていたよ。
これで全部だ、この部屋にはいりたいっていう者はほかにもたくさんいるんで、 今、返事がほしいんだが? はいるかい、それともやめとくかい?」


「借りるよ」


アナ「ノンホワイトの約半数は標準以下の家に押し込まれています。ニューヨーク都市連合を通じて彼らを助けることもできるのです。仕事をください。寄付してください。せめて関心を払ってください」


このキャンペーンをめぐっての、エルゴート氏とのインタヴューは、近く掲示の予定です。

DDBのチャック・コルイ(コピー)氏とバート・スタインハウザー(AD)によるボランティア広告



この写真を切り抜いて、ベッドのお子さんの横に置いていてご覧なさい。


いま、すぐ。 お試しください。お嫌じゃなかったら。あなたの赤ちゃんの隣に置いて、これで遊ばせてごらんなさい。
できない?
それじゃあ、あなたは、下院議員の一部の連中よりもずっと豊か想像力をお持ちなのです。
彼らは「生きた」ねずみが心配すべきものだなんて考えようともしないのです。
それが、私たちの貧民街のねずみ退治計計画の補助金4,000 万ドルを、私たちの都市、州に提供してくれるはずの法案をつぶした時に、彼らが笑った理由です。
しかし、もっと恥ずべきは、彼らがその法案自体にたいしては投票すらしなかったということです。彼らは、その法案を審議するかどうかを決める動議に投票したのです。
賛成176標、反対207票。
もちろん彼らには彼らなりの理由があるのです。財政上の問題という口実がいつも使われます。この国には4,000万ドルもの余裕はないと感じているのです。
毎年、ねずみの被害が8億ドルにものぼるということを教えられてもです。どっちが経済的でしょうね?
そして、 また、ねずみが歴史上の将軍全部よりも多くの人間を殺しているとも教えられているのです。毎年、幾千人もの子どもがねずみに噛まれ、その中には死んだり、傷ついたりした子もいます。
社会的には筋がとおると思いますか? とくに家畜、敷物をねずみから守るために連邦予算をすでに使っているというのに。
たぶん、あの連中は夜、壁の内側で走りまわるねずみの足音が聞こえる壊れかけた家に住んだことはないのでしょう。
電灯を急につけると、台所の床を走って、流しの下かなんかの穴に逃げ込むねずみを見たことがないのでしょう。
たぶんね。しかし、私たらの多くは幸運にもそれを見たことがあるのです。だからって、私たらが見たことのない人びとを無視していいってことにはならないでしょう。
この国には9,000万匹ものねずみがいます。スラムの中のヤツらのすみかが壊さたら、ヤツらはどこいくと思いますか?
最高のホテルやレストラン、近代的なアパート、ビル、地下室、 ガレージなどへ移動していくのです。どんなところへでもはいって行きます。そこでますます繁殖していくでしょう。
ですから、下院議員が、ねずみを除去することに反対の投票をしたことは、私たちみんなに反対の投票をしたことになるのです。貧しい人びとにたいしてだけではないのです。私たちみんなに対してなんです。
幸運にも、まだ希望は残っています。
投票結果は207対176でした。ということは、もしあの法案が再び提出されたときに16人の議員に投票を変えさせることができたなら、192対191となり、法案は可決されるのです。
下欄に、だれがどっちに投票したかという下院議員のリストがあります。
あなたの議員が、賛成としていたら彼を支持していること、そして反対投票した連中を説得してくれることを願っていることを手紙で知らせてやりましょう。
もし、あなたの議員が反対投票をしていたのでしたら、手紙を書いて彼がその一票を変えることを望んでいるといってやりましょう。
あて先は光栄ある誰某下院.ワシントンDC.
ねずみに人間と同等の権利を与えるのは、もうやめる時です。


参照
チャック・コルイ氏とのインタヴュー
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DDBのデビッド・ライダー(コピー)とスポック博士自身による文章、レン・シローイッツ(AD)によるSANE---核使用規制全国委員会の広告



スポック博士は憂慮しています


もし、あなたがスポック博士の本で子どもを育てたことがおありなら、博士があまり小さなことにはこだわらない方だということをご存じと思います。
博士は、勤め先のオハイオ大学から、大気圏内核実験の再開について、つぎのようなメッセージを送ってきました。
「私は憂慮しています。
過去の実験の影響だけでなく、果てしない将来の実験の見込みについてもです。
実験が重なるにつれて、子どもにたいする悪影響もふえます…米国でも、世界の国々でも。
こんなことをする権利がいったい誰にあるというのでしょう。
そんなことは政府に考えさせろ、という人もいるでしょう。その人たちは政府がこれまでの歴史の中で犯してた悲劇的な大間違いのことを忘れているのです。
また、よりすぐれた軍備が問題を解決してくれるという人もいます。その人たちは正義の強さを信じている人びとを軽蔑します。
その人たちは、あのかよわい理想主義たちが鉄の布となってインドからイギリス人を追い出したことを忘れているのです。
どの道をとっても、危険はあります。もし、将来に横たわる大きな危険をすこしでも少なくする希望があるならば、私はあえて今日の危険をとります。
もし、私が将来、何かの誤算で滅ぼされることがあるなら、私は、幻の要塞に座ってなすすべもなくただ敵を非難している時よりも、世界の協力を求めるリーダーシップをとっている時に殺されたいとおもいます。
モラルの問題としても、私はすべての国民が自分自身の考えを持つ権利だけでなく責任も持っていると信じます。

                 医学博士 ベンジャミン・スポック」


スポック博士は、核使用規制全国委員会のスポンサーにーなりました。
以下、SANE(核使用規制全国委員会)が何を表すかという簡単な説明とほかのスポンサーを列記。


参照】]デビッド・ライダー氏とのインタビュー
(12)

スカリ・マケイブ・スロープス社のエド・マケイブ(コピー)氏による大気清浄化100万人市民団体のためのヴォランティア広告



あすの朝起きぬけに思いっきり、深呼吸してどらんなさい。
きっと吐き気をもよおしてしまいますから。


新鮮な空気を深呼吸することは、日常生活の中でもっとも満ち足りた経験であるといわれています。
しかし、ニューヨークで探吸呼するのは、病気になるとはいわないまでも、最高に胸が悪くなる体験であるともいえます。
それほどニューヨーク周辺の空気は汚れきっているのです。
この私たちの「すてきな町」では、ほとんど消え失せようとしている晴れた日を、空気はさまざまな毒物で汚染しているのです。
普通の日にもあなたは、ご存じのように致命的な一酸化炭素、石をも腐触させる亜硫酸ガス、第一次大戦催涙ガスとして使われたアクロレイン、ねずみに皮膚ガンを発生させるベンゾビリン、そして健康ならピンク色をしている肺を真っ黒にしてしまう、ものすごい量の煤煙とほこりを吸い込んでいるのです。
ついには、このニューヨークの空気の不快さが、あなたを打ちのめすでしょう。汚染した空気は、目を刺激し、胸を傷め、鼻水を流させ、頭痛の原因となり、のどをただれさせます。また、大気汚染は、このごろやる気をなくしてしまう「灰色の日々」にも関係があり、あなたの精神衛生にも影響しているかもしれません。あなたがしょげやすいたちの人なら、汚染した空気に長く身をさらしていることが、よい結果を生みはしません。
最悪の場合、汚染した空気はあなたを殺すことだってできるのです、今までのところ、空気の汚染によって起きる、あるいは悪化すると信じられている病気には、肺ガン、肺気腫、急性気管支炎、ぜんそく、心臓病などがあります。
1953年と1963年の大気汚染のひどかった期間に、ニューヨークで600人もの人が死んだといわれています。長年にわたる大気汚染の結果として、このほかにどれだけ多くの人が死んでいるかは、想像にかたくありません。
ニューヨークの大気汚染の犯人はだれでしょう? 実質的には、みんなです。アパート、工場、自動車、バス、ごみ処理場など、ものを焼くすべての場所から煙が噴出されています。
けれども、この問題を引き起こしているのが誰かということをあぱくのが、この広苦の目的ではありません。あなたを怒らせて、この空気汚染を止める手助けをしようという気特になっていただくのが目的です。
あなたは、あなた自身は、空気汚染に関して何ができるのでしょう? たいしたことはできません。しかし、100万人の人びとが腕を組めば、かなりのことはやれます。
私たちは汚染された空気を十分味わったニューヨーク市民100万人の名前と住所を知りたいのです。
その名前は、ニューヨーク市民は空気汚染に全然関心を払わないといい張る人びとにたいする武器として使われることになるでしょう。
私たちが100万人の名前を獲得できるなら、ニューヨーク市民はもっと煙の少ない燃料、空気汚染法のよりよい執行、もっと能率的な廃品の処理法などの費用を出そうとしない、などとは誰もいわなくなるでしょう。
これらの経費は安いのです.年に2,3ドルですみます。
汚染された空気はもっとずっと高くつきます。それは最高の代価をも払わせることができるのです。


参照】]エド・マケイブ氏とのインタヴュー

DDBのデビッド・ライダー(コピー)氏とレン・シローイッツ(AD)氏によるマッカーシー上院議員のヴォランティア選挙広告



なんのために?


なんのためだか、お話ししましょう。
なんのためでも、まったく、なんのためでもないのです。
高い位についている人たちは、自分たちがひどい過ちを冒していることさえ認めたがらないほど、器が小さいからです。
過ちと認めながらも、やってしまったのだから、ともかく体面を保たねば、という人がいるのです。
政府のスポークスマンは、この戦争についての真実を、何度も何度もごまかしているからです。
新聞の見出しを書く人は、たくさんの人が殺されていることをまるでバスケットボールの試合のように、嬉しそうにネタにするからです。
サイゴンの軍隊は、自分たちの国の人間が戦おうとしないので、われわれの軍隊に支援してもらわなければならないからです。
あの不幸な国にいる暴利をむさぼる商人たちは、われわれのお人よしを笑いながら、われわれのお金をスイスの銀行に貯めこんでいるのです。
こいういことのためにわれわれの国の若者を徴兵し、そして殺したり殺されたりするために、よその国へ送りこんでいるのです。
お父さん、お母さん…彼らが、あなたの息子さんにこんなことをやらせるのを、どうして座って見ていられるのですか?
若者へ…どうして彼らがあなたたちを、まるでサラミのように、たとえば、学校に行ってない人たちに対しては学生を、在学生に対しては卒業を、そして予備兵に対しては徴兵を受けた者…というように切り刻むのを見過ごしているのでしよう?
納税者へ…あなたがたはいったいどんなことがあった時に立ち上がり、あなたがたの税金をまるでそうするのが彼らの仕事であるかのように無駄使いしているワシントンの紳士たちに、もうたくさんだと抗議をするのですか?


(中略)


あなたは、「でも、一個人になにができる」とおっしゃるのですね。
お答えします。
「なんでもできるのです」
なぜなら、政治家が大衆をもっとも怖れ、もっとも尊重するのは、大衆が立ち上がった時なのです。そしてその時には、彼らは誤りを冒しません。


(以下、マッカーシー議員の推薦人リスト)


参照】]デビッド・ライダー氏とのインタビュー
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