創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

[6分間の道草](264)VWオール・ドビートル、拾遺(64)

 

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今の★数累計です。 

"New Yorker"誌1959年8月1日号("LIFE"誌は8月3日号)から始まり16年間つづいたVWオールド・ビートルのシリーズは、いまなお、世界中の志の高い広告クリエイターたちは、出るたびにピンナッブしていました。


キャンペーンの丹念な跡づけはの『ニューヨーカー・アーカイブ』によって行なったが、"LIFE"誌他からも拾ってみました。
[ニョーヨーカー・アーカイブ]によるVWビートル・シリーズ (総索引) ←クリック


米国VW社はそのキャンペーンにより、DDBのプレステイジ・クライアントとなりました。


VWドイツ本社のハインツ・ノルトホフ最高責任者も、DDBを信じきっていました。


3年目---1961年にノルトホフ氏が---
「やがて、通算で500万台目のビートルを送りだすことになる。その事実を『ライフ』誌国際版で知らせたい」


DDBのVWチームは、かつて'62年型のに使ったイラストレーションなしのに着色、コピーを新しくし、了解をとるためにアカウントの責任者ラッセル氏をドイツに派遣しました。
ドイツ本社の広告担当の責任者は、一瞥のもとに「ダメ、ダメ、ダメ。こんな製品も写ってないのはダメ」と拒否。

ラッセル氏は次の総合連絡会議まで待ちました。
その会議にはノルトホフ最高責任者もたまたま出席しており、「5,000,000台目のフォルクスワーゲンをご覧に---」のカンプ(スケッチ)をひと目見るなり、

「この広告の一字一句も、変更してはならない」

Heinz Nordhoff saw this little comp, with no picture---read the text and say "This ad must not have one word of the copy changed."

一瞥で拒否した広告担当の責任者は、人事移動されました。


いい広告は、読み手に受け入れられるのは当然として、経営トップなら、それを理解できるというエピソード。


5,000,000台目のフォルクスワーゲンをご覧に入れようと思ったのですが---売れてしまったのです。


申しわけありません。
ある方が、まんまとその車をさらってしまわれたのです。
(でも、それが何に似ていたか、あなたならご存じでしょう、そう、かぶと虫に似ていました。)
5,000,000という数字は、私たちの地味な車にしてはたいへんなものだとお思いになるかも知れません。
しかし、VWの理想とするところはすべて、地味さの中で完ぺきにするところにあるのです。
私たちは、車から除けるものはとり除き、その代わりさらに良質のものを加えるようにしてきました。この数年、フェル・ゲージまでとり除いてみたこともありました。
一方では、最高のサスペンションとトランスミッションをつけました。
またあなたは、VWエンジンについてご存じでしたね、グラン・プリ・レースでは、あなたは1日中いちばんビリで走ることになるかも知れません。その代わり、修理店に入るのも、いちばんあとでしょう。
このおかしな格好の車が、すっかり姿を消してしまったら、そのときこそ、VW1500が登場するんだね、と質問なさる方が、まだいらっしゃいます。
ノーです。
これは、世界で3番めによく売れている車なのです。


C/W ジャック・ディロン Jack Dillon
A/D ヘルムート・クローン Helmut Krone
"LIFE" Internanal Edition 1962





We'd like to show you the 5,000,000th Volkswagen. But it's been sold.


Sorry.
A man picked it up in December.
(But you know what it looked like. It looked like a beetle.)
You might think 5,000,000 is a grand number for our modest car.
But then, the whole VW idea is to take the modest and perfect it.
We've preferred to leave a few things out of our car and put more quality into the parts that count. For years we even left out the fuel gauge.
But you got the best suspension and transmission in the business.
And you know the VW engine. In the Grand Prix, you might come in a day after everybody else. But you'll be the last one into a repair shop.
And yet some people have asked if our funnv-Iooking car was through, now that the VW 1500 has appeared.
No.(We'd be crazy.)
It's the third best-selling car in the world.


まず、下のモノクロの広告が米国内版に掲載されました。



とくにお見せるものはありません。'62年型フォルクスワーゲンはいままでと同じ。


'62年型のフォルクスワーゲンにお乗りになっても、これが最新型とはどなたもお気づきにならないでしょう。
(ひょっとすると、目ざといご近所の人は、'61年型にくらべてテール・ライトが少し大きめになっているのに気づくかも知れませんが、変わったといえば、とくにこの部分だけ)。
なにもかも'61年型そっくり、もちろんお値段も1,595ドルすえ置きです。
外はとにかく、内はずいぶん変わっています。時間と努力をタップリ使った改良です。
'62年型VWは、いっそう静かに走ります。新しいクラッチとブレーキを採用しました(新しいステアリング回りの部品も同様)。すべて手入れはご無用です。ヒーターの温風が前と後から出て車内をくまなく暖めます。
そのほかにも、実に24ヶ所も改良されています。
その一つはガソリン・ゲージがついたこと。
ガンコ派の人たちの中には、スポーツ・カー的なところがなくなったと、コボす人があるかも知れませんが、ガソリン・ゲージは予想外に便利なものです。ガソリン・タンクがいっぱいか、空っぽかを知らせてくれるだけでなく、これが'62年型の象徴でもあります。
1962年はフォルクスワーゲンの歴史の中では、大変化の年となるかも知れません。


C/D ボブ・レブンソン Bob Levenson
A/D ヘルムート・クローン
"LIFE"  1961.09.08





No point showing the '62 Volkswagen. It still looks the same.


No head will turn when you drive a '62 Volkswagen home.
(Maybe on eagle-eyed neighbor will notice that we've made the tail lights a little bigger. But that's the only clue.)
Everything is right where we left it in '61. Including price: $1,595.
Inside is another story.
We've put all our effort into improvements that matter.
The '62 VW runs more quietly. there are new cluch and brake cables las well as new steering parts) that never need maintenance, Heater outlets front and rear for more even heating. Easier braking.
And 24 more.
One change is literally a gasser.
We've added a gas gauge. Our first.
A few die-hards may think we've stolen some of the VW's sporting flavor. But the gas gauge may be more useful than you'd imagine. It will not only tell you whether your tank is E or F; it will prove you're driving a '62,
It could make 1962 go down in VW history as the year of the big change.

アートディレクター:ヘルムート・クローン氏の言葉---


「10月号、11月号の雑誌は新車の広告満載なんだ。そんな中で、キラリと光り、心を打ち、記憶にのこるものをと思ってね」