(472)シーヴァス・リーガルの広告(19)
シーヴァス・リーガルのシリーズを眺めていて、不思議に思うことがあります。
今日の、2ヶ目の広告「ラベルにこんな文字が記されているからという理由だけだったら----」の「$」の上方に、ライオンとユニコーン(一角獣)の白馬が英国女王(または王)の楯をサポートしています。
要するに、シーヴァス・リーガルは英国女王の愛飲のスコッチの一つなのです。
しかし、DDBはこれまで一度もそのことに触れていません。英国民には御用達の誇りが伝わっても、王制を経験したことのない米国人には単なる装飾の一種でしかないと考えているのでしょうか。
それとも、この紋章の歴史やありがた味を語るとするときりがないとでも---。
英王室の御用達を下賜できるのは4方---王(または女王)、王妃(または女王の婿。現在はエジンバラ公)、王(または女王)の生母(キングス・マザー、またはクィーンズ・マザー 現在は空席)、王太子(プリンス・オブ・ウェールス)です。
下賜するほうも、されるほうもともに一代かぎり。どちらが逝っても再申請・再審査があり、再下賜あるいは取り消しがおこなわれます。
700余あるこの英王室御用達の店や品を取材・記事にするために、5年ほど英国に通いつめました。ロンドンのハロッズやロブ(紳士靴店)、テームズ河の女王区の白鳥の脚に「女王所属の白鳥」の足環をつける人、ウィンザー城の庭にくる小鳥のための餌店、スコットランドの山奥のバルモラル城の植木師や時計調整師まで、面接取材したのは200人近く。おもしろい話がいっぱい聞けました。
御用達の下賜をうけているのは700件余ですから、4分の1は調べたわけです。
その記事は本になっているかって? いいえ。英国の宮内庁ともいうべきチェンバレンから、本にしたら、取材に応じた勅許状保持者のそれを取り消すとの差し止め状がきてしまったので、雑誌に5年間連載したのみでおわりました。
日本一(もしかしたら世界一)、英王室御用達に通じている仁という無形の栄誉だけで自己満足。
シーヴァス・リーガルの良さがお分かりにならないのなら、
余分の2ドルは無駄かも---。
1964.2.15 『ニューヨーカー』
If you can't taste the difference in Chivas Regal,
save the extra two dollars.
February 15, 1964 The New Yorker
ラベルにこんな文字が記されているからという理由だけだったら、
私たちのスコッチを飲んでいらっしゃらなかったはずです。
1978.10.16 『ニューヨーカー』
If this is all our label says to you,
you obviously haven't tasted our Scotch.
October 16, 1978 The New Yorker