［６分間の道草］（564）新刊『これぞ新しい広告』

世の中には、似たようなことを考える人がいるものですね。『ＤＤＢニュース』１９７１年２月号で見つけたのですが、"The New Advertising　The Great Campains From Avis to Vokswagen."って表題の本を書いた人が米国にいたんです。ぼくの『繁栄を確約する広告代理店ＤＤＢ』（ブレーン別冊）は１９６６年１０月刊ですから、５年遅れではありますが。いえ、実物は見たことはありません。『ＤＤＢニュース』で知っただけ。で、その記事に作品をつけて紹介します。

『これぞ新しい広告　エイビスからフォルクスワーゲンまで』というこの本、どう解説すればいいのであろうか？
第１章は、［最良の広告代理店］と題してその全文がＤＤＢにあてられている。
そして、第２章---[エイビス対ハーツの合戦］。
このキャンペーンは、ビル･バーンバックの伝説の一つになっているため、ビル自身も取材を受けた気配である。
「私を当惑させないでください」とビルは言っている。「ＤＤＢについて話せといわれれば、いくらでもお話ししますが、私のことについては、ご勘弁、と申しあげるしかありません」
そういうことなので、著者（Robert Glatzer）の書いたままをご披露しよう。

ＤＤＢ全体のこと

「すぐれた広告代理店を見分けるのは、簡単で、人びとがすぐれた広告だと認めた広告を創っているかどうか、にかかっている。この見地からいって、ドイル･デーン･バーンバック社米国で最良の広告代理店であることは疑う余地がない。ここが創った広告の質は、ほかの---規模の大小を問わず---広告代理店のものよりも、つねに群を抜いて高い。
しかも、ＤＤＢの広告作品は、第２次大戦からこっちの米国での広告に、最大の影響を及ぼしてきているのである。
ＤＤＢは、仕事を受けるに先立って、クライアントを教育したのである。ＤＤＢを巣立って独立した広告代理店(ジャック･ティンカー社、ウェルズ･リッチ･グリーン社、ＰＫＬ社、カール･アリー社)の首脳陣も、クライアント教育に手をつけた。これらの社の設立者となっているコピーライターやアートディレクターの少なくとも1人は、ＤＤＢで過去１０年のあいだに、バーンバックの直接指導を受けたことのある人たちなのである。

バーンバックのこと

バーンバックの最大の功績は、彼がかかわった個々の成功したキャンペーンにもまして、広告によって、消費者の心に、製品の利便以上のものを植えつけたことであろうか。つまり、広告の正直さを感じとらせたのである。
「製品に短所（エイビスなら業界で一番でないこと、ＶＷビートルなら不格好な外観、リヴィならユダヤ系のライ麦パンであること）をもっていたら、それを素直に認め、逆手にとって強調し、だからどうやって努力しているかと訴えた」

ＶＷビートルの広告のこと

「外観を変えないことを美徳とすることを、直感的に決め、正直な印象を読み手のこころに残したのである。
正直さを目でもわかるように、簡潔なレイアウト、すっきりした写真、飾らない誌面、コピーは明快に事実を素直な言葉で語ること---正直なクルマということを訴えた」

不恰好ですが、運んでってくれますよね。

A/D　Helmut Krone
C/W　Robert Levenson

ポラロイドの広告のこと

「これらの初期の広告は、ＤＤＢのクリエイターたちが、いかにみごとに製品の本質を伝えることができたかのに好例です。それらはおどろくほどにシンプルで、表現がシンプルであるがよゆえに、ポラロイド･カメラで写真を撮るのも簡単であるに違いないと読み手に思わせてしまう… (1957年に)スティーヴ･アレンの『トゥナイト･ショー』に生（なま）コマーシャルが挿入されることになったとき、ＤＤＢはポラロイド･カメラのコマーシャルを出し始めました。それらはおそらく今までテレビでされた中で最も良い実演広告でした ……ボブ・ゲージとロビンソン夫人は今までのところ気品と人間らしい感情のこもったコマーシャルのシリーズを作成しました。
感傷的で感動的な人生の瞬間を演出することで視聴者の涙を誘ったのです。(60秒という短い時間ででやってのけたです)。これらのコマーシャルがアートに近かったとさえ言われました……」

これはプリント広告ですが---
［列車］の雑誌広告版

この写真は、ポラロイド･ランド･カメラで10秒で仕上がりました。とり直しのいらない写真です。こういうシーンは撮れなくても、ポラロイド･ランド･カメラをお持ちなら、撮るチャンスにうんと恵まれます。このカメラがすごく優秀な先生だからです。10秒写真を１枚撮るごとに、あなたはよりすばらしい写真家になるのに有用な勉強をしているのです。今ポラロイド･ランド･カメラをお求めになれば、この秋には、もっとうまくご家族の写真が撮れるようになりますよ。そして初春までには、同じカメラでカラー写真もお撮りになれることでしょう。