創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(629)[ニューヨーカー・アーカイブ]を基にエイビス・シリーズ(21)

DDBは、「同じ広告原稿は2度は使わない。新規につくった広告原稿のほうが、よりよい出来のはずだから」と公言していた時期がありました。


クリエイターの力がありあまっていたのかもしれません。
クリエイティブを売り物にしていた代理店だったからかもしれません。
クリエイターたちのインセンティブをあおっていたのかもしれません。
クリエイターたちにある程度の高水準のペイを保証するには、スペースやタイムの扱いマージンだけでは足りなくて、クリエイティブ・フィーを得るためだったのかもしれません。


もっとほかの理由があったのかもしれません。
(推察してみるだけでも、頭の体操になりそう)
DDBを取材していたころには、この質問を思いつきませんでした。


ところが、きょうのこの広告原稿には、ご記憶がありますね?
そう、1年前に掲載したものと同じです。

4,5日前にも、"We try harder." のボタンの広告が、1年置いての2重使用でした。


この広告に賛同する投書が多くきていたのかもしれません。
パーティでの会話に、「小さな魚」というフレイズが頻発したのかもしれません。
「ミセスなんとかが出席なさるんじゃ、小魚としては、あの方以下のお洋服(もしくは宝飾品)にしておかないと、満座の中でつつかれますからね」
エイビス側のタウンゼント社長夫人(あるいは重役某氏夫人)のお気に入りの広告原稿だったのかもしれません。
スターチ社の注目率調査数字が高かったのかもしれません。




あなただって2位だったら
一所懸命にやるでしょう。
さもないと・・・・。


小さな魚は、四六時中、動きつづけていないわけにはいきません。大きい魚が彼らをつつきまわすのを止めないからです。
エイビスは、小さい魚の悩みを熟知しています。
私たちは、レンタカーでは2位に過ぎないのです。一生懸命にやらなかったら、呑みこまれてしまうに決まっています。
私たちには、休息はありません。
私たちは、いつでも灰皿を空にしておきます。車を貸し出す前にガソリンが満タンかどうかを確かめます。バッテリーはちゃんと充電されているかどうかも点検します。ウインドシールドのワイパーもチェックします。
そして、私たちがお貸しする車は、軽快なスーパー・トルクのフォードの新車以下ってことはありません。
そして、私たちは大きな魚ではないのですから、あなたが私たちのところへいらっしゃったとき、イワシみたいな気持になるなんてこともありません。
私たちのところは、お客さまが詰めかけているってほどではないのですから。


絵のキャプション:「エイビスはのんびりするわけにはいきません」


C/W エド・ヴァレンティ Ed Valenti
A/D ヘルムート・クローン Helmut Krone
"The NEWYORKER" 1965.06.26  1964.05.09