(110)ポーラ・グリーン夫人とのインタヴュー(了)
(DDB, Vice President, Management Creative Supervisor)
『みごとなコピーライター』(誠文堂新光社 ブレーンシリーズ 1969.7.15)と、つづいてまとめた『劇的なコピーライター』(同 1971.3.10)---現役で、しかも世界中の志の高いクリエイターたちから、仕事の質の高さを尊敬されていた人たち23人にインタビューした時点でDDBに在職していたの11人、DDBを巣立っていった人4人。
ある時期、DDBがいかに人材を育てることに長(たけ)ていたか---というより、当時はブティックと呼ばれるちいさな広告代理店を作って独立を目指すライターが多かった。DDBの11人のうち、インタヴュー直後にまたしてもDDBを離れたのは2人---その1人がグリーン夫人と知ったときには、いささか驚くとともに、この業界は、自分のハウスを持ちたがる時期にきていたことを思い知った。
好きな作品は、エイビス
chuukyuu「ここ数年間にやった仕事のうちで、最も気に入ったものをあげてください」
グリーン 「そうですね。ほかのものはともかくとして、まず第一にエイビスをあげます。
それには、もちろん、いろんな理由がありますが、わたしはエイビスのキャンペーンを始めたいちばん最初の担当者だったのです。
そのライティングもわたしがやりましたし、このキャンペーンが、わたしのキャリアの中でのひとつの重要な道標になりましたし、またレンタカー業界の中でも、ひとつのマイルストーンになりました。その上さらに、世界中に非常に大きな反響を巻き起こしたものです。
このキャンペーンを始めた当時は、まさかこんなにまで有名になるなどとは、考えてもいなかったんですけれど、これだけ成功するとは、まったく思ってもいませんでした。
ですから、『エイビスは、レンタカー業界で2位にすぎません。なぜお使いいただきたいか?』これが、なんといっても、わたしの最も好きな作品なんです」
企業の主張がそのまま広告の主張となり、しかも1位じゃないふつうの人たちを励ました稀有の例。
Avis is only No.2 in a rent a car. So why go with us?
エイビスは、業界で
2位にすぎません。
なぜ、お使いいただきたいか?
私たちは、一所懸命にやります。
(だれでも、最高じゃない時はそうすべきでしょう)。
私たちは、汚れた灰皿を我慢できないのです。満タンにしていない燃料タンクも、いかれたワイパーも、洗車してない車も、山かけタイヤも、とにかく調整できないシート、ヒートしないヒーター、霜をとらないデフロスター---そんなものはお渡しできないのです。
はっきりいって、私たちが一所懸命にやっているのは、すばなしくなるためです。フォードのスーパー・トルクのように生きのいい新車に微笑を乗せて、あなたにお出かけいただくために、そう、デュラスのどこであいしいパストラミ・サンドイッチを召し上がれかが予定できるように。
なぜ?---って。
私たちは、あなたにそれが当然のこととして受けとっていただくことが、までできていないからです。
この次、私たちの車をお使いください。
すいていることでもありますしね。
【注】Dulluth---追分のように、米国中どこにでもある地名。
ポーラ・グリーン夫人とのインタヴューはもうすこしつづいたが、都合で打ち切りたい。
エイビスの2位シリーズ中で、米国のオーディエンスが腰を抜かすほど驚き、すぐに大笑いしたと想像する、ぼくの大好きなエイビスの広告をあげてみる。いささか面白がり屋的な個人の趣好に偏ってはいるが---
No.2ism. The Avis Manifesto.
No.2主義
エイビス宣言私たちは、レンタカー業界で、巨人の後塵を拝しています。
なかんずく、私たちは、生き残る方法について学ばねばなりませんでした(*)。
その闘争を通して、私たちは、この世における1位と2位の根本的な違いについても学びました。
1位の態度たるや「間違ってはいけない。失敗さえしなければ、それでいい」です。
2位の態度はこうです。「正しいことをやれ。新しい道を探せ。もっと一所懸命にやろう」
このNo.2主義が、エイビスの信条であり、実践もしています。
エイビスのお客さまは、ワイパーがちゃんと動き灰皿が空になっていて、ガソリンは満タンで、ぴっかぴかのプリムスの新車を、職分をよくわきまえたエイビス・ガールの微笑つきでお借りになれます。
そしてエイビスも赤字を脱して黒字に転じました。
エイビスは、このNo.2主義に特許をとってはおりません。どなたでも自由にお使いになれまます。
万国のNo.2の同志よ、立ちあがれ!
art director:Helmut Krone
ポーラ・グリーン夫人との、もう一つのインタヴュー記録。
>>「いわゆる『DDBルック』を語る」
DDBのみごとなコピーライターたちとの単独インタヴュー(既掲出分)
ロバート・レブンソン氏とのインタヴュー
(1) (2) (3) (追補)
ロン・ローゼンフェルド氏とのインタビュー
(1) (2) (3) (4) (5) (了)