創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(415)ベントン&ボウルズ社(了)

    『マジソン・アベニュー』誌から(3)


すべての企業が、将来へむかっての長命を望むように、広告代理店だって短命でいいわけはない。打つべき手をぬかりなく打つのが経営者の務めであろう。
さて、B&B社のハンペル氏起用のカンフル注射の結果はどうなったか---これは別の書き手によるリポートを待とう。



(承前)
そうなると、結果としていくつかの注目すべき事態の発生が予想される。
まず第一に、"ハンペルの部下"--- 彼によって訓練されたか、あるいは彼の下で訓練された---を求める要望が高まるだろうということ。
第二にY&Rから移ってきたほかの数人のトップ・クリエイターは、間違いなく素質のある"ミニ・ハンペル"と見なされるようになり、クリエイティブを向上させようにも手のほどこしょうのない代理店などから引く手あまたということになろう。
第三には、こうしたミニ・ハンペルが成功するしないにかかわらず、 "平凡な"代理店で悪条件でもがまんしてやっている多くのクリエイタ-は、B&Bで多数の人間が経験したように、突然職を失うことになるだろう。
仮にハンペルが失敗したらどうなるか。幸いにして今までのところ、ハンベルが失敗するだろうなどといううわさはどこからも耳にしていないが、万が一にも失敗したら、広告代理業は現在の状態から一歩も前進せずに、一部少数のホットな代理店は、比較的少数のクリエイターを安いサラリーで縛りつけ、大多数の代理店は、平凡な仕事で満足するクライアントへのサービスのために、高い給料を払って平凡なコピーライターをかかえ、別のホットな、あるいはあまりホットでもない小規模な一部代理店は、想像力にあふれた仕事らしきものをやって、雄々しくもクライアントをテレビ媒体に誘い込むべく躍気になるといった状態が現出するだろう。
ハンペル自身が成功するか否かにかかわらず、広告業の競争がますます激しくなることは避けられそうもない。そして大部分の代理店は、現状を維持するだけでも、今までよりせわしく走り回らなければならなくなるだろ。(文:ディック・ワッサーマン 抄訳
(写真キャプション:B&B社のスタジオ内でプロデューサーのR・バン・ビューレン、アソシエイト・クリエイト・ディレクターのA・ヘイメルおよびアシスタント・プロデューサーのH・イングリッシュのオーディションをうけるO・ウィリアムス)

エイビスが、距離計7万6000km以上のプリムスをお貸ししたら、それは、あなたのものになります。

ハーツとのユニークな広告合戦を演じたエイビスは、経営母体が他へ移ったとき、広告の扱いをDDBからB&Bへ変えたが、1年でまた、DDBへ返した。上は、B&Bの手になるもの。


参照
>>ポーラ・グリーン夫人とのインタビュー(12345678了)
>>いわゆる「DDBルック」を語る(12345678910了)