創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(501)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるシーヴァス・リーガルのシリーズ(66)


シーヴァス・リーガルのシリーズを眺めていて、不思議に思うことがあります。
今日の「ラベルにこんな文字が記されているからという理由だけだったら----」の「$」の上方に、ライオンとユニコーン(一角獣)の白馬が英国女王(または王)の楯をサポートしています。
要するに、シーヴァス・リーガルは英国女王の愛飲のスコッチの一つなのです。


しかし、DDBはこれまで一度もそのことに触れていません。英国民には御用達の誇りが伝わっても、王制を経験したことのない米国人には単なる装飾の一種でしかないと考えているのでしょうか。
それとも、この紋章の歴史やありがた味を語るとするときりがないとでも---。


英王室の御用達を下賜できるのは4方---王(または女王)、王妃(または女王の婿。現在はエジンバラ公)、王(または女王)の生母(キングス・マザー、またはクィーンズ・マザー 現在は空席)、王太子(プリンス・オブ・ウェールス)です。


下賜するほうも、されるほうもともに一代かぎり。どちらが逝っても再申請・再審査があり、再下賜あるいは取り消しがおこなわれます。


700余あるこの英王室御用達の店や品を取材・記事にするために、5年ほど英国に通いつめました。ロンドンのハロッズやロブ(紳士靴店)、テームズ河の女王区の白鳥の脚に「女王所属の白鳥」の足環をつける人、ウィンザー城の庭にくる小鳥のための餌店、スコットランドの山奥のバルモラル城の植木師や時計調整師まで、面接取材したのは200人近く。おもしろい話がいっぱい聞けました。


御用達の下賜をうけているのは700件余ですから、4分の1は調べたわけです。


その記事は本になっているかって? いいえ。英国の宮内庁ともいうべきチェンバレンから、本にしたら、取材に応じた勅許状保持者のそれを取り消すとの差し止め状がきてしまったので、雑誌に5年間連載したのみでおわりました。


日本一(もしかしたら世界一)、英王室御用達に通じている仁という無形の栄誉だけで自己満足。


[:W450]


ラベルにこんな文字が記されているからという理由だけだったら、
私たちのスコッチを飲んでいらっしゃらなかったはずです。




If this is all our label says to you,
you obviously haven't tasted our Scotch.


C/W マイク・マンガーノ Mike Mangano
A.D ビル・ハリス Bill Harris
"The NEWYORKER" 1978.10.16


さて、いま、日本で販売されているシーヴァスの瓶に貼られているラベルは、上の広告のラベルとは図案が異なります。紋章らしい絵が描かれ、ダチョウの羽根らしいものがつけられています。
直下の文章は「ウィスキーのプリンス
英王室うんぬんではありません。ロイヤル・ウォラント(勅許状)を下賜されていた醸造所の主が逝去し、その後、下賜の更新を申請し忘れたか、下賜されなかったと類推しています。


まあ、これまで、英王室御用達を重視していなかったDDBのクリエイターたちにすれば、どうってことのない小さな変化なのかもしれません。




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