創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(501)Best 10 ads of Chivas Reagal that chuukyuu chose (1)


11月20日(金曜日)夕刻6時だか7時からだか、東京コピーライターズクラブで、[1960s〜70sのクリエイティブ革命はなんだったのか]とでも題したスピーチをする予定です。そのとき、ディスプレイに映す5つばかりのキャンペーンの画像を、試作しています。それを10日間ほど順次。その日その日のタイトルは上記の英文です。


英文なしの『5人の広告作家』がつづき、英語国からのアクセサーの欲求不満を解消するためもあります


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シーヴァス・リーガルの瓶を変えたマヌケはだれ?


シーヴァス・リーガルの社員は、最近瓶を変えたことで、なんらかの抗議がくるのは覚悟していました。
こてんこてんにやられることさえ、いとわないつもりでした。
確かに最初は無茶なことのように思えました。
どうしてクラシックな瓶を変えるのか?
風格のあるダーク・グリーンの瓶ですよ。そしてウォルター・スコット卿時代からのものらしい古色蒼然たるラベルと。
「瓶型を変えなかったのが不思議なぐらいだ」
とあるシーヴァス・リーガルのファンの方がつぶやいていらっしゃいましたっけ。
そうなんです。瓶型は変わっていません。
あいかわらずのずんぐりで、気どっています。
そんなことより大切なこと。中味のスコッチもあいかわらずのシーヴァス・リーガルなのです。
12歳より一日として若くはなく、「うまくて,時代を経たウイスキーは天国の酒」というやつです。
では、どうして瓶を透明な硬質ガラスに変えたのでしょう? どうして古いラベルを明るくしたのでしょう?
それ、いま私たちが住んでいる世が混乱の世であるからです。
小さな混乱の一つに、「軽い」スコッチとはどういうものであるかということがあります。
「軽い」スコッチは、色も淡いと考えていらっしゃる人がいらっしゃいます。色は軽さとは全く無関係なのです。
「軽い」スコッチとは「薄められた」ウイスキーだと考えている人もいらっしゃいます。いいえ、そうではないのです。ほとんどのスコッチは86度です。
本当の意味での軽さとは,スコッチらしい「口当りのよさ」をいうのです。
軽いスコッチは水のようにスーツとのどを降りていきます。あるいは蜜のように。「くちびるのかみしめ」も起こりません.息がつまることも、たじろぎも、身ぶるいも起こりません。
たくさんの人がシーヴァス・リーガルがいちばん口当りがよい(あるいは、いちばんライトな)スコッチだと考えていらっしゃいます。
なぜ?
1786年以来、シーヴァス・リーガルはグレンリベットのソフトなハイランド・ウイスキー(一級のスコッチ・ウイスキー)でつくられています。
エイジングには、あいかわらずスペインから法外な価格のシェリーの樽を輸入して熟れさせています (1樽35ポンド以上かかります)。
あいかわらず、シーヴァス・リーガルは透明な琥珀色をしています。
この色なんです、瓶を変えることになったのは---。
シーヴァス・リーガルを試したことのない人がたくさんいらっしゃいます。それは、この透明な琥珀色が見えなかったからです。
すてきな瓶ではありましたが、古いダーク・グリーンの瓶がシーヴァス・リーガルをダークに見せていたのです。
それで「重い」と言っていた人もいらっしゃったのです。
レストランやバーでシーヴァス・リーガルを見たことのない人もたくさんいらっしゃいました。
かつてのダークな瓶とラベルが隠していたせいです。
これからは大丈夫。
新しく透明になった瓶のおかげで、なにものにも邪掩されないシーヴァス・リーガルの真の姿がはっきり見えます。
そして暖かく歓迎されてもいます。
とまあ、こんなふうに考えていただけば、そんなに間抜けでもないでしょう?
さすが---といっていただきたいぐらいのものです。


1962.5.1 『ニューヨーカー』




What idiot changed the Chivas Regal bottle?


When the Chivas Regal people changed their bottle recently, they were ready for some protests.
Not a storm of outrage.
At first, it does seem outrageous.
Why change a classic bottle?
A magnificent dark green bottle.
And an antique shield that seemed to come out of Sir Walter Scott.
"It's a wonder they kept the shape," muttered one Chivas Regal fan.
True, the shape is the same.
Still squat. Still jaunty.
Most imporrant, the Scotch inside is still the same Chivas Regal.
Not a day younger than 12years. "Goode olde whiskie is a heavenly spirit."
Then why change the bottle to clear flint glass? Why lighten the antique shield?
Because we live in an age ofconfusions.
One minor confusion is "light" Scotch.
People think of "light" Scotch as light in color. Color has' nothing to do with "lightness."
People think of "light" Scotch as "weakened" whisky. Not so.
Almost all Scotch is the same 86 proof.
True lightness is actually the "smoothness" of Scotch.
A light Scotch will go down as easily as water. Or honey.
No "back bite." No gasp. No wince. No shudder.
Many people consider Chivas Regal the smoothest (or lightest) Scotch in the world.
Why? ?
Since 1786, Chivas Regal has been made with the "soft" Highland Scotch of Glenlivet. (This is prize Scotch whisky.)
Extravagant sherry casks are still brought from Spain for ripening it. (Each costs over £35.)
Chivas Regal is still the same clear gold color it has always been.
This color is what warrants changing the bottle.
Many people have never tasted Chivas Regal, because its clear golden color never showed.
Handsome though it was, the old dark green bottle made Chivas Regal look dark.
Som people translated this as "heavy.
Many people never saw Chivas Regal in a restaurant or bar.
The old dark bottle and label almost hid it.
No longer."
The new clear bottle offers an uninterrupted view of Chivas Regal.
And a warm welcome.
Think of it that way, and it's not so idiotic, is it
It's kind of brilliant.


”New Yorker" May 12, 1962

40年前の1969年5月に来日したDDBのバーンバックさんが、日経ホールで行ったスピーチが載った『日経広告手帳』5月15日号より。


       ☆   ☆   ☆


ちょうどDDBへアカウントが移ったころに、シーヴァス・リーガルは、以前の黒め色の濃い瓶を透明な瓶に変えたのです。

米国の大衆は軽めのスコッチを好みますが、色の濃い瓶は重い飲み物を連想させるからです。

そこで私どもは考えました。シーヴァス・リーガルは新しい瓶にはなりました---こんなのは誰でもやることです。

しかしながら、前にも言った原則、興味をもって、人の目を見張らせる広告をやるためには、そのような当たり前の言い方ではだめだなんです。

瓶を変えたことに関していろいろな苦情の手紙も来ていたので、そのなかからアイデアをとってやったのが、

「シーヴァス・リーガルの瓶を変えたマヌケはだれ?」

これをクライアントはいやだといいました。なぜなら、瓶の色を変えたのはクライアントだからです。それでちょっと字句を変えてくれないかと---「シーヴァス・リーガルの瓶を変えた天才は誰?」にしてくれと。

そこで言いました。

「天才といったらダメだ。客を見下していることになる。マヌケといえば消費者のほうは優越感をもって買ってくれる」

それでこの広告が掲載できたわけです。

このようなヘッドラインをつけることによって、どんなウィスキーが中に入っているかというボディーコピーに自然につながった広告になったわけです。

これが最初に、「新しい瓶に入りました、そして軽くなりました」とやったのでは人は見てくれなかったでしょう。

ここで結果をいうと、最高のスコッチの売り上げは米国では落ちているが、その間にこの広告を始めてから、シーヴァス・リーガルの売り上げは3倍に上がりました。




'Nikkei advertisement magazine' May 15
when speech that Mr. Bill Bernbach, DDB of which it came to Japan in May, 1969 40 years ago had done in Nikkei Hall was recorded.


       ☆   ☆   ☆


When the account moved to DDB just, Chivas Regal changed the bottle with thick ..black.. color before into a transparent bottle.


The reason for the bottle with thick color is that a heavy drink is associated though the general public in the United States likes light Scotch.


Then, we thought. Chivas Regal became a new bottle. ---Such [noha] everyone is done.


However, it is such a natural expression and [hadamedanandesu] to do the advertisement to have the principle and the interest that has been said before, and to watch person's eyes.


Because letters of various complaints had come for having changed the bottle, having taken the idea from the average :.


"What idiot changed the bottle of Chivas Regal?"


This was said that the client was unpleasant.
Because it is a client that changed the color of the bottle.
And, whether you will change words and phrases for a moment---When it is necessary to make it to "What the genius who changes the bottle of Chivas Regal?".

Then, it said.

It is not .... good when saying the genius. The guest will be looked down on.
The consumer has the superiority complex and buys it as for idiot.


And, this advertisement was able to be inserted.


What kind of whisky was on the inside or it became advertising naturally connected with the body copy by applying such a headline.


When this was "It entered a new bottle and lightened" the first, the person was not externals in doing.


Sales of Chivas Regal went up to three times after having started this advertisement between those though sales of highest Scotch had dropped off in the United States when the result was mentioned here.


       ☆   ☆   ☆




もう半分も飲んだのか、と主人側。
まだ、半分もあるじゃない、と客。


1975.5.26 『ニューヨーカー』




To the host it's half empty.
To the guest it's half full.


”New Yorker" May 26, 1975

A/D Charles Gennarelli
C/W Larry Levenson

同巧のアイデアでも、目先き変えられる---


こちらの瓶は半分       こちらの瓶は半分
しか残ってない       も残っている

もしこれがあなたの瓶だとなると、あなたは、
多分、半分しかのこっていないと感じる。

しかるに、友人宅を訪れて、その瓶が同じ状態だと、
あなははまだ半分も残っていると安心する。


1970.9.26『ニューヨーカー』


優美なデカンターへ移さないほうが
より優美な場合もありますよね。


【メモ】[DDB NEW]1973年9月より
art director Bill Harris
copywriter  Peter Murphy


1974.12.2 『ニューヨーカー』




Sometimes it's more elegant not to use
an elegant decanter.


December 2, 1974 The New Yorker


もちろん、シーヴァス・リーガルなしでも生きてはいけます。
しかし、そんな生き方が楽しいといえましょうか。


1978.2.28 『ニューヨーカー』

February 28,1978 The New Yorker


父の日は、おじいちゃんの日でもあります。


1978年6月12日 『ニューヨーカー』


Father's Day is also Grandfather's Day.


June 12, 1978 The New Yorker


こう、考えることにしたら。
シーヴァスが空になってしまったのではなく、
友だちが数人増えたのだって。


1969.3.15 『ニューヨーカー』


C/W Mike Mangano
A/D Mike Lowlor


明日に、つづく。


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