創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(482)シーヴァス・リーガルの広告(29)

3,4日前に、40年前の1969年5月に来日したDDBのバーンバックさんが、日経ホールで行ったスピーチが載った『日経広告手帳』5月15日号を探していると書いたところ、転載はともかくとして、現物のコピーは、オフィスの柴野雅一くんと佐藤真衣さんのチームによって早ばやと実現しました。
これには、日経クロスメデイア管理本部企画部・谷島春樹さんのお手配をいただいたとのこと。改めてお礼を申しあげます。
幸い、バーンバックさんは、同スピーチで、シーヴァス・リーガルのキャンペーンの立ち上がり---1962年5月12日号『ニューヨーカー』誌に載せたシーヴァス・リーガルの瓶を変えたマヌケはだれ?について、こんな秘話を開陳しています。




ちょうどDDBへアカウントが移ったころに、シーヴァス・リーガルは、以前の黒め色の濃い瓶を透明な瓶に変えたのです。
米国の大衆は軽めのスコッチを好みますが、色の濃い瓶は重い飲み物を連想させるからです。
そこで私どもは考えました。シーヴァス・リーガルは新しい瓶にはなりました---こんなのは誰でもやることです。
しかしながら、前にも言った原則、興味をもって、人の目を見張らせる広告をやるためには、そのような当たり前の言い方ではだめだなんです。

瓶を変えたことに関していろいろな苦情の手紙も来ていたので、そのなかからアイデアをとってやったのが、

「シーヴァス・リーガルの瓶を変えたマヌケはだれ?」

これをクライアントはいやだといいました。なぜなら、瓶の色を変えたのはクライアントだからです。それでちょっと字句を変えてくれないかと---「シーヴァス・リーガルの瓶を変えた天才は誰?」にしてくれと。

そこで言いました。
「天才といったらダメだ。客を見下していることになる。マヌケといえば消費者のほうは優越感をもって買ってくれる}

それでこの広告が掲載できたわけです。
このようなヘッドラインをつけることによって、どんなウィスキーが中に入っているかというボディーコピーに自然につながった広告になったわけです。

これが最初に、「新しい瓶に入りました、そして軽くなりました」とやったのでは人は見てくれなかったでしょう。

ここで結果をいうと、最高のスコッチの売り上げは米国では落ちているが、その間にこの広告を始めてから、シーヴァス・リーガルの売り上げは3倍に上がりました。




製品にしっかりした人格(バーソナリティ)をつけることにより、その性格の好きな人がその銘柄のファンになっていくのです。ファンづくりのための広告。生身の友人づくりの努力に似ています。
上掲の広告「シーヴァス・リーガルの瓶を変えたマヌケはだれ?」の全訳文は、このブログ5月29日に掲載ずみ
                                            ↑クリック


次からパーティでは、シーヴァス・リーガルを供するなら、強い感銘を与えるように、
たっぷりふるまう---。


1977.11.28 『ニューヨーカー』




Next time you serve Chivas Rigal at a party, do something really impressive.
Serve enough.

November 28 1977 The New Yorker


おやじさんをラクに。


確かに、こんなデラックスな名入りのハーフガロン用クレードルがあると、おやじさんはシーヴァス・リ-ガルを手放しづらくなるかもしれませんね。
でも注ぐのは楽になります。
だから、ご希望の方は、6.95ドルの小切手とネームプレートに彫ってほしい人の名前をご記入のうえ、シ-ヴァス・リーガルまでお送
ください(住所略)。
それもできるだけお早目に。
さって、ハーフ・ガロン入りシーヴァスがふさわしいおやじさんです。自分でボトルを特ちあげさせるということなどさせたくはない
はありませんか。


art director : Jim Scalfone
copywreiter: Larry Sillan

1976.6.14 『ニューヨーカー』




Less work for father.


Admllledly, our peronalized, deluxe, half-gallon pouring stand won't make it easier for a father to party with his Chivas Regal.
But it wi11 make it it easier for him to pour it.
So if you'd like one, just send a check for $6.95, together with the name you'd like imprinted on the name plale, to Chivas Bega! Cradle, P.O. Box 5061. Smithtown, N.Y. 11787.
and do it as soon as you can.
After all, any fathcr who deserves a half-gallon of Chivas shouldn't haveC to life the bOttle by himself.


June 14, 1976 The New Yorker


訳なし


1976.11.29 『ニューヨーカー』


For the surprise of his life:
leave a cradle on the doorstep.


「君がシーヴァス・リーガルを飲(や)る
なんて知らなかった」


酒は何を飲(や)るか聞いてみて、スコッチと答える。
そこで、例のボトルを出すと、きっとその人はあなたの目の前で、シーヴァス党に早変わり。
自分の家ではスコッチ党で、知人の家ではシーヴァス党に変わる人のなんと多いこと、驚くほどです。
ねばり強く闘いましょう。
いつかきっと、彼の家を訪れた時、彼もあなたと同じにシーヴァス党になっていることでしょうから。
今日はあまんじて。あなたはそれに値いします。
その日が来たら、彼のシーヴァスを心おきなく飲んで。
あなたには権利があるのですから。


1966.12.3『ニューヨーカー』




"I didn't know you were a Chivas drinker."



Ask him, and he'll tell you he's a Scotch drinker.
Put out that bottle, and right before your eyes, he turns into a Chivas drinker.
It's amazing how many people are Scotch people in their house and Chivas people in yours.
One day you'll be at his house and it'll turn out he's become a consistent Chivas man, like you.
Take your bow. You deserve it.
Take his Chivas.
You deserve that, too.



December 3, 1966 The New Yorker