創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(221)[ビートルの広告](122)


今日の検証は、いささか意地が悪い。TV-CMのためにクリエイトしたアイデアを印刷媒体にも応用しようとして悪戦苦闘の情景だからです。
まず、TV-CM[ジョーンズ氏とクランブラー氏]もしくは[二軒の家]と呼ばれているのをご覧ください。
そして、あなたがこのアイデアを印刷広告に転用するとしたらどうするかを試案してみましょう。頭痛のタネになるはず。
クリエイティブ・チームは、コピーライターがジョン・ノブル氏、アートディレクターはロイ・グレース氏。(お断りしておきますが、どちらも38年以上前の作品です)。


TV-CM[ジョーンズ氏とクランブラー氏]




訳文と説明】
建売住宅らしい2軒の家。
左がジョーンズ家、右がクランプラー家。
朝、2人は挨拶をかわして徒歩で左右にわかれる。
やがて、ジョーンズ氏がフォーらしい車で帰ってくる。
ところが、クランプラー家に、ステレオラジオ、テレビ、洗濯機、冷蔵庫などが次々と運びこまれ、クランプラー氏がVWに乗って帰ってくる。


アナ「ジョーンズ氏とクランプラー氏はお隣同士です。2人とも3,000ドルずつ持っています。
ジョーンズ氏は、そのお金で3,000ドルの車を買いました。
ランプラー氏は、そのお金で、新しい冷蔵庫とガス・レンジ、新しい洗濯機、新しい乾燥機、新しいステレオ、新しいテレビ2台と、新しいフォルクスワーゲンを買いました。
そこでジョーンズさんは、今、お隣さんの生活水準に合わせなくちゃならないという頭痛を抱え込みました」


途方もない値段の車の購入費でこれだけ買えます。


最近の新車の平均購入価格は3,260ドル(自動車工業会の調査)。
3,260ドルあれば、新しいレンジ、冷蔵庫、乾燥機、洗たく機、テレビ2台、レコード・プレーヤー、そして1,639ドルのフォルクスワーゲンが買えます。
もちろん、途方もない値段の車についているような手のこんだ付属品は、私たちの小さなパッケージにはついていません(たとえば、電動式灰皿クリーナーとか太陽が出ると消えるヘッドライトなど)。
しかし、おいしい食料品、清潔な衣料、すぼらしい音楽、そしてカラーで再上映される夏を見るチャンスつきといえます。
すてきな装置がついていないといって、フォルクスワーゲンに眉をおひそめになる方がたくさんいらっしゃいます。
もう一度見直してください。
あなたが手に入れられるものがどんなにすてきかを。




All for the price of a fancier priced car.


$3260 is the latest average price paid for a new car these days. (So says .the Automobile Manufacturers Association.)
$3260 will also buy you a new range, a new refrigerator, a new dryer, a new washer, two new television sets, a record playe r and a $1639 Volkswagen.
Of course our little package doesn't include all those tricky little items you find on those fancier priced cars. (Like electric ashtray cleaners. Or headlights that disappear when the sun comes out.l
But it does include good food, clean clothes, nice music and a chance to watch all the summer reruns in color.
A lot of people frown on a Volkswogen because they feel it doesn't offer enough in the way of fancy gadgetry.
Look again.
How fancy can you get?


アナ)「ジョーンズ氏とクランプラー氏はお隣同士です。
2人とも3,000ドルずつ持っています。

ジョーンズ氏は、そのお金で3,000ドルの車を買いました。

ランプラー氏は、そのお金で、新しい冷蔵庫とガス・レンジ、新しい洗濯機、新しい乾燥機、新しいステレオ、新しいテレビ2台と、新しいフォルクスワーゲンを買いました。

そこでジョーンズさんは、今、お隣さんの生活水準に合わせなくちゃならないという頭痛を抱え込みました」


【参考】

ジョン・ノブル氏とのインタビュー
(1234了)



ロイ・グレイス氏の『名誉の殿堂』入り(1234



ジョン・ノブル氏とロイ・グレイス氏、チーム・プレイを語る


ロイ・グレイス氏 インタビュー「何が大変といって、人びとに既知のものを変えさせることほど難しいことはない」