創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(473)シーヴァス・リーガルの広告(20)


シーヴァス・リーガル(シーグラム社)が広告の扱いをDDBに移したのは、1961年末。キャンペーンが始まったのは、翌年からのようです(米国のアカウントの移動だと、新規に請けたところは、ふつう、キャンペーン開始準備に3ヶ月をあてます)。


DDBへVWビートルのアカウントが入ったのは、1959年春。第1弾目の広告が現れたのは同年の8月第1週の『ライフ』誌でした。このときから、米国の広告は変革期を迎えたのです。

シーヴァス・リーガル(シーグラム社)も、VWビートルに刺激されて、あのような広告を求めました。

シーヴァス・リーガルの広告は『ニューヨーカー』誌から始まったように思います。第1弾は、2009.5.29に紹介した、3ヶ目の「シーヴァス・リーガルの瓶を変えたマヌケはだれ?」です。1962年5月12日号の『ニューヨーカー』に掲載されました。『ニューヨーカー』誌は、高級誌です。つまり12年もののブレンド・スコッチは、ほかと違うということを言いたかったための媒体選択だったのでしょう(ちなみに、米国ではウィスキーなどはTV広告を禁止されています。ビールも飲むシーンは禁止)。


きょうの2ヶ目も1962.10.20号の『ニューヨーカー』ですから、初期のアピール・ポイントの一つ---[ライトさ]を主張しています。
1ヶ目は、[ライトさ]のコンパリゾン(挑戦)広告です。


もう一つの初期アピール・ポイントは、[2ドルの価格差]---こちらは今週末あたりに紹介します。


まあ、まあ、紳士措君。
私たちの誰かが
うそを言っているんでしょうから。


それとも、皆なが皆な本気なのかも。
きっとどのスコッチ・メーカーも「軽い」というのをそれぞれ異った意味で使っているんでしょう。
そんな言葉なのです。
少なくとも私たちの黒い霧だけは晴らしておきましょう。
私たちの「軽い」というのは、口当りの良いことです。
口当りの良さとはどんな意味なのか知るには、お近くのバーへ行き、いつものスコッチをストレートで飲ってください。
それから一滴一滴12年の間熟成されたシーヴァス・リーガルを同じように飲ってください。
きっと違いがわかるはず。
(それにはシーヴァスの年齢が大きく関係しています。
それから私たちがつかっているグレンリベットの第一級ウイスキーも。)
私たちはシーヴァス・リーガルは口当りがよいと言いました。
でもどんな風に表現されようと自由です。
軽い、芳醇、まろやか、ソフト、やさしい、あるいはただうまいとでも。


1964.5.9 『ニューヨーカー』



Come, come, Gentlemen.
One of us
has to be kidding.


And then again, maybe not.
Maybe every Scotch-maker uses "light" in a different sence.
It's that kind of word.
Let us at least lighten our own darkness.
What we mean by "lightness" is smoothness.
To discover what we mean by smoothness, go to your local bar, order a shot of your regular Scotch, and sip.
Then follow the same procedure with a glass of Chivas Regal, every drop of which is aged 12 years.
You'll detect a difference.
(The age of Chivas has a lot to do with it. So have the prize Glenlivet whiskies we use.
We say Chivas Rigal is smoother.
But please feel free to call it lighter, mellower,
rounder, softer, gentler, or just plain better.


May 9, 1964 The New Yorker


スコッチ嫌いなのに、飲むのはなぜ?


スコッチを飲(や)る人で、その味覚に耐えるよう訓練している人がたくさんいます。
どうして?
スコッチは上品な酒、社交的な酒だからです。
最近カクテル・パーティを開いたことがある方なら、スコッチの要望がどんなに強いかご存じでしょう。
オン・ザ・ロック、ソーダ割り、水割り(他のはまるで非文明的であるかのよう。)
不幸なことに、多くの人がスコッチを注文して「耐えているというのが現実です。
スコッチを楽しめたら、どんなにいいでしょう。
シーヴァス・リーガルならきっと楽しめます。
シーヴァス・リーガルをおいしく思う人はたくさんいらっしゃいます(あるいは、ぶっきらぼうに「世界一のスコッチ」と)。
シーヴァス・リーガルは蜂蜜のように何の抵抗もなくのどをおりていきます。なぜ?
「舌にピリっとくる刺激」がまるでありません。(スコッチがのどに触れたとたん、 たじろいだり身をすくめたりする、あれです。)
シーヴァス・リーガルは12年より1日として若くありません。
グレンリベットのスコッチです。
ハイランドの一級「ソフト」スコッチでできています。
もうひとつ秘密。
熟成するのに、あるいは「酒をめあわせる」のに、スペインのバレンシアからはるばる樽をとり寄せています。
法外な値段で。(1樽が35ポンド以上。)
スコッチに耐えている人たちのとるべき道は、2つ。
シーヴァス・リーガルを飲んでみるか。
スコッチをあきらめるか。


1962.10.20 『ニューヨーカー』




Why do people who hate
Scotch drink it?


Many people who drink Scotch train themselves to endure the taste of it.
Why?
Scotch is the polite thing to drink. The social drink.
If you've given a cocktail party recently, you'll know how strong the demand is for Scotch.
On the rocks. With soda. Or water. (Anything else is considered uncivilized.)
The unhahppy fact is tha that thousands of people order Scotch and simply "suffer" it.
How much more sensible if they could enjoy it.
There is a strong possibility they would enjoy Chivas Regal.
Many people find Chivas Regal delicious. (Or, bluntly, "the best Scotch in the world.")
Chivas Regal goes down as smoothly as honey.
Why?
It is entirely free of "back bite." (When Scotch hits your throat, you may possibly wince or shudder. This is "back bite.")
Chivas Regal is never less than 12 years old.
It's made with Glenlivet Scotch. This is prize Highland "soft" Scotch.
Another secret.
Casks are brought all the way from Valencia, Spain, for ripening or "marrying the spirits."
Quite an extravagance. (Each cask costs over £35.)
To the people who merely endure Scotch, we suggest one of two things.
Either try Chivas Regal.
Or give up Scotch.


October 20, 1962 The New Yorker